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―― 第三章 ――

【第二十四話】月の見え方

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 ――月が、とても綺麗によく見える。
 クレーターの見え方には、地球上の各国において、様々な逸話がある。
 だがいつしか、〝クレーターは蠢くもの〟と、地表では言われるようになった。理由は簡単だ。月の表面に、Hoopが闊歩するように変わり、そこに大群が犇めいているからだ。

『すぐに出撃を』

 北関東基地の指令室に赴いてすぐ、三月司令からそう命令を受け、昼斗は人型戦略機に搭乗し、離陸した。既に先行して、戦闘予定の宇宙には、瀬是が繰る第三世代機――C-001が展開している。

 昼斗が到着した時点において、瀬是機は劣勢だった。宇宙でも変わらず動き飛ぶHoopが、C-001に群がろうとしていた。それを瀬是は、愛用している銃型の超電磁砲・生弓矢いくゆみやが撃つ。しかし左足首と右肩を食い破られている。コクピットがあるのは、首と頭部の付け根であるが――人型戦略機は、パイロットの身体感覚と機体の感覚が共有状態にあるため、瀬是もその部位に痛みを覚え負傷しているのは明らかだと、画面越しにも誰にもわかる状態だった。

 A-001が主に武器として用いているのは、刀型の武器だ。旧世代型で、今実験がなされている超電磁砲刀・カグツチは、今回は装備してこなかった。だが、それがいつも通りであり、本日も普段から用いている天叢雲剣あまのむらくものつるぎを、昼斗は揮う。

「大丈夫か?」

 昼斗が通信すると、瀬是が息を飲んだ気配がした。

『はい』
「下がれ」

 そう呟いてから、昼斗は眼差しを怜悧に変える。黒い瞳で数多いるHoopを睨んでから、昼斗は剣を動かした。一撃で、その場にいたHoopの半数が消失したが、残りの半数が飛びつくように群がってくる。しかし昼斗は、怯まない。

 ――気づいた時には、戦闘が終わっていた。
 剣を振り、Hoopの体液を飛ばす。既に瀬是は帰還していたようで、その場にただ一人生存しているのは、昼斗のみとなっていた。

《本当に、お前は強いな》

 機体から声が響いてくる。人型戦略機にはAI言語プログラムが入っていると、昼斗は記憶しているから、今ではこの声がそれなのだろうと理解していた。

「嬉しくないな」

 苦笑を零した時、通信が入った。

『帰投して下さい』

 こうして、一つの戦闘が終わり、昼斗は基地へと帰還した。


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