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第3章 王都騒乱編

第21話 戦力の底上げ

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「太郎さん、とりあえず他の異邦人のメンバーを紹介しますね」

 ある程度、現状を共有した太郎さんには他のメンバーも紹介する事にした。

「はい、よろしくお願いします」

「では、まずは神殿の神官長でもあるゼムスさんです」

 そう言うと、部屋の中で気配を消していたゼムスさんがスキルを解除する。

 正直、俺でもそこにゼムスさんが居るかどうかの判断がつかないので多分いるはず程度でしかなかったが、ちゃんと居てくれたみたいだ。

「うわっ!? どこから出て来たんですか!?
 と、言うか獣人!?」

 ああ、そうか。太郎さんは昨日召喚されたばかりでまだ獣人を見た事がなかったのかな?

「ほほっ、はじめましてじゃな。わしが神官長のゼムスじゃ。よろしくな。
 みての通り、タヌキの獣人じゃ。特技は気配を消す事じゃな」

「ゼムスさんのレジェンドスキルは【気配支配】。本当はそこに居ても、居ないかのように気配を消すことができます。
 さらにどんなに気配を消してもゼムスさんには見破られます」

「なるほど、これがゼムス神官長が自称神様? のところで手に入れたレジェンドスキルなんですね」

 どうやら太郎さんは結構飲み込みが早いらしく、俺たちの会話にちゃんと付いて来てくれる。

「ああ、僕は声が出せなかったのもあって、小説・・・特にファンタジー系の物語を読むのが大好きだったんです。
 異世界召喚も現実にならないかと毎日空想していたくらいです。お陰で、召喚主の王女様たちも怪しむことができました」

 なるほど、今の展開はファンタジー小説の中では意外と王道的な展開なのかな? 理解が早いのは助かる。

「他のメンバーは違う部屋に居ますので、そちらに移動しましょう」

「太郎君は起きたばかりで腹も減っておるじゃろう。
 朝食も準備させるので、食べながらでも顔合わせをしようかの」

 ゼムスさんのその言葉と共に4人で移動を開始した。



「こちらの2人が、残りの異邦人。転移者の鈴木さんと転生者のジョージです」

「はじめまして、僕は長谷川太郎です。昨日、勇者として召喚されました」

 いつもの打ち合わせ部屋に移動した俺たちは、まず残りの異邦人と顔合わせをする事にした。

「ミルクはミルクなの。見ての通り妖精なの。リョーマの従魔なの。
 そしてこっちはシルクなの。同じくリョーマの従魔なの」

「見ての通りと言われても、妖精をみるのは初めてですので、分かりませんがよろしくお願いします?」

 ミルクの自己紹介には若干疑問形ではあるが、受け入れてもらえたみたいだ。

「従魔と言う事は、リョーマさんはテイマーなんですか?」

 そんな太郎さんの質問に答えようとしたらリーナさんが先に口を開く。

「リョーマは一応テイマーで、300体以上の従魔が居るんだけどね。
 リョーマ本人も人類最強レベルの強さを持っているチート野郎よ。絶対に敵に回してはダメよ」

「いや、リーナ様。最強レベルというか、どう考えても人類最強ですよね?
 この中で2番目にレベルの高い太郎さんより70も高いんですよ?」

 ひどい言われようだったけど、イヤな気はしない。それだけ俺の事を信頼してくれているんだろう。

「そうね、記録に残っている人類最高レベルの英雄が77。今回召喚された勇者で80。それにくらべてリョーマは・・・」

「リーナさんもこの1年でその人類最高のレベル77を超えて78になってるじゃないですか?」

「まあ、そうなんだけどね。それはリョーマのスキルの力でしょ? 私が凄い訳じゃ無いわ」

 ミルクのパートナーとなったリーナさんは、【従魔超強化】の恩恵を受けている。

「そうだ、リョーマ俺も早く従魔のパートナーにしてくれよ。足手まといにしかならない今の状態を何とかしたいんだ」

「従魔のパートナーですか?」

 その言葉に太郎さんは疑問を持ったらしい。

「そうね。太郎さんには分からないと思うから、ちょっと説明するわ。実はリョーマはスキル【従魔超強化】というユニークスキルを持っているの。
 このスキルは従魔の能力値と回復力を+100パーセント、更に取得経験値は+1000パーセントになると言うスーパーチートスキルなの。
 そして、その従魔とパートナー契約を結んだ人も同様の恩恵を受ける事ができるの。私は1年前にミルクとパートナー契約をした事によって、この1年で大きくレベルを上げて成長できたわ。
 まあ、デメリットとしてリョーマを攻撃する事はできなくなるけど、大した問題ではないわね」

「な、なるほど・・・それは確かにチートですね。
 【勇者】スキルでもレベル5で取得経験値は+50パーセントとなっていましたが、文字通り桁が違います・・・。
 やはりリョーマさんは神ですね」

 そのネタはもういいから!

「やっぱり【勇者】スキルは色々と複合的なスキルのようね。
 後で詳しく教えて頂戴」

「ええ、もちろんです」

「そうだ、それでリョーマに相談があるんだけど」

「どうした? ジョージ」

「ガルム隊に名前を付けた事で、従魔扱いになったんだよな?
 そのガルムとパートナー契約を結ぶことはできないのかな?」

 なるほど、ガルム隊は確かに全員に命名をした事で従魔に準ずる扱いとなった。それなら確かにパートナー契約も結ぶことができるのかもしれない。

《結論だけ申し上げると、パートナー契約を結ぶ事は可能です。ガルムとパートナー契約を結ぶ人側で双方が納得する事で契約が成立します》

 あ、【サポーター】さん、久々にありがとうございます。

「確かに、従魔扱いになったガルム隊とはパートナー契約を結ぶ事ができるみたいだね」

「じゃあ、是非、パートナー契約を結ばせてもらえないかな?」

「わしもできればパートナー契約を結びたいの。最近リーナ嬢ちゃんにどんどん差を広げられて悩んでおったのじゃ」

「もちろん、私もできる事ならその恩恵を授かりたいところです」

 ジョージ、ゼムスさん、更に鈴木さんまでが俺の従魔のパートナーになりたいと言い出した。

「確かに、戦力の底上げになると思いますが、広い意味では全員僕の従魔になると言う事ですよ?
 本当にそれでいいんですか?」

「リョーマの配下となったところで、わしの意思が操られる訳でもないんじゃろう?
 影響がリョーマに害をなす行動が取れなくなるくらいなら、今もそんなに変わらないじゃろう」

「うんうん。そうだぞリョーマ。今は少しでも戦力を増強する必要がある。手段は選んでいられないんだ」

 そのセリフは俺を信頼していなければ出てこないセリフだ。まがいなりにも、俺の従魔のパートナーになると言う事は、俺の指揮下に入ると言う事だ。もちろん俺は変な命令をする気もないが、その気になればそう言う事もできると言う事だし、ジョージはともかくゼムスさんや鈴木さんはそれを知っているはずだ。

「分かりました。とりあえず王都の外で警戒させているガルムたちを呼び戻して話をしてみましょう。
 双方の納得がないとパートナー契約は結べませんからね」

「ああ、俺はガルムたちに土下座してでもパートナーにしてもらうぜ!」

 ジョージはサムズアップしながら、カッコ悪いセリフを言うのだった。


──────
次回更新ですが、諸事情により少し遅れるかも知れません。
申し訳ありませんが、その場合は暫くお待ち下さい<(_ _)>
(遅くても1週間前後で再開します)
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