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―― 第四章 ――
【六十八】新年の旅立ち
しおりを挟む一月一日の朝食から昼食まで、ノアは僕達と一緒にとった。
そして今、馬車の前に立っている。
本日は冬の日差しが心地よい。青い空が広がっている。
「よし! 家族で過ごすという風習は、僕的には達成だ! 僕は帰るぞ! また来年来させてくれ」
明るい笑顔のノアを見て、思わず僕は微笑した。隣ではクライヴもまた頷いている。
まだ、養子と言われても実感はないのだけれど、ノアとまた話がしたいと強く感じている。
「お幸せに、二人とも!」
そういうとノアが馬車へと乗り込んだ。
「元気でね」
僕がそう声をかけると、ノアが満面の笑みで大きく頷いた。
「僕ほど元気な貴族は、あんまりいないから大丈夫だ!」
「ノア、公爵家のご家族にもよろしく伝えてくれ」
「ああ。クライヴ殿下は、敵には怖いが、僕には現時点では優しかったと伝えておこう!」
そんなやりとりをしてから、馬車の扉が閉まった。
そうして走り始めた馬車が遠ざかっていくのを、僕とクライヴは暫くの間、手を繋いで眺めていた。明るさに溢れている新年の始まりに、僕の胸は温かくなった。
「ルイス、冷える。中へ入ろう」
「うん。ただ今日は、雪だるまを作るのには、いい天候だね」
「少し遊ぶか?」
「それもいいと思います」
僕達はそんなやりとりをしてから、どちらともなく笑顔で視線を交わす。
既に以前作った雪だるまは融けてしまった。
いつか、ノアも交えて、三人で作るのも楽しいかもしれない。
こうして僕とクライヴの新しい年が幕を開けた。二人で迎える初めての年だ。これから何が待ち受けているのか分からないけれど、僕はクライヴの隣にいられたら幸せだから、今年もそんな日々が続けばいいなと願っている。
「バーナード、人参を持ってきてくれ」
「畏まりました」
楽しげなクライヴの声に、バーナードがコーラル城の中へと戻っていく。それを見送ってから、僕とクライヴは早速雪玉を作り始めた。二人での共同作業の結果、この日は雪だるまを三体も作った。モデルは、クライヴと僕、そして少し小さいノアだ。
「どうかな?」
心地のいい疲労感の中で、僕はバーナードに問いかけた。すると無表情の執事は、腕を組む。
「もう少し手の枝の角度を変えてみては?」
「それもそうだな」
同意したクライヴが、位置を修正した。
このようにして、僕達の一月一日の時間は、穏やかに流れていった。
僕達が城の中へと戻ったのは夕食が迫る頃で、汗を流すために先に湯浴みをしてから、僕達はそれぞれダイニングへと向かった。銀の燭台には火が点っていて、新年に食べる事が多い様々な料理がテーブルの上には広がっている。
「さぁ、みんなも」
この日はクライヴと僕の提案で、城に暮らす使用人の皆にも、料理が振る舞われる事になっていた。住み込みの彼らもまた、僕達と新しい年を迎えたといえる。簡単な立食式のパーティーとなり、僕達はみんなで食事を楽しんだ。
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