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―― 第六章 ――

【八十】クライヴの生誕祭

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 そのようにして準備をして過ごす内に、二月の十六日が訪れた。
 本日はクライヴの生誕祭だ。滞在中のルミナンス伯爵とその友人のデザイナーであるレドル伯爵も参加している。王領からはバルラス商会の会長なども出席している。僕とクライヴは挨拶に訪れ、言祝いでいくみんなに言葉を返して過ごしていた。

 結局僕はプレゼントが決まらなくて、クライヴに直接尋ねた。

「何が欲しい?」
「――その気持ちだけで嬉しいというのは本心だけどな、そういう事ならば、ルイス自身をもっと俺にくれ」

 昨日寝室で、そんなやりとりをして過ごした。
 城の増改築も終了し、クライヴは生誕祭のあと、そこに僕を連れていきたいと言っていた。そこで……僕をもっと、貰ってくれるらしい。僕はもう十分すぎるほどに、クライヴの支配に溺れていて、その甘い心地よさに浸っているから、どうしたらこれ以上あげられるのかいまいち分からないのだけれど、求められるのが嬉しくてたまらない。僕ももっともっと、クライヴのものになりたい。僕の事を、クライヴの好きなようにしてほしい。そう考えて、おのれの施行に照れてしまい、僕は少し俯いた。

「ルイス?」

 するとシャンパングラスを手にしているクライヴが、僕に向かって声をかけた。顔を上げてそちらを見ると、クライヴが小首を傾げていた。

「どうかしたのか? 顔が赤い」
「す、少し酔っちゃったのかな」

 言い訳をした僕を見ると、深くは追及せずにクライヴが頷いた。
 そうして夜も更けていき、零時手前に生誕祭はお開きとなった。僕とクライヴは、その足で、改装された塔へと向かった。クライヴに手を引かれて螺旋階段を登っていくと、頑丈そうな鉄の扉が視界に入った。細かな意匠が施されている。

「コーラル城は俺達のものだけれど、この部屋の鍵は俺だけが持っていてもいいか? バーナード達にも合鍵を渡す予定はない。ただ、ルイスにも渡さなくてもよいか?」
「うん。だけど、どんなお部屋なの?」
「見る方が早いだろう。入ろうか」

 そういうと銀の鍵で、クライヴが扉を開けた。中を覗き込み、僕は目を丸くする。
 巨大な寝台がまず目に入って、その隣の豪奢な椅子も存在感がある。奥には戸棚がある。ただ、一番目を惹いたのは、寝台や椅子の真上の天井にある滑車付きの鎖と手枷だった。戸棚には、僕ももう覚えた魔導具の玩具などが並んでいる。ドキリとした僕は、瞬時に赤面した。

「ク、クライヴ……こ、このお部屋は……?」
「プレイルームだよ。寝室もよいが、もっと本格的に楽しみたい場合には、有用かと思って――作らせたんだ。俺は、ルイスを虜にしたい」
「プレイ室……っ、僕はもうとっくにクライヴの虜だけど……僕の事を想って造ってくれたの?」
「ああ。俺自身も欲したが、一番はルイスを喜ばせたかったからだ」

 その言葉に、僕は感極まって、思わずクライヴに抱き着いた。

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