近江の轍

藤瀬 慶久

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九代 甚五郎の章

第68話 文政の御朱印騒動(2)

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 1822年(文政5年) 夏  江戸 浜町矢ノ倉 野田流槍術道場



「困った事になりましたな。兄上」
 浜町矢ノ倉の野田流槍術道場の主、野田祥介が野田増兵衛・北村次郎右衛門を前に難しい顔をしていた。
 野田祥介は野田増兵衛の弟で、町人の出でありながら手習師によって武の才能を見いだされ、東北諸藩を巡って武芸を磨き、江戸で漢学を学んで今は槍術道場を開いていた。

「その書付はともあれ取り返さねばいけませんな…」
「祥介は江戸に色々伝手があるだろう。今誰が書付を持っているのか探れぬか?」
「やってみましょう。私の門人に高橋という者が居ります。奴は日ごろから大身の旗本などに出入りしておりますので、高橋に頼めば何か探り出してくれましょう」
「すまんが、故郷の為に一つ骨を折ってくれ」
「まあ、これくらいならお安い御用ですよ。母上からもくれぐれも役立ってくれと文を頂きましたので」

 そう言うと、祥介はその日のうちに高橋に渡りを付け、翌々日には高橋が報告を持って野田道場を訪れた
 。
 高橋は、青木・柴田の二人の身元を探り出し、道中奉行石川左近将監忠房の家臣の木村来介と渡りを付けてくれた。
 木村が調べてくれたところによると、すでに書付は道中奉行役所へ届けられており、この上は書付を取り戻すことは難しく、何らか別の手段、例えばそれこそ御朱印状の本紙を持って改めて訴え出るなどしてはどうかと言ってきたが、そんなことをすれば全ての証拠を握り潰されて終わるだけだと即時に却下された。

 間の悪い事に紺屋仁兵衛と筆屋弥兵衛も江戸へ到着した。
 彼らの役目は野田・北村の監視なのだから大人しく後ろで見ていればよかったのだが、筆屋弥兵衛は腰も軽いが頭も軽いという性格で、独自に伝手を求めて運動を開始してしまった。

 遅れて総年寄市田清兵衛も江戸へ到着し、清兵衛は西久保にある領主朽木主膳の江戸屋敷へと事の子細を報告に向かった。



 1822年(文政5年) 秋  江戸西久保 朽木主膳江戸屋敷



 市田清兵衛と付添の梅原次郎右衛門が平伏する前を通り、闊達な足取りで領主朽木主膳長綱が上座に座った。
 八幡町代官の川北作之丞に伴われて、領主朽木主膳直々に報告を聞くとのことだった。

「面を上げよ」
 言われた通りにすると、清兵衛は初めて主君朽木主膳を見た。
 既に六十歳を越しているはずだが、頭髪が真っ白になっている以外は若々しい活力に満ちていた。
 話す言葉も快活で、とても老人のそれとは思えない。
 まったく元気なじい様だと不遜な事を考えていると、突然朽木主膳から声が掛かった。

「話は聞いた。その方らの他にも何人か江戸へ来ているそうだな」
「はっ!方々に伝手を求めて運動しておりまする」
「ふむ。 …運動はちと控えよ」
「は?」
 思わずポカンと主君を見た。
 ここで諸役免除を否定されることになれば、朽木家にとっても痛手のはずだが…

「町人があまり大っぴらにやり過ぎると、ちと面倒になるかもしれん。
 武士は下らん面子にこだわるからの。特にこの江戸は。
 ま、儂も人のことは言えんか。面子の為にお主らから散々カネを巻き上げておるからのぅ」
 そう言って豪快に笑った。言っている事は自虐的だが、清兵衛は今までカネを巻き上げるだけの存在だった領主にも人間味を感じ、何やら悪い気持ちはしなかった。

「ま、その方らの言い分も分かる。そこで、儂も動こう。
 だから、その方らは少し控えておれと言っておる」
「主膳様直々に… でございますか?」
 清兵衛は正直意外だった。ご公儀に対してはとことん弱腰だった領主様が、自分たちの為にご公儀と戦ってくれるという。
「うむ。まあ、福知山の本家に依頼することになるがな」
「承知いたしました。よろしくお願い申し上げます」
 清兵衛は再び平伏し、御前を下がって野田・北村らと合流した。


 清兵衛が下がった後、朽木主膳は代官の川北と今後の動きを打ち合わせた。
「さて、まずは福知山の本家から老中へ運動してもらうかの」
「左様ですな。勘定吟味役へも手を回しておきましょう」
「おう、そうそう。それと水戸藩へも協力を依頼しよう。以前に八幡町のカネを融通してやっただろう。
 今こそ借りを返してもらうとしよう」
「承知いたしました」



 1822年(文政5年) 秋  近江国八幡町 山形屋



「さて、では我らもそろそろ動きますか」
「左様ですな」
 山形屋では、九代甚五郎の後見役となっている仁右衛門が扇屋伴伝兵衛と大文字屋西川利右衛門と会合を持っていた。

「私は紀州公へお口添えを願いに行きまする」
「では、私は尾張藩へ参りますかな」
「私はご老中・若年寄の元へ参りましょう」
 山形屋は弓の仕入れで紀州藩に、扇屋は名古屋に支店を開いている関係で尾張藩に、大文字屋は江戸城の畳替えなどを引き受けている関係で幕閣へとそれぞれ顔が利いた。
 まさにカネとコネを総動員しての戦いだった。


 八幡御三家の三人は、それぞれに運動先へ向けて独自に八幡町を発った。



 1822年(文政5年) 秋  江戸 石川左近将監役宅



 十月十九日
 江戸で訴えを起こしていた野田・北村両名は、道中奉行石川左近将監から呼び出され、お白州に平伏していた。
 石川左近将監忠房はラクスマン来航時に説諭使として直接交渉に当たった人物で、謹厳実直の硬骨漢だった。
 今上座には石川の姿はなく、留守役の与力、中島平四郎が座していた。

「面をあげよ」
 言われた通り顔を上げる。町人はお白州に座るのが常とはいえ、まるでお裁きを待つ罪人の気持がして野田・北村の両名はそわそわと落ち着かなかった。

「本日呼び出したのは他でもない。先般御朱印状の取り調べの儀があり、その時に提出した書面、その外諸々の本件に関する願い書へ改めて本日印をついてもらおうと思ってのことだ」

 ―――諸役免除を頭から否定するつもりか!

 野田増兵衛があまりの事に言葉を失っていると、北村次郎右衛門が心を励まして反論した。

「恐れながら… 申し上げます!八幡町においては御神君様より頂戴した御朱印状にて諸役免除を頂いておりまする。
 何卒、今回につきましても御朱印状の如くにお役を御免下さりますよう、お願い申し…」

 その言葉を聞き終わらぬうちに、中島与力の顔が見る見る険しくなった。

「黙れい!」
 中島の大喝に、北村が震えあがる。野田も我を忘れて逃げ出したい欲求に駆られた。

「未だ助郷役を仰せ付けられるかどうかも分からぬうちに、御朱印状を楯に免除を願い出るとは不届千万!
 そもそも神君様が御朱印状を下されて一体何年経つと思っておる!
 今後はそのような不遜な物言いはきつく慎むが良い」
「恐れながら、申し上げます!」
 今度は野田増兵衛が反駁した。あまりの物言いに図らずも闘志が燃えて来た。

「そもそも、日ノ本全てのお大名様は神君様より賜った御朱印状にて御知行を安堵されておられます。
 お武家様でも左様でありますのに、何故我ら町人にはそれをお認め下されぬのか!」
「たわけ!大名は当代の上様から安堵されておる!その方の言いざまはお上を軽んじる不逞の物言いぞ!」
「であれば、御神君様手ずからの御朱印状は、より重きお印ではありませぬか!」
「ぐむっ……」
 思わず言葉に詰まった中島は、顔を真っ赤にして震えていた。
 言ってしまってから、増兵衛は己の言い過ぎに冷たい汗が背中を伝った。

「もうよい!下がれ!裁きは追って沙汰する!」
 そう言うと、中島はドスドスと足を踏み鳴らして奥へ引っ込んでしまった。


 野田・北村両名が宿に戻って今日の仕儀を報告すると、一同は大騒ぎになった。
 市田清兵衛は朽木主膳から言われた通り、領主に任せてあとは神に祈るだけと浅草の東漸寺に参拝し、一念に祈った。
 野田増兵衛・北村次郎右衛門は、野田祥介の伝手を頼りにその後も様々に運動した。
 紺屋仁兵衛・筆屋弥兵衛は、やれ老中に駕籠訴をするだの、赤城先生と名乗る怪しげな儒者に金を渡して仲介を依頼するといった軽挙妄動ぶりだった。
 文政期の事で武士への運動は賄賂が必須で、野田・北村の運動も相当に金品をバラ撒く活動ではあった。

 清兵衛は再び朽木家に呼び出され、今度は本家福知山藩の家老から金品賄いによる運動は無用ときつく釘を刺され、後は全員で浅草東漸寺に参ることになった。

 一枚岩で戦って来た八幡町も不測の事態に空中分解を起こし、とうとう武運が尽きたかに見えた。



 1822年(文政5年) 秋  江戸 石川左近将監役宅



 十月二十九日
 奉行所より再びの呼び出しがあり、今回は判決を伝えるとのことで野田・北村・紺屋・筆屋が打ち揃ってお白州に座った。
 市田清兵衛は風邪をひいて寝込んでいた。風邪だけでなく道中検分使を迎えて以来のストレスで、食も細くなり段々と元気が無くなっていた。
 野田増兵衛は清兵衛の容態を心配しながらも、とにかく諸役免除を勝ち取るまでは帰れないと強い覚悟を持って座っていた。

「面をあげよ!」
 前回と同じ中島の声が響き、全員が顔を上げる。果たして、中島が上座に座っていた。
 手に持った判決文を前方に掲げながら、中島平四郎が朗々と読み下し始めた。

「判決を申し渡す。
 その方共段々に願い書を持って申し立て候えども、権現様の御朱印状には諸役免除の記載はこれ無きとの書付があり…」
 ピクリと増兵衛が反応する。判決文を読み上げている時に口を挟むことはできない。
 もどかしい思いが心を満たした。

「…また、権現様の御朱印状は信長・秀次の朱印状を追認したに過ぎず、当節に当たってはその特権を見直すべき時に来ていると言わざるを得ぬことは明白である」

 増兵衛は思わず目を瞑ってうなだれた。
 八幡町の諸役免除は無効とされるのか…
 先祖に、祖父に何と言って詫びれば良いのか…

「然れども」

 続く言葉に再びピクンと反応する。

「今までに諸役免除を認めていたことは事実であり、かつ朝鮮人の使節の接待や日光幣礼使(朝廷から日光東照宮へ参詣する使節)の接待などにおいて格別に御用を務めている事にも鑑み、先儀に倣って伝馬諸役については、これを免除するものとする。
 以上である!」

 ―――諸役免除が!守られた!

 増兵衛以下お白州に座る面々は、飛び上がらんばかりだった。
 これで差村による助郷も免除となる。今まで通りに諸役免除が認められたのだ。

 上座から中島がふっと表情を緩めて野田増兵衛に呼びかけた。

「増兵衛とやら。近う寄れ」
 言われて少しにじり寄る。
「もそっと近う。もそっと。もっとじゃ」
 言われるままににじり寄り、ついに中島の吐息がかかりそうなくらいの位置に座った。
 一体何事かと恐縮していると、中島が増兵衛だけに聞こえる小声で囁いた。

「その方らの根回しは恐ろしいの。ようもあれだけ動けるものだ。
 朽木主膳殿、福知山朽木殿はもとより、ご老中や紀州公・尾州公・水戸公の御三家。さらにはその方らからカネを借りている各大名家から、諸役免除を認めてやれと嘆願書が引きも切らずじゃ。
 いかな石川様とてあれだけの大名を相手に喧嘩はできぬと、遂に矛を収められた」

 中島は幾分おかしそうに話した。これだけの大名を味方に付ける八幡町という町に、改めて興味を抱いたという風だった。
 あるいは石川忠房の慌てぶりが余程に滑稽だったのかもしれない。

 中島は立ち上がると、今度は万座に聞こえる大きな声で話しかけた。

「今後もその力をご公儀の為に役立てよ。よいな」
「ハハッ!」

 中島は一つ頷くと、軽快な足取りで奥へ引っ込んで行った。
 判決の請け状を頂くと、増兵衛らは喜び勇んで市田清兵衛の待つ宿へ報告に向かった。
 清兵衛も慶事に喜んだが、体調の悪化は既にのっぴきならない状態にあり、遂に八幡町に帰ることなく十一月九日に息を引き取った。

 増兵衛達は後始末を終えて八幡町に帰郷した。
 迎えた人達は一様に複雑な表情だった。
 お骨箱に収まった清兵衛の帰還と諸役免除を勝ち取った判決文を同時に受けて、喜べばいいのか悲しめばいいのかわからなかった。



 1822年(文政5年) 冬  尾張国名古屋城



 尾張藩附家老の成瀬正壽は、藩主徳川斉朝へ事の始末を報告に来ていた。

「嘆願通り、八幡町は諸役免除が認められたようにございます」
「うむ。ご苦労であった」
「しかし、よろしいのですか?他国領にこれほど肩入れなされるのもいささか…」
「なに、我が泉を守るためならば安いものだ」
「はあ… 泉でございますか?」
「そうよ」

 斉朝は顎を触ると、揶揄するように成瀬を見た。
 目にはからかうような色が籠っていた。

「わしが八幡町を尾張領にと申し出ているのは知っていよう」
「それは承知しております。しかし、諸役免除などと面倒な事この上ないのでは?」
「ただの町ならば… な。
 八幡町に限っては、守ってやる価値がある」
「はぁ…」
 成瀬は主君の言う事が今一つ要領を得ないと感じた。
 諸役免除を守るために朽木が今回大分汗をかいた。尾張藩が拝領すれば、その面倒を我からしょい込む事になる。

「面倒だけではない。八幡町にはカネがある」
「……財政再建に充てるおつもりで?」
「そうよ。八幡は泉じゃ。掬っても掬ってもカネが湧いてくる。
 助郷などさせてその泉を枯らせてしまっては元も子もあるまい。」

 ―――八幡町も、大きな借りを作ったものだ

 成瀬は八幡町の事を多少気の毒に思った。
 尾張藩においてもこの頃はかなり金に困っており、農民や領内の商人を泣かせて財政再建を行っていた。
 徳川斉朝は八幡町の領有を幕府に願い出ているが、それが御用金目当ての物であることは明白だった。

 借りたものは、返さなければならない。
 御朱印騒動により勝ち取った諸役免除は、高く付くことになった。
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