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  商店街外れの少し寂れたゲームセンター。
  そこのUFOキャッチャーの景品の倉庫。

「真幸と浅霧と一緒に来るなんて、いい予感はしないけど」

  常磐はボロボロの丸椅子に座り、相変わらず無気力な笑顔を見せた。
  倉庫の奥では、女の泣き声と複数の男の笑い声が聞こえる。
  真幸は動じていないみたいだが、ヨゾラは眉間に皺を寄せている。

「ここに来たって事は、真幸は浅霧を説得したの?」
「アホ抜かせ」
「何の時間稼ぎか知らないけど、フェラだけじゃもうつまらないんだよね」

  チラッと常磐はヨゾラを見た。

「真幸はさ、浅霧の練習相手だったの?」

  次いで、真幸の方を向いた。

「は?」
「……もしかして、先まで越されたかな?」
「せやっても、アンタには関係ないやろ」
「まぁね。処女は欲しかったけど、他人が育てた子を育て直すのもいーかもね」
「俺は真幸とは、……っ」

  言いかけたヨゾラを真幸が制した。

「簡単させる思うなや。それに、兄貴捕まえたんやろ。ほんならコイツは用済みや」
「……あぁ、そうみたいだね。でも、……壊されるオモチャって分かったら、手を出せないじゃん?」
「……壊さ、される?」

  ヨゾラは目を丸くして、常磐を見た。
  真幸がギュッとヨゾラの手を掴んだ。

「新しい媚薬か……、とりあえずドラッグが手に入ったらしくてさ、試したいらしいよ」
「どらっぐ?」

  ヨゾラは顔を顰めて首を傾げた。

「ヤバいクスリや。正気、保てればえぇねんけど、……常習性が付いたら最後やな」
「正気って、……カグ兄、誰ともしてないし、発情してるって……。抜くだけなら、何度かして貰ってるみたいだけど」
「……手遅れやろな」

  下界に来る前、気を失っても欲情していた時はあった。
  何日も嬲られて、欲しがって。
  カグヤ本人は覚えているかは分からないが。

「リスト言うん盗んだん、アンタやろ?」

  真幸は見下す様に、常磐を睨んだ。

「……アンタが盗んで、兄貴を捕まえる様差し向けたんやろ。ヨゾラが拒んだ時の保険かなんかで。浅霧の若頭のお気に入りや、周りにそう言えば勝手に動くんやし」
「さっきも言っただろ?壊されるのを分かっているオモチャは嫌だって」
「兄貴人質にすりゃ、嫌でもヨゾラはアンタの言う事を聞く」

  ふーん、と常磐は笑った。

「兄貴ん事はどーでもえぇ。せやけど、コイツは渡されへん」

  真幸はヨゾラを指さした。

「男同士だから、だっけ?唐島フった理由」
「だから何や」
「真幸、君は浅霧が好きなのか?」

  その質問に、真幸は口を尖らかせた。
  ヨゾラはちょっとだけ、真幸の横顔を覗き込んだ。
  真幸が一息吐く。

「どいつもこいつもアホやな」
「だって、何だかんだ言って一緒に居るだろ?唐島の方が付き合い長いだろうにさ。まぁ、浅霧のが顔が良くて可愛いよな」

  常磐の笑顔が腹が立つ。
  その時、倉庫のドアが開いた。

「常磐さん、もう一人捕まえて……」

  泣きじゃくる女の子の髪の毛を鷲掴みにし、無理矢理倉庫に連れて来たガタイの良い男が入って来た。

「君達も一緒にどう?浅霧は童貞だろうし、卒業させてやろうか?女の子だって、浅霧みたいな子に抱かれたいだろうしさ」

  常磐の笑顔は、ヨゾラに向かった。
  ヨゾラは女の子に目を向けると、女の子はぐちゃぐちゃに泣きながら、首を左右に振った。

「それとも、君達が俺達の相手する?そしたら、女の子は解放してあげる。って言うのも普通だよなぁー」

  どーする?と常磐は首を傾げた。
  ヨゾラは真幸の腕を掴んだ。

「俺が相手すれば済むだろう?」
「お前、何言うとんのや……」

  真幸は額に手を当てた。

「毎日風呂で解したりはしてたんだ。うだうだしてさ、逃げきれねぇ時もあるだろうし。気持ち良くなかったけど」
「そう言うんやないで……」
「それに、……いつかは誰かとそうなるんだ。……ジジィか、常磐先輩かの違いだし」
「俺らの目的は、女助ける事ちゃう」
「分かってるけど……、見過ごせねぇだろ」

  泣きじゃくって周りが見えていない女の子を見ると、ヨゾラは呟いた。

「……こうなるん責任は、神代さんに取らせればえぇか」
「……?」
「そもそも、さっさモノにせぇへんからこないになる訳やし。ヤクザの息子やビビり過ぎとんのやな」

  真幸はボソボソとそう話すと、一人で頷いた。
  そして、大きく一息吐いた。

「……俺が相手してやんねん。せやから、女達もヨゾラも手ぇ出さんと、もう帰してやってくれや」
「……女の子達は帰して上げるけど、浅霧は帰せないな」
「……」
「俺としては、中出しさせてくれるなら浅霧でもいーんだけどさ、見せたいじゃん?……一緒に寝食している奴が、他人の男にヤられてるって」
「趣味悪……」

  真幸は静かに呟いた。

「お前……、男相手とかした事あんのかよ……」

  ヨゾラは、真幸の腕を強く掴んだ。

「あるわけないやろ。ケツに挿れるんは知っとる」
「簡単じゃねぇんだ。……俺がすれば済む話だろ」
「言うたやろ、そー言うのは好きな奴としろって。女役は初めてやけど、……俺は散々ヤって来たからな。今更や」
「……俺、事後のカグ兄は見て来たから……。嫌なんだ……、あんな……」
「案外そうならへんかも」

  真幸は淡々としている。
  ヨゾラは俯いた。

「ほなら、女達は解放せぇ。完全に解放したら、ちゃーんと相手したるわ」

  常磐はにっと笑うと、男達に声を掛けた。
  さっき連れて来られた女の子は、開けられたドアから走る様に逃げ、奥の女の子は髪の毛もボロボロで、服も汚れて乱れされている。
  その子も、ドアの奥へ逃げて行った。
  奥から出て来た男と常磐を含めて、 相手は4人。
  その内2人はヨゾラの左右に立った。
  もう一人は常磐の横に立った。
  逃げられない様にする為だろうか。
  
「さて、楽しませてくれるんだよね」

  常磐は立ち上がった。
  真幸は黙って上着を脱ぐと、いきなり横の男の顔面を上着で引っぱたいた。

「いてっ!」

  目元に当たったらしく、顔を抑えて男は蹲った。
  その隙に、常磐の背後に周り両手を後ろ手に
  
「ヨゾッ……、ラ?」

  ヨゾラの方を見ると、一人の男は鼻血を出して床に寝転がらせ頭に片足を乗せて、もう一人も鼻血を流しながらヨゾラに胸倉を掴まれている。

「……心配は、無用やったな」

  真幸はポツリと言うと、倒された男二人にゾッとした。
  
「うぅ……、このっ!!」

  真幸の上着で引っぱたいた男は、片手で顔を押えながら立ち上がり、真幸に襲いかかろうとした。
  が、真幸は常磐を拘束しながらその男を蹴り飛ばした。

「分かって居るの?ヤクザの息子に……、こんな事をしたら」

  常磐は焦らずに、ゆっくり真幸を見上げた。

「俺が最初からそんな条件飲むとは思うてへんやろ」
「……そーだね。でもさ、……」

  常磐が笑顔を向けると、少し背伸びをし真幸の頬に唇を寄せた。

「何すんねんっ!!」

  思わず手を離した時だった。
  二人に向かって一直線に電撃の様な衝撃が床伝いに走った。
  
「!?」

  電撃の様な物が真幸と常磐の足元に走ると、脳天まで熱とビリビリとした強めの痛みが、身体中に走った。
  気を失う程では無いが、痛いもんは痛い。
  常磐は片膝を床に着いた。

「いきなり何やねんっ!殺す気かいっ!!」

  驚きもあってか、真幸が声を上げた。

「あー……、何か、一瞬ムカついて。……何だろうな?」

  ヨゾラも良く分かっかっていない様だが、真幸の頬に常磐の唇が触れた瞬間のヨゾラの表情は、自分のお気に入りのモノをいきなり取られた時の様な、冷たい表情だった。
  ヨゾラは自分の手の平を見ては、眉間に皺を寄せている。

「……あははっ!何コレっ!」

  常磐がお腹を抱えて笑いだした。
  
「手品?チョーノーリョク?煽ってガッカリする浅霧の顔を見たかったんだけど、火を付けちゃったみたいだね」

  自分に起こった出来事に驚きもせず、何故かワクワクしている様である。
  変な先輩だとは思って居たけど、ここまでとは。

「でも、どーする?こんな弱味、俺に握らせちゃって」
「……弱味?」

  ヨゾラは首を傾げた。

「こんな事、学校で噂になったらさ……。ただでさえ、上級生をぶん殴ったんだし」
「喋るだけ喋らせて、記憶を消す」

  まだ余裕を見せる常磐に、ヨゾラは握った拳を見せた。

「そんな能力もあるんか?」
「知らねぇ。が、記憶が消えるまで殴りまくる」
「いくらなんでも死んでまう」

  呆れながら真幸は言った。

「俺、人をいたぶるのは好きだけど、自分が痛いのは嫌いなんだよね……。中出しは諦めたくないけど」
「黒槌のアジト、教えてくれへん?出来れば、兄貴囲っとるとこが知りたいねん」
「……」

  常磐は真幸と拳を見せているヨゾラを見た。

「……いくら俺でも分が悪いか」

  ボソッと呟いた。
  そして、ニコッと笑う。

「だったら、真幸と浅霧でキスして見せてくれる?」
「は?!」

  笑顔を見せながらそう言う常磐に、真幸は顔を赤くして声を上げた。
  ヨゾラはやっぱりまだ分かっていない。

「中出しからキスに変えたんだ。楽なもんだろ?」

  常磐の言葉に、真幸は頭を抱えた。

「……ヨゾラ」
「何?」
「コイツ、殴ってえぇで」
「何でだよ?」
「アホな事抜かすからや」

  ヨゾラは理解出来ないのか、納得出来ていない表情を見せた。
  
「真幸」
「何や?」
「キス、って何だ?」
「知らなくてえぇねん」

  案の定の聞き返しに、真幸は即答した。

「さっき俺が真幸にしたのもそうだけど、唇と唇での愛情表現並の見たいなー」
「簡単にするかい」
「だったら、俺が浅霧か真幸とする?中出しはしないんだし、それくらい良くないか?」
「さっきから何やねん。俺は……、っ」

  真幸の言葉が遮られた。
  思ったより柔らかい、ヨゾラの唇が真幸の唇に触れた。
  真幸の身体が硬直した。
  舌を絡め合うような口付けはまだヨゾラは知らない。
  そっと唇が離れる。

「俺はお前が誰かとするのは嫌だし、俺も他の誰かとするのは嫌だ。そう思った」

  ヨゾラは真顔で真幸にそう言った。
  真幸は言葉を失い、赤く火照った顔を手で抑える。

「なぁ、先輩の条件は飲んだんだ。カグ兄は何処に居る?」

  ヨゾラは常磐の方を向いた。
  常磐は笑っている。

「言ったのと違うけど、いーよ。教えてあげる」

  笑い涙を指で拭いながら、常磐はそう言った。
  


  



  
 

  

  

   


 
  
    
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