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―― 第四章 ――

【五十九】饒舌(☆)

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「ルイス、俺を《見てくれ》。目を逸らさずに」
「ん……」

 お座りニールの指示の後、僕は絨毯の上に両手をついたまま、一糸まとわぬ姿でクライヴを見上げた。僕が今身に着けているのは、首輪カラーだけだ。

「今日は沢山話をしてくれたな。《いい子だ》」
「……ぁ」
「頑張って俺に話しかけてくれるのは嬉しいが、いつも通りでも構わないんだぞ? なんだか今日のルイスは、本当は何かを知りたい様子だったが……一体、何が知りたかったんだ? 《教えてくれ》」
「っ……ぅぁ……あ、あの……」

 屈んだクライヴが、僕の頬を撫でる。それだけで僕の体は熱くなり、褒められた瞬間から、腰に力が入らなくなり始めていた。

「……贈り物がしたくて……聖夜が近いから……」

 サプライズのように中身を秘密で贈りたいと思っていたのだけれど、もう僕の理性はグズグズだ。僕の声に目を丸くしてから、クライヴが吐息に笑みを載せて、小さく頷く。

「そういうことか。優しいな、ルイスは。ありがとう」

 僕の頭を撫でてから、クライヴがチェストを一瞥した。

「今日はもっともっと支配したい。ルイスが可愛い事をいうから。リーシュを、《取ってきてくれ》」
「あ……う、うん……」

 多分、僕の顔は蕩けている。そのまま僕はチェストへ向い、上から二段目の棚に入っている黒い紐のリーシュを手にし、戻ってきた。すると僕から受け取ったクライヴが、再び僕の頭を撫でてくれた。

「《いい子だ》。さて、《立ってくれ》」

 言われた通りにした僕の体に、クライヴがリーシュを装着する。そしていつもより少しきつめに、僕の体を締めた。肌を這う紐の感触に、ゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上っていく。

「寝台に。脚を折り曲げて《仰向けに》」
「は、はい……っ……」

 その《命令》を耳にしただけで、僕の陰茎は持ち上がった。
 言われた通りに膝を折ると、獰猛な目をしたクライヴが、不意にポケットからガーゼを取り出し、もう一方の手では香油の瓶を手繰り寄せた。そしてタラタラと香油で布を濡らしてから、それを持って寝台へとあがってきた。

「ルイス、《出してはダメだ》」
「っ、は、はい」
「まぁ、出せないだろうが」
「?」

 不思議に思ってクライヴを見ていると、僕の陰茎に手をかけ、クライヴが扱き始めた。すぐにそちらに意識が集中し、もともと反応していた僕のものは反り返る。

「ぁ……」

 先走りの液が零れはじめた頃、クライヴが不意に布を僕の先端に当てた。

「んン!!」

 そして布を左右に引っ張るように動かし始めた。

「ぁ、ぁ、ぁ」
「――香油布ローションガーゼが流行中だと噂で聞いた」
「え、ああああっ、ッ」

 ぬるぬるとした布の感覚、鈴口を刺激されるその動きに、僕は喉を震わせる。
 頭が真っ白になるくらい、気持ちがいい。
 布を動かされる度に、僕は背を撓らせて、快楽に耐えた。時折ぬちゅりと音がして、全身がびっしりと汗ばむ。出したくなってすすり泣きながら、けれどイけいない事に気が付き、僕は必死で息をした。《命令》と、リーシュの紐による物理の拘束もあるけれど、何より、香油布ローションガーゼの感覚は壮絶に気持ちいいのに決定的な刺激にはならない。

「ああああ、やぁァ……クライヴ、ぁァ!!」

 この夜は、そのまま長い間、僕は先端を愛でられていた。
 挿入される事は無かったけれど、僕は未知の快楽をまた一つ覚えさせられた。



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