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第1章 地方都市ガメル(仮

第7話 魔法をためします

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 忠告をしたものの、帰ってくれる訳もなく。いや、分かってたけどね。

「いい加減、この土地を二束三文で売り払って出て行ったらどうだ?
 出て行くまで毎日俺たちはここにお邪魔するぜ」

「と、とりあえず、今日も痛い目に合ってもらうんだな」

 子デブはそう言うと俺に殴りかかってくる。怪我をしても直ぐに治るとしても、痛いのは嫌だ!

《森魔法・木の盾を発動しますか?》

 そう思っていると、知識の泉からそんな助言が来た。何だろう、木製の盾が出てきたりするのかな? とりあえず発動しよう!

《森魔法・木の盾を発動します。念のため強度はマックスに設定しました》

 気の利く知識の泉さんは強度マシマシにしてくれたようだ。魔力だけは潤沢にあるからね。

《強度はダイヤモンド程度です》

 あ、うん。トテモカタイネ。

 そして魔法を発動したら、俺の前に木のが現れる。

 そう思っている時期が俺にもありました。

 実際には魔力を消費した感覚と共に、目の前にが現れた。

「は?」

 思わずそんな声が漏れた。正確には森と言うか、木の集合体って感じなんだけど、とにかく木がいっぱいニョキニョキと生えてくる。これは木の盾じゃなくて木の壁だな。

 一瞬にして高さ5メートルくらいの木が10本くらい生えた。これ、消せるんだろうか。

 そんな俺の心配を他所に、子デブは勢いよく木にぶつかると、そのまま倒れた。木の強度はダイヤモンド程度なので、やっぱりとても硬かったみたいだ。木の隙間から見える子デブは鼻血を出しながら完全に伸びているようだ。

「な、何をしやがった! おい、ヤス大丈夫か!」

 木が邪魔であまりよく見えないが、その向こうから細い方が子デブに駆け寄っているようだ。子デブはヤスって名前だったんだね。要らない情報だ。

《安心して下さい。この木は魔力で作った物なので、直ぐに消す事もできます。消すまでは魔力を消費し続けますが、マスターの魔力なら消費する前に回復するので永久に維持も出来ます。消しますか?》

 あ、良かった。教会の前に急に森ができたら、サラさんに怒られるところだったよ。とりあえず消そうか。

《但し、木の盾を消す前にもう1つ森魔法を発動する事を推奨します》

 もう1つ? 何だろう。

《森魔法・木を隠すなら森の中です。簡単に言えば、分身体を作り出す魔法です》

 森魔法何でもアリだな。なんて言うか、あの神様がふざけて考えたとしか思えない。他の属性魔法とかはケイ少年の知識にある限り普通そうなのに。果たして、森魔法はアタリなのか、ある意味ハズレなのか。

《魔力を込めると込めただけ分身体を増やすことが出来ます。また本来は1体ずつ操作する必要が有りますので、動かすには熟練を要するのですが、私がサポートしますので10体くらいまでなら同時に本人同様に動かす事も可能です》

 知識の泉がチート過ぎて怖いよ。頼もしい限りだ。

「おらぁ! よくもヤスをやりやがったな!
 隠れてないで出て来やがれ! 八つ裂きにしてやる!」

 何か叫んでるし、とりあえず10体でよろしく。

《それでは森魔法・木を隠すなら森の中を発動します。それと同時に木の盾を解除します》

 また魔力を消費する感覚と共に、俺の周りに10人の俺が現れた。何これ、もう完全に見分けが付かないんだけど。自分でもどれが俺か分からなくなる錯覚に襲われる。

 そして目の前の森が消えて行く。良かった。ホントに消えたよ。

「やっと出て来やがったな! 来やがった・・・な? は? え?」

 倒れたヤスの隣でナイフを持った細い方が茫然としている。まあ、そうなるよね。少し見ない間に俺が11人になってるんだもん。

 因みに前方に6人、中列に4人配置して俺は1番後ろだ。何かすみません。

《分身体の強さは込める魔力によって異なります。今回はとりあえず、世界最高の戦士程度のステータスにしています》

 とりあえずで世界最高の戦士程度ですか・・・。それが10人・・・。

 細い人終了のお知らせ。
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