上 下
115 / 159
第3章 王都騒乱編

従話 ミルクのミラクル大作戦

しおりを挟む
 ミルクは今、リーナの実家、つまり王城に侵入しているの。この前も侵入したところなの。もちろん透明になってるの。

 今回のミッションは1つ。おーさまを探し出す事なの。難しいミッションだけど、ミルクならきっとやり遂げられるの。何たって、成功報酬に新しいスイーツが貰えるの!


 なぜこんな事になっているかと言えば、リョーマがダイダの街から帰ってきて、神殿に向かってから、みんなはずっと難しい話をしていたの。

 ミルクは退屈だったからシルクとお菓子を食べながらお喋りしていたの。

 シルクは大事な話をしているから、聞いていたいって言ってたけど、会えなかった1年間の積もる話がまだまだあるから、強引に付き合ってもらったの。

 そして夜も更けて来た頃に、ミルクはリョーマに呼ばれたの。

 そこで王城でおーさまと言う人を探して欲しいって言われたの。大人数で行ってもかえって邪魔になるから、ミルクが単独行動なの。

 見つけたら、とりあえずこのポーションを飲ませろって、リョーマ謹製ポーションを貰ったの。

 何でも、王城は色々と結界が張られていて、気配察知系のスキルが上手く働かないらしいの。仕方ないので、侵入して探すしかないんだけど、そこでミルクの【直感】スキルの出番なの。

「ミルクの【直感】は直感と言うより奇跡に近いからね。よろしくね。
 上手く行ったら、お礼に今までにないスイーツを作ってあげるよ」

 リョーマにそう言われた瞬間、ミルクは窓の外に飛び出していたの。少しでも早く、おーさまを探して連れてくるの!


 とりあえず、前回太郎を拉致した部屋の近くまで来たの。王城の中では寂れた場所だけど、何となく【直感】でここに来いって言われたの。さて、おーさまはどこにいるの?

 あっ! しまったの!

〈もしもし、リョーマ、リョーマ。大変なの〉

〈うん。何となく分かるけど、一応聞くよ。どうしたの?〉

 大変な事に気付いてしまったので、リョーマに【念話】したらそんな事を言われたの。えっ、何となく分かるの?

〈ミルク、おーさまって誰か知らないの〉

〈そうだよね。説明の途中で行ってしまったから、てっきり知ってるのかと思ったけど、やっぱり知らないよね〉

 リョーマにはバレてたの! 新しいスイーツに目が眩んで飛び出してしまったの。許して欲しいの。

〈王様はね。リーナのお父さんなんだ。毒を盛られてどこかで苦しんでるはずだから、助けて上げて欲しいんだ〉

 おーさまはリーナのお父さんだったの! しかも苦しんでるらしいの! 早く探して助けるの。

 だけど、どこに居るかさっぱりなの。困ったの。そう思ってたら、廊下の向こうから2人組がやってきたの。どことなくリーナに似ている2人組なの。

「親父がそろそろヤバいって? 本当だろうなミーナ姉」

「本当よ。今は奥の部屋に閉じ込めてるんだけど、見張りをしている部下から連絡があったわ。
 まあ、行ってみたらわかるでしょう」

 良く分からないけど、【直感】ではこの2人に付いて行くといい気がするの! そう思って、この2人の後をつける事にしたの。

「しかし、まだ一部しか掌握できてないのに親父を監禁したって聞いた時は早まったんじゃないかと思ったけど、結果的には良かったな。
 今朝の演説もあって、完全に流れはミーナ姉に向いているし、後は親父が病気で死んだ事にして・・・」

「王が死ぬとか、あまり大きな声で話すんじゃないわよ。どこで誰が聞いてるかも分からないからね」

 そう言われて、男の方が少し声のトーンが下がったの。ミルクが聞いてるの。けど、やっぱりこの2人はおーさまの所に向かってるみたいなの。ミルクの【直感】はよく当たるの!

「でも、変異した魔物はどうすんだ? 本当にあの勇者たちに討伐に行かせるのか?」

「当面は無理ね。勇者には城内の制圧に力を貸してもらうわ。魔物はしばらく冒険者とか兵士たちに任せましょう。リーナも冒険者として討伐に参加して、死んでくれたら良いんだけどね。

 何か聞き捨てならない話が聞こえたの! リーナが死ねばいいとか聞こえたの! とりあえず殴っておくの!

「痛っ! ちょっと何するのよ!」

「えっ? 俺は何もしてないぞ?」

「他に誰もいないじゃないの。確かに後頭部に衝撃があったんだけど・・・。
 まあいいわ。ここでケンカしてても仕方ないわね。着くわよ」

 どうやら、着いたみたいなの。この部屋におーさまが居るの。ミーナって呼ばれていた女の方がトビラをノックするの。

「私よ。開けて頂戴」

 ミーナがそう言うと、ギギっと音を立ててトビラが開いたの。2人が入るのに合わせて、ミルクも付いて入るの。

「状態はどう?」

「はい。御覧の通り、既に意識はありません。息を引き取るのも時間の問題かと思います」

 少し狭い部屋の中にはベッドが置かれていて、憔悴しきった感じのおじさんが1人寝ていたの。はぁはぁと苦しそうな感じなの。

「確かに、これなら明日の朝には死にそうだな。
 数日行方不明だった事は適当に理由をつけて、病気で死んだ事だけ強調しないとな」

「ええ、そうね。後は上手く王位継承権を貰うだけね。勇者と言う戦力でお話脅ししてね」

 2人はそんな感じでしばらく話をすると、満足したのか部屋を出て行ったの。

 さて、ここからはミルクのターンなの。まずこの見張りの男を魔法で眠らせるの。

「急に眠気が・・・。まだ見張りの交代まで時間がある・・・の・・・に・・・」

 ふふ。上手くいったの。見張りはぐっすりなの。後はおーさまにこのポーションを飲ませるの。

 口から少しこぼれたけど、無理やり瓶を口に突っ込んで飲ませたの。

「・・・うっ。ここはどこだ? むむ、ずっと重かった体が非常にスッキリしてるぞ?」

「ミルクがポーションを飲ませたの!」

 透明化を解除して話しかけるの。

「な、何だ君は? よ、妖精!? 君が治してくれたのか・・・?」

「そうなの! 預かったポーションを飲ませただけだけど、ミルクが飲ませたの!」

 エッヘン!

「そうか、ありがとう。あのまま死んでしまうんじゃないかと思ってたよ。しかし、君は一体・・・」

「あ、そうだったの。これを渡せって言われているの」

 そう言うと、ポーションと一緒に預かっていた手紙をおーさまに渡すの。

「これは? ・・・リーナからの手紙?」

 てっきりリョーマからの手紙かと思ったら、リーナからだったの。おーさまは手紙を読んでるの。

「・・・なるほど。そう言うことか。自分の目で確認は必要だが、今までの状況から言っても間違いはないんだろうな。
 とりあえず、手紙を読んだら君を経由してリーナと話ができると書いてあったんだが、お願いできるかな?」

「分かったの! ミルクに任せるの!」

 これでミッションコンプリートなの! 新作スイーツが今から楽しみなの。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する

Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。

ヒロインの双子の姉に転生したので妹と一緒に自由を目指します!

星崎 杏
ファンタジー
妹に頼まれたアイスを買いにコンビニに行った帰りに、子供を庇って車に引かれたら、神様に謝罪され、妹が好きな乙女ゲームの世界に転生することになった。 ゲームに出てくることのない、ヒロインの双子の姉に転生した。 ヒロインの双子の姉に転生した私と妹の、のんびりスローライフが始まる?! 初めての作品となります。誤字脱字等がありましたら教えてもらえたら嬉しいです。 念のためR15にさせてもらっています。 主人公視点がなかったりしますが、女主人公です。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...