上 下
149 / 159
幕間(3)

幕間 うちの兄、知りませんか? 前編

しおりを挟む
 私はルル。エナンの街の神殿の大神官、グレイ・グレイブの長女です。そして母はサーシャ・グレイブ。元神殿騎士で今は森の番人をしています。

 そして私には4歳年上の兄が。居ましたと言ったのはずっと行方不明だからです。2年半ほど前、忽然と姿を消してしまったのです。

 兄が居なくなった時、神殿の偉い人が来て、その事を告げて行きました。行方不明だけど今のところ無事。それ以上はいえないと。両親は納得できないながらも、偉い人の話なので受け入れるしかなかったようです。

 とても優しい兄でした。私が1歳半の時に家を出て王都に行ってしまいましたが、ものすごく可愛がってくれて、色々とお話をしてくれた事を

 そう、覚えています。私は生まれてからずっと記憶があるのです。普通は小さい頃の事は覚えていないものらしいですが、私は兄の事をハッキリと覚えています。

 何故なのかは分かりませんが、ハッキリと覚えています。なのでずっと心に誓っていました。6歳になったら私も王都の学園に行って兄を探そうと。5歳になったら両親にも伝えるつもりです。

 そして来週がついにその5歳の誕生日です。兄は5歳の時にはゴブリンキングを倒す程の戦闘力を持っていたようですが、残念ながら私は普通です。普通の少女です。それでも行かなければなりません。兄を探す為、王都へ。


 誕生日の前日、我が家に来客がありました。兄と仲が良かったと言うリーナ姉さんとレミ姉さんです。2人は兄が居なくなった私の事を気に掛けてくれていて、半年に1度くらい尋ねて来てくれます。

 リーナ姉さんは何とSランク冒険者だそうです。とても凄いと言っていました。レミ姉さんと、その付き人? のタロウさんと言う人と何かを探して旅をしているそうです。

 因みに、レミ姉さんは猫の獣人さんです。とても可愛いのです。

「リーナ姉さん! お久しぶりです。
 探し物は見つかりましたか?」

「ううん。ダメね。何の進展もないわ。
 それにしてもルルちゃん、半年見ない間にまた大きくなったわね」

 そうなのです。先ほど普通と言いましたが、それは戦闘力の話で、他の子より私は少し成長が早いようなのです。明日で5歳ですが、見た目は8歳くらいです。

「ホントだね。よく食べて、よく寝てるからかな?
 寝る子は育つって言うからね」

 レミ姉さん、多分それでもここまでは育たないと思います。

 兄は女神様に【神託】を貰った特殊な子だったそうです。両親はもしかしたら私も何かあるのかもと言っていました。私は生まれてからの事を全部覚えてるし、確かに何かあるのかも知れないです。

「それで、リーナ姉さんとレミ姉さんは何日居れるのですか!?」

「今回は2泊の予定よ。明日の誕生日は盛大に祝わせて貰うからね! (リョーマの分まで・・・)」

 何か最後にボソッと言っていましたが良く聞き取れませんでした。でも、楽しみです。

 あっ、そうだ。2人は旅をしてるとは言え、拠点は王都って話だったので王都に行きたい件、相談に乗ってくれるかも知れません。また旅に出るまでの間に相談してみる事にしましょう。


 翌日、私はリーナ姉さん達と森へ入っていました。何かやりたい事はないかと聞かれたので、森に入ってみたいとお願いしたのです。

 当然、普段は両親が反対するので森に入る事はできません。でも今回はSランク冒険者がいるのです! 母も許可してくれました。レミ姉さんも、そして付き人のタロウさんもとても強いらしく、心配は要らないと言う話でした。

「懐かしいわね・・・」

 襲って来たゴブリンを軽くあしらいながら、リーナ姉さんがそんな事を呟いていました。

「何が懐かしいのですか?」

「あ、ああ。実はリョーマとレミと3人でこの森に入った事があるのよ。丁度リョーマも5歳になったばかりの頃ね」

 それは私も覚えています。兄が5歳になって少ししてからリーナ姉さんが兄に魔法を教える為、何日かうちに滞在した事がありました。その後で確か依頼で森に行ったのでした。ゴブリンキングもその時倒したはずです。

「そうだね。リョーマに護衛してもらって森の奥の遺跡に行ったんだよね。思えばアレが苦労の始まりだったんだよね。【神託】スキルが上っちゃって・・・」

 レミ姉さんは急に暗くなってしまいました。何かとても苦労したみたいです。

「そうだ。折角だからあの遺跡まで行ってみようか。今からでも夕方には戻れるでしょ」

「それじゃあ、ルルちゃんは僕がおんぶして連れて行きますね」

 そう提案してくれたタロウさんにリーナ姉さんレミ姉さんは白い目を向けました。

「ちょ、ちょっと! やましい事とか考えてないですよ? この森を奥まで進むのは子供には大変かなと思っただけで」

「そう? てっきりそう言う趣味があるのかと思っちゃったわ。ごめんなさい。
 でもタロウさんに担いで貰わなくても大丈夫よ。ミルク!」

 リーナ姉さんは何もないところに向かって話しかけました。

「はいなの!」

「わっ!」

 そしたら、何もないところから可愛い妖精さん? が出てきました。絵本で見た事があります。かなりランクの高い魔物だったはずです。

「ごめんなさいなの! 驚かせてしまったの。
 私はミルク。リーナのパートナーなの。よろしくなの」

「あっ! はじめまして。ルルと言いますです」

「私はシルク。レミのパートナーよ。よろしくね」

 私が自己紹介をするともう1人、同じような妖精さんが出てきました。ミルクとシルク。とても可愛いです。

「この2人は私たちのパートナーである前に、リョーマの従魔なのよ」

「え・・・兄の?」

「そう。この2人の従魔契約が切れていないと言うことは、リョーマも無事と言うことなの。だから安心して。
 リョーマは必ず私たちが探し出すわ」

 あれ? もしかしてリーナ姉さんとレミ姉さんは、兄を探して旅をしているのでしょうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する

Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。

ヒロインの双子の姉に転生したので妹と一緒に自由を目指します!

星崎 杏
ファンタジー
妹に頼まれたアイスを買いにコンビニに行った帰りに、子供を庇って車に引かれたら、神様に謝罪され、妹が好きな乙女ゲームの世界に転生することになった。 ゲームに出てくることのない、ヒロインの双子の姉に転生した。 ヒロインの双子の姉に転生した私と妹の、のんびりスローライフが始まる?! 初めての作品となります。誤字脱字等がありましたら教えてもらえたら嬉しいです。 念のためR15にさせてもらっています。 主人公視点がなかったりしますが、女主人公です。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

処理中です...