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第四十六話 初体験!

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 体がすごく重い。
 もう指一本動かすことができない。
 だけどそれはすごく心地のいい気だるさで、体中の細胞が沸き立っている。
 頭はもう真っ白でおかしくなっている。
 
「あっ、あっ……! き……もちいい!」

 訊かれもしないのにそんなセリフを繰り返している。
 初めての経験だ。
 今までのセックスはなんだったのかと根底から覆されてしまうくらい超絶気持ちいい。
 龍空の唇が、指がちょっと触れるだけで異常なくらいに反応してしまう。
 彼を受け入れた花壺はマグマが湧いてくるみたいに熱くなっている。
 とろとろとした蜜がたっぷりと溢れだしている。

「愛希の体、甘くなってる」

 腰をグラインドさせながら、龍空は熱っぽい目で私を見た。
 ちょっと動かされるだけでダメだ。
 敏感になった花壺から大量の蜜が噴きだす。
 チュッチュッという湿った音まで聞こえると、花壺は恥ずかしさに顔を隠すようにきゅうっと縮まった。

 長い前戯だった。
 首筋だけじゃなくて、あらゆるところを責められた。
 脇や腰。
 それにひざ裏。
 足の指まで一本一本舐められたときは「さすがにそれは!」と制したくらいだ。
 だけど龍空はやめてくれなかった。

『愛希の全部をオレにちょうだい』

 そう言って、彼は優しく丁寧に私を責め続けた。
 時間なんかはかってないけど、ものすごく時間をかけてくれたと思う。
 だってもう、私のほうががまんできなくなっちゃったくらいだったんだもの。
 恥ずかしながら初めて自分から懇願した。
 待ちきれないから。
 もうムリだから。
 入れてほしいって……

 あまりに恥ずかしくて小声で言ったのに、『聞こえない』ってじらされたときには泣きそうになった。
 ううん、泣いた。
 泣いて懇願した。
 ちゃんと聞こえるように。
 そのときの「了解」っていじわるく笑った龍空の顔はたぶん一生忘れられないと思う。

「ああっ、もう! もうダメ!」

 初めこそ恥ずかしくて大きな声をあげられなかったのに、今はもう恥ずかしさなんてどこかに吹き飛んでしまっている。
 もう何度この言葉を叫んだかわからない。
 叫ぶ――これも初体験。
 だって抗えないんだもん。
 花壺の奥深くを突き上げられるたびに心と体がわなないて、叫ばずにはいられなくなっている。

「がまんしなくていい」

 ――ああ、もう。それ言わないで!

 彼にそう言われちゃう度に気持ちよさが倍増する。
 ムリ。
 本当にムリ。
 がまんムリ。

「ダメダメダメ! イクッ!」

 これが絶頂の感覚なんだって人生初体験だ。
 体中の細胞がぶわっと一気に膨らんで、勢いよくはじけ飛ぶ感覚。
 星が生まれるときに起こる爆発はきっとこんな感覚に違いない。
 そう思えるくらいに私の体でいくつもの爆発が起きて連鎖している。

 ――もう本当に体に力入らない。

 たっぷり2時間かけて愛された私の体がしあわせに満たされていた。
 頭も体も使い切って脱力状態だ。
 心は飽和状態で、幸福感でパンパンになっている。
 こんなセックス、本当にしてくれる男が世界にいたんだと思うと同時に、これまでの自分の経験してきたことってなんだったんだろうという疑問が溢れかえっている。
 っていうか、たぶん世の男はアダルドビデオに毒されすぎだ。
 いや、男の妄想世界の間違いか。
 とにかく触ってればそのうち濡れてくるなんていう、女からしたらとんでもないような考え方が広まりすぎている。
 そうじゃない。
 実際は『愛情が伝わったかどうか』による。
 愛情が伝わるような触り方をされれば濡れる。
 受け入れる体制が整うなのに、勘違いした男が世の中に溢れすぎている。
 だから余計に龍空みたいな男はレアなんだ。
 とはいえ、初回だから丁寧にしたとか、私がセックス嫌いな人間ってわかってたから時間をかけたっていう可能性もなきにしもあらず――なんだけども。

「ねえ、愛希」

 ぼんやりとする私を抱きしめて、くっつきそうになっているまぶたにキスを落としながら龍空は尋ねた。

「セックス嫌いは治りそう?」

 答えなんか訊かなくてもわかってるくせに、あえて尋ねてくるところが憎らしい。

「そんなの……」

 手を伸ばして彼の頬に触れる。
 少しだけ身を起こして額をくっつけた。

「もう治ってる」

 龍空とだったら何度してもいい。
 ううん。
 何度もしたい。
 毎回こんな体験ができるなら、よろこんでセックスしたいと思う。
 できれば本当に『初回特典だった』というオチでないことを願うのみ。
 
「龍空、大好き……」

 ほほ笑む私はまた唇を奪われた。

「んっ! ちょっ……龍空!」

 なになになに!
 何度もしたいと思ったけど。
 さっき終わったばっかじゃない!

「ダメだ、オレ。我慢しすぎた。とまんない!」
「え!? ちょっ……本気!?」

 どこにそんな力が残ってるのかと思うくらい勢いよく龍空は身を起こした。

「ごめん。今日は愛希をゆっくり寝かせてあげられそうにないや」

 そう言って私を見つめ返しながら、彼は意地の悪い笑みを浮かべたのだった。


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