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piece5 がんばろうよ

仲直りしてくれる?

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「い、いやいや、そんなことないって!」
彩奈が慌てて首と手を振り、全身で困惑と否定を表現する。

「た、拓真くん。私のこと庇ってくれるのは、ありがたいんだけどさ。シバさんが落ち込んじゃうから」
「ちょっと俺、泣きそうです……」
剛士がボソリと呟き、彩奈は目を剥いた。
「ええ!? ちょっと待って!」
「はは、冗談だよ」

剛士は頬杖を外し、ゆっくりと顔を上げた。
「……ごめんな、彩奈」

真っ直ぐに彩奈の目を見つめ、剛士は言った。
「元カノのことは、俺が、ちゃんと彩奈に話してなかったからなのに。俺、酷いこと言った。本当にごめん」

「……いや、」
彩奈は悲しそうに、赤メガネの奥の目を曇らせる。
「それは……私が踏み込んでいいことじゃ、なかったかも知れないし……」

剛士は首を横に振ってみせ、真摯に語りかける。
「俺、彩奈に隠し事するつもりはない。話せるよ、何でも」
「……シバさん」

「悠里の友だちだからじゃない。俺にとっても、彩奈は、大事な友だちだから」
そう言って、剛士は立ち上がり、彩奈の傍に歩いていく。
彩奈は立ち尽くしたまま、近づいてくる剛士を見上げた。


「だから、彩奈。俺とも、仲直りしてくれる? 」
剛士が静かに微笑み、そっと彩奈に手を伸ばす。
「これからもさ。俺が、不甲斐ないことしてたら……叱ってくれよ」


彩奈が、泣き出しそうに顔を歪める。
しかし彼女は、涙をグッと堪えて剛士の手を取り、握手を交わした。
彩奈は懸命に、笑顔を作る。

「……ははっ。シバさん、悠里と同じこと言ってる」
「ん?」
剛士が切れ長の瞳を丸くすると、彩奈は悠里と彼を見比べ、また笑ってみせた。

「前に、私が悠里にお節介で説教したときにさ。悠里が、同じように言ったんだよ」
「はは、そうなのか?」
剛士も優しい顔で微笑んだ。

「そうなんです。私、2人のお節介な説教ババアになるなんて、イヤですよ?」
冗談めかして、彩奈が膨れっ面をしてみせる。

剛士が吹き出す。
「お節介じゃねえよ。な、悠里?」
「うん!」
2人も無事に仲直りしてくれて、ようやく悠里の顔にも、柔らかな微笑みが戻った。

悠里と剛士が笑い合ったことで、4人の心を絡めとっていた緊張の糸も、ふっと解けた。


彩奈が、いつも通りに近い笑みを零し、悠里たちを見つめる。
「2人って、ちょっと似てますよね」
「ん?」
剛士と悠里は、互いを見つめ合い、微苦笑を浮かべた。

「まあ……わかるかも。あれだろ? 自分の中で、溜め込むとこだろ?」
「あっはは! わかってるじゃないですか!」
彩奈が豪快に笑い出した。

「そうですよ! 2人がもう少し、困ってることを共有してくれたら、私たちも苦労しないのに。ね、拓真くん?」
「そう、その通り」

拓真が、ニコッといつもの優しい笑みで、頷いた。
「これに懲りたら2人とも、自分1人で背負い込まずにさ。できるだけ、みんなで話し合お?」
「はい」
剛士と悠里は、親友たちの笑顔を見つめ、素直に応えた。

拓真が笑いながら、皆にテーブルとベンチを示した。
「さあ、みんな席に着いて。本題に、入ろっか」

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