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第2章 学園入学編

第26話 神官長

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 屋敷を脱出したら、すぐにリーナさんが待つ場所へ向かい、自分にかけているスキルと魔法を解除する。その前に周囲に『遮音』をかけるのも忘れない。

「すみません。お待たせしました」

「うわっ! 急に現れるとビックリするわね・・・
 でも良かった。戻るのが遅いから心配してたのよ。
 それで、首尾はどう?」

「すみません。少しトラブルがありまして遅くなりました。
 でも計画通り、透明で見えないと思いますが、鈴木さんはここに浮いてます」

 と、そこまで話したところで俺の後ろから忍者風のお爺さんが出てきた。

 完全に気配を消しているから、居ることをつい忘れてしまいそうになる。

「ほほう。これは驚いた・・・。まさかリーナ王女がここに居るとは思わなんだ」

 急に現れたお爺さんは、リーナさんをみるなりそんな事を言う。ん? 顔見知りか? まあ、リーナさんは一応王女様なんだし、お爺さんが一方的に知っている事も在りうるのか?

「誰っ!?」

 急に現れた不審者に名前を呼ばれ、仰け反るリーナさん。先に説明したかったけど、お爺さん出てくるの早すぎです!

「大丈夫。このお爺さんは協力者ですよ」

「協力者?」

「驚かしてしまいましたな。これは申し訳ない」

 お爺さんはそう言いながら、被っていた頭巾を外す。そして、下から現れた顔をみて、また驚くリーナさん。

「え!? ゼムス神官長・・・?」

 なるほど、神託の事を知っていた時点で神殿関係者だとは想定はしてたけど神官長か。

 【鑑定】した時にみた名前とリーナさんが呼んだ名前も一致しているし、間違いないんだろう。

 地方都市にある神殿は基本的に巫女及び大神官が管理をしているが、王都にある神殿には大神官を束ねる長が居ると聞いていた。このお爺さんがその神官長という事か。

 因みに、この国の神殿総本山は俺の故郷エナンの街から見て王都と反対方向にあるオーシャの街であり、そこにはまた違う偉い人が居るらしい。エナンの街で巫女見習いをしていたレミが聖女候補として栄転? したのもオーシャの街だ。

「お久しぶりですなリーナ王女。その若さで抜きんでた実力、可能性としては考慮していましたが、貴女もと言う事ですかな?」

「ええ、その通りです。と言う事は、ゼムス神官長も・・・と言う事ですね?」

 こっちが素なのかも知れないけど、リーナさんの言葉遣いに違和感しかない!

「とりあえず、この場はただのリーナさんとゼムスさんと言う事で、砕けた言葉にしませんか?」

「ふむ、そうじゃの。リーナ王女が良いのなら、構わぬぞ?」

「私は構わないわ。冒険者活動で慣れてるからね」

 良かった、これで違和感から解放される!

「そう言えば、先ほど説明できませんでしたが、僕はリーナさんの協力者であって、7人の内の1人ではありません。おふたりと同じく、前世の記憶はありますけどね」

 しかし、毎回7人の内の1人って呼ぶのも面倒だな。後で2人と相談してカッコいい名前を付けよう。

「ふむ、お主もてっきりお仲間だと思っておったが・・・まあ確かにお主の場合は6年前から神託があったくらいイレギュラーな存在じゃからな」

「ええ、それも含めて後日説明させて頂きます。
 とりあえずどうします? 予定通りリーナさんの屋敷に行きますか?」

「ここからならワシの屋敷の方が近いぞ?
 それに王女に与えられた屋敷に得体の知れぬ男を連れ込むのは何かとマズイじゃろう」

 確かに、リーナさんの屋敷と言っても、国か王様に用意された屋敷なんだよね。そうするとどこに監視の目があるかも分からないし、ゼムスさんのところの方が良いのか?

「まだゼムスさんの事を100%信用できている訳ではありませんが、状況的にはゼムスさんの屋敷の方が良い気がしますね」

「そうね。私もそれで良いわ」

 その答えを聞き、ゼムスさんの案内で夜道を進む。そして20分程歩いたところで大きな屋敷に到着した。

 先ほどのカメル伯爵の屋敷は別宅という事もあり、王都の中心から少し外れた場所にあったが、ゼムスさんの屋敷は王都の中央に近い場所に建っていた。

 正門から入り、10m以上距離がある正面玄関に向かって歩く。

「ここがワシの屋敷じゃ。当然、神殿関係者しか居らぬから鈴木氏を攫って来た事が軍部に漏れることもないじゃろう。
 そして、念には念を入れて一部の者だけで世話をするつもりじゃ。安心してくれ」

「はい、一応何かあった場合にすぐに駆け付けられるように緊急連絡の魔道具も作成するつもりです」

「ほう、リョーマは魔道具も作れるのかの? 本当に多芸じゃのう」

 本当はミルクとリーナさんみたいにパートナー従魔を用意して護衛を兼ねてもらうのが一番いいんだけど、どうやら従魔1人に対してパートナーは1人までしか設定できないみたいだ。

 とりあえず当面はミルクに護衛を頼むしかないかな? ミルク並みの従魔が何人か居たら話は早いんだけど、ミルクはイレギュラー中のイレギュラーだもんね。

「とりあえず今日のところは夜も更けている事じゃし、まずは休んで明日の朝に色々と話をしようかの? すぐに3人分の客間を用意させるからの」

 ゼムスさんはそう言って、玄関から中に入る。手招きをされたので、リーナさんと二人付いて行く。

 玄関に入ると俺たちはメイドさんに応接室に通された。結構遅い時間なのに、何か申し訳ないな。

 そしてゼムスさんは鈴木さんを匿う為の準備などがあるからと退席した。

「流れで泊っていく事になっちゃいましたけど、リーナさん大丈夫ですか?」

「んー。まあ元々私も寝泊まりしているのは学園の寮で1人部屋だし、屋敷の方は鈴木さんを連れて行ってから説明するつもりだったしね。そんなに問題ないわ」

 詳しく話を聞くと、一応王様から屋敷を1つ与えらえ、王城ではなくそちらがリーナさんの住まいとなっているようだが、今は学生の身で寮生活の為に屋敷は維持管理するだけのメイド数名と執事のみが暮らしているのだと言う。一応、冒険者として稼いだお金で自分で雇っているので信頼はできるそうだ。

 因みに、他の兄弟は王城に住んでいるらしい。よくは分からないけど妾の子って大変なんだな。

 うん、何となく鈴木さんこっちに連れてきて正解だった気がするよ。リーナさんの負荷を増やすのは良くない。

「ところで、リーナさんゼムスさんは信頼しても大丈夫なんでしょうか?」

 一応、周囲に『遮音』の魔法をかけてから聞いてみた。

「それ、ここまで来てから聞くの? もう少し早く聞くべきじゃない!?」

「いや、ゼムスさんに会った時のリーナさんの反応的に大丈夫かなーと思いまして」

 べ、別に俺も何も考えずにホイホイと付いてきた訳じゃないぞ!?

「まあ、悪い噂なんかも聞かないし、私の知る限りでは問題ないと思うわ。昼も話したけど王侯貴族なんかに比べたら圧倒的にマシね」

 問題はなさそうとの事だけど、それでも心配だからしばらくはミルクに護衛をお願いしないとな・・・。何て考えていたら、

〈リョーマ! リョーマ! こちらミルクなの。事件発生なの!〉

 ミルクから【念話】が届いた。
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