上 下
55 / 84
―― 第三章 ――

【五十五】出来ない命令(★)

しおりを挟む

「あ、あ、あ……クライヴ、もっと、ぉ……」

 僕は涙と快楽でドロドロの瞳を、クライヴに向けている。正面から僕を押し倒しているクライヴは、ゆっくりとしか動いてくれない。もどかしさに僕は震えながら、両腕をクライヴの首へと絡める。

「んン」

 僕の両足を持ち上げて、根元まで挿入した状態で、クライヴが動きを止める。ぐっと最奥を貫かれたまま、動きを止められ僕はむせび泣いた。どんどん快楽がせり上がってきて、僕はそのまま白濁とした液を放つ。僕の出したものが、クライヴの腹部を汚した。

 僕は果てたのに、クライヴが僕が感じる場所を突き上げたまま、動いてくれない。脈動する僕の内壁が、再びクライヴの屹立した陰茎を締め付ける。

「ン――っ!」

 穏やかなのに強い快楽が襲い掛かってきて、僕はもう訳が分からない。

「ルイス、《待て》だ。次は《我慢》だ」
「ぁ……」

 再び張りつめていた僕の陰茎。それを自覚しながら、僕は涙で滲む瞳をクライヴへと向ける。いつもより残忍な目をしているクライヴは、獰猛なまなざしで、僕の意識をからめとるようにこちらを見ている。

「あ……ぁ、ぁ、ぁ……ッ、できない、できないよ……んン」
「《我慢》」
「あ、あ、うう……あア――!!」

 だが僕は、《命令》を守れず、また放った。首輪があるだけで、僕の体はいつも以上に敏感に作り替わってしまったかのようで、同時に【契約クライム】の効果なのだろうが、意識にはクライヴの声しか登らない。そして――わかっている。クライヴは今、『僕には達成困難な《命令・・》』をした。僕に《お仕置き》するためだ。僕はもうそれを理解しているけれど、クライヴの《お仕置き》は、僕にとっての恐怖ではない。クライヴの《お仕置き》は、いつも僕を快楽で真っ白に染めるけれど、僕を傷つけることはないからだ。

「《お仕置き》だな」

 予想通りの声に、僕は震えながら涙をこぼす。半分以上は期待と歓喜だ。もっともっと、クライヴに支配され、満たされたい。クライヴは僕から陰茎を引き抜くと、じっと僕を見た。

「《壁を向いてくれコーナー》」
「ん……」

 言われた通りにした僕の体は汗ばんでいて、肌に髪の毛が張り付いてくる。

「あ、あああっ!」

 そのまま横からの寝バックの姿勢で、再び貫かれた。
 斜めに深く交わりながら、僕は悶える。気持ちがいい。しかしその状態で動きを止められ、僕はすぐに号泣した。気持ちが良すぎて、おかしくなりそうだ。

「ああ、あっ……ああ……」
「ルイスは、ここ・・が一番好きだものな? 《言ってごらん》」
「好き、あ、好きだけど、でも……」
「でも? 《続けて》」
「クライヴだから、好きなだけで……ンあ――!!」
「《いい子だ》」
「あああああああ!」

 褒められるともう駄目だった。僕の体はぐずぐずだ。

「一度出す。《締めて》」
「ああああッ!!」
「《いい子だな》――っく、理性が飛びそうになる。困ったものだな、その首輪。目には毒だな。ルイスに対する征服欲が、今宵はいつも以上に収まってくれない。ルイス、自分でしたいようにしてごらん? できるだろう? 《魅せてくれアトラクト》」
「あ、あ、ああっ、あン――!!」

 僕は体に力を込め、脈動しているクライヴの陰茎をさらに締め上げる。
 どくどくと僕の中に、白液が注がれていき、長い射精が終わると、結合箇所から香油と混じったそれがこぼれ始めた。僕が肩で息をしていると、クライヴが再び陰茎を引き抜いた。ぐちゅりと音がし、白液もまた零れてシーツを汚す。

「今夜は、許さない・・・・。存分に付き合ってもらう。俺の存在ものなんだろう?」
「あ……あ……僕は、クライヴだけのものだよ……そうでありたい」
「幸せだ、ありがとうルイス」

 クライヴは獰猛な光を瞳に宿したままでそう述べると、再び僕を押し倒した。
 この夜、僕はクライヴに支配され続け、いつの間にかspaceに入り、そして――気づいた朝もまだ、貫かれていた。


しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

気付いたらストーカーに外堀を埋められて溺愛包囲網が出来上がっていた話

上総啓
BL
何をするにもゆっくりになってしまうスローペースな会社員、マオ。小柄でぽわぽわしているマオは、最近できたストーカーに頭を悩ませていた。 と言っても何か悪いことがあるわけでもなく、ご飯を作ってくれたり掃除してくれたりという、割とありがたい被害ばかり。 動きが遅く家事に余裕がないマオにとっては、この上なく優しいストーカーだった。 通報する理由もないので全て受け入れていたら、あれ?と思う間もなく外堀を埋められていた。そんなぽややんスローペース受けの話

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する

竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。 幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。 白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

恋なし、風呂付き、2LDK

蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。 面接落ちたっぽい。 彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。 占い通りワーストワンな一日の終わり。 「恋人のフリをして欲しい」 と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。 「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました

拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。 昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。 タイトルを変えてみました。

処理中です...