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第3章 王都騒乱編

従話 ポチの冒険(15)

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 大変なのだ。大変なのだ。とても大変なのだ。

 アクモンが消えてしまったのだ。我輩の失敗のせいでアクモンが消えてしまったのだ。

 ついにご主人の従魔で初の殉職者が出てしまったかも知れないのだ。大変なのだ。

「殿! 落ち着くでござる! まだアクモンが生きているかも知れないのでござる」

「そうだよ、ぽっちん! 諦めるのはまだ早いよ」

 アドランとマルフは優しいのだ。ショックを受けている我輩を励ましてくれているのだ。

 だけど、さすがにさっきの光に飲み込まれたらアウトだと思うのだ。良くても次元の狭間に真っ逆さまなのだ。下手したら身体が粒子になって分解されてるのだ。

「ゴ、ゴブ。どうなのだ?」

「うむ。ちょっと待ってくれ。確認中じゃ」

 そう言いながら、ゴブは何やら手に持った端末で色々と確認しているのだ。前世のタブレットのような端末なのだ。いつの間にこんな物を作っていたのだ?

「ん? これかの? これはポチ殿の話からインスピレーションを得て作ったのじゃ。色々と記録ができるぞ。今はさっきの光と時空の歪みのデータを解析中じゃ」

 ゴブ・リーンのチートここに極まれりなのだ。我輩の話からここまで形にするとか、意味が分からないのだ。


 そして、そのまましばらく我輩たちは無言でゴブの作業が終わるのを待っていたのだ。

「ふむ。わかったぞ」

 10分程経った所で、ゴブが呟いたのだ。その言葉でみんなゴブに注目したのだ。

「おおっ! ど、どうなのだ? アクモンは無事なのだ?」

 代表して我輩が尋ねる。配下の繋がりは切れてないから最悪の事態だけは避けられていると思うのだ。さっきは焦っていて確認を忘れていたのだ。

「結論から言うと、転移したと考えられるのじゃ」

「転移なのだ? 一体、アクモンはどこに転移してしまったのだ?」

 転移しただけなら、やっぱり無事ではありそうなのだ!

「推論でしかないのじゃが、データから考えられる転移先は・・・」

「転移先は・・・?」

 そこでゴブは天井を指差す。

「上じゃな」

 上じゃ分からないのだ。上の階層にでも飛ばされたのだ?

「正確にはずっと上、地上じゃな。もしかしたら少し空の上かも知れぬ」

 地上? 空の上?

「それってつまり、ダンジョンの外なのだ?」

「そうじゃな。ダンジョンの外じゃ。
 想定外ではあるが、アクモンは結界を越えたと言うことじゃな」

 さっきのデータを解析してそこまで推定できるとか、やっぱりゴブはチートなのだ。

 でも良かったのだ。空に飛び出してしまったとしても、アクモンなら何とでもなるのだ。まずは無事である事を喜ぶのだ。

「良かったのだ。本当に良かったのだ」

「うんうん。良かったね。ぽっちん心配し過ぎて、不思議な踊りを踊ってたよ」

 ええ!? 自分では気付かなかったのだ。

「我輩変な踊りを踊ってたのだ?」

「冗談だけどね」

 騙されたのだ!

 外に出たって事は、きっとご主人と合流できるのだ。心配して損したのだ! アクモンが羨ましいのだ!

「でも棚から牡丹餅にゃ。さっきの光を狙って発生させる事ができたら、みんな外にでられるにゃ」

 おお、確かにその通りなのだ。タマが冴えてるのだ。これでやっと我輩もご主人に会えるのだ!

「ううむ。確かにそうなのじゃが、難しいかも知れんな」

「そうなのだ? 再現はできないのだ?」

「うむ。ポチ殿はさっきどんな失敗をしたか覚えておるかの?」

 さっきの間違い? そう言われると・・・。

「同時に色んな処理をしていたので、正確には覚えていないのだ・・・」

「じゃろう? 再現するにも時間がかかりそうじゃな」

 天国から地獄とはこのことなのだ!? やっとご主人に会いに行けるかと思ったら、ダメだったのだ。

「どちらにしろ、まずはこの無限回廊を抜けない事には話は始まらんのじゃ。
 地上へ転移できるとしても、上の階層に残して来た仲間を置いて行く訳にもいかんじゃろう?」

 確かにその通りなのだ。まずはさっきの続きなのだ。

「分かったのだ! 急いで魔道具作りの続きをやるのだ!」

 もう同じ失敗はしないのだ! ・・・ん? 同じ失敗はした方がいいのだ? 失敗が成功なのだ? 成功が失敗なのだ? 分からないのだ。哲学なのだ。

 でも、我輩たちだけ転移する訳にもいかないから、結局は失敗したらダメなのだ。

 ☆

 それから丸2日ほどかけて、どうにかこの無限回廊を抜けるための魔道具が完成したのだ。

「やったのだ! ゴブもお疲れ様なのだ。
 これを使ってまずは上のみんなの所に戻るのだ」

 上の階層で打ち上げをしていた仲間達には一応【念話】で現状を説明してあるのだ。我輩たちが出発してから3日経ってるから、さすがに連絡なしだと心配されるのだ。報連相は大事なのだ。

「その前に、こっちの魔道具を使ってみるかの?」

「そうなのだ。早速使ってみるのだ」

 そう、今回嬉しい誤算があったのだ。なんと副産物として素晴らしい魔道具が完成したのだ。

 この魔道具、何と理論的には結界の外とリアルタイムで【念話】ができるのだ。ご主人にはまだ直接会った事はないので直念はできないけど、ミルクかシルク経由なら行けるのだ。

〈ミルク、ミルク。聞こえるのだ? 我輩ポチなのだ。聞こえたら返事して欲しいのだ〉

 とりあえずミルクに【念話】してみたのだ。

〈え? ボス? ボスなの? 【念話】できると言う事は、ボスもアクモンみたいにダンジョンから出て来たの!?〉

 通じたのだ! 理論通りの効果を発揮してくれたのだ。

〈残念ながら、我輩はまだダンジョンの中なのだ。【念話】だけが可能になる魔道具が完成したのだ〉

〈そうなの!? すごいの! ・・・って今はそれどころじゃないの!〉

 ん? どうしたのだ? 【念話】できるようになった以上に凄い事だあるのだ?

〈大変なの! リョーマが怪我をしちゃったの! 大変なの! とても大変なの!〉

 え? ご主人が怪我? アクモンが付いていながら、怪我!?

 その言葉を聞いて、我輩の頭の中は真っ白になったのだ。
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