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―― 第三章 ――

【第二十五話】負傷

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 格納庫の床に降り立った時、環が走り寄ってきた。白い白衣が揺れている。ダークブロンドの髪をした青年は、同色の瞳を昼斗に向けた。

「大丈夫か!?」
「ああ。瀬是は?」
「今、緊急手術を受けて――……って、昼斗! お前はいったいどこが大丈夫なんだよ!?」

 焦ったように環が叫んだ。
 言われてみれば、昼斗は己の体が濡れていると気づいた。視線を下げれば、パイロットスーツのところどころが破けていて、血がタラタラと垂れている。左肩を見れば、肉が見えた。だが、痛みはない。

 感覚共有状態にあると、機体の負傷がそのまま身体の負傷となるのだという知識は、昼斗にもある。だから、Hoopにより傷つけられた箇所が、そのまま怪我となって、現在のような身体状態にあるのだが、無我夢中で戦っていると、意識をしないのが常だった。

「誰か、タンカーを!」

 床に血だまりが出来ていく前で、環が叫んだ。昼斗は微苦笑する。内心では、環は大げさだとすら思っていた。

 ――だが、それは昼斗の側の認識の誤りだった。
 そのまま昼斗は、搬送された基地内の医療施設にて、緊急手術をされ、入院する事になった。救援に向かった瀬是よりも、ずっと酷い怪我だった。医療技術も進歩しているから、嘗てよりは、怪我の治癒は早いのかもしれないが、肉の抉れた肩だけでなく、罅の入っていた左腕や肋骨も酷い有様で、処置後麻酔が切れても、暫くの間昼斗は目を覚まさなかった。それだけ、体に残存していたダメージが大きいのだという診断だった。



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