#秒恋5 恋人同士まで、秒読みの、筈だった

piece3 初めまして！

父の人柄

「……すごいなあ、悠人のリアクション」
可笑しさと、お客への不行儀な態度への申し訳なさが入り混じり、父は微苦笑を浮かべた。

「ね、」
悠里も苦笑し、取りなすように言った。
「柴崎さん、バスケ部のキャプテンで。悠人にとって、憧れの人なんだ」
「なるほど！ そうだったんだね」
父が微笑んで剛士を見つめる。

「道理で、しっかりしているわけだ。明るくて礼儀正しくて、話していて気持ちがいいよ」

剛士は微笑み、首を振った。
「いえ、お父様の話が面白くて、僕たちの方こそ、楽しく聞かせていただいてます」
拓真と顔を見合わせ、剛士は頷く。

その言葉に、父は嬉しそうにガッツポーズをする。
「聞いてくれた？悠里。お父さん、話が面白いって！」

「ふふっ」
本気で喜んでいる様子の父に、悠里は笑ってしまう。
彩奈も笑いながら同調する。
「やったね、パパさん！」
「やったよ、彩奈ちゃん！」

ハイタッチでもしそうな２人の勢いに、皆は笑い出した。


「パパさんのお話、ホントに面白いですよ！ ジョークが効いてるけど、人をバカにするような毒は一切無くて。そういうところが、パパさんのお人柄って感じがします！」

彩奈にも褒められ、父は破顔した。
悠里は微笑ましくなってしまう。

「いやいや、みんなが楽しく聞いてくれるから、僕も楽しく話すことができたんだよ」
父の優しい目が、悠里を見つめる。
「本当に、悠里のお友だちは、いい子たちだね」
「ふふっ。そうでしょ？」
悠里も、照れ混じりに微笑んだ。


弟がリビングに戻って来た。
紅茶を手に、母が笑顔で手招きする。
悠人は主に剛士に向かって、ペコリと頭を下げると、いそいそと悠里の向かい側の席についた。
テーブルの短辺で、剛士に１番近い席である。
悠里は、近くにいる彩奈と顔を見合わせて笑った。


それからまた暫くは、いろいろな話題に花が咲いた。
父と母は興味深そうに、剛士のバスケ部や、拓真のライトミュージック部、そして彩奈の写真部について質問をした。

熱心に話を聞いて、３人の活動について褒めてくれる。
自慢の友だちを両親に紹介することができて、本当に幸せだった。