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piece3 初めまして!

リビングで楽しいお喋り

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悠里たちがリビングに足を踏み入れると、既に和やかな空気が溢れていた。
「みんな、お待たせ!」
その空気に乗るようにして、悠里は明るい声で呼びかける。

父と楽しげに話していた剛士と拓真が、笑顔のままに悠里を振り返った。
2人の穏やかな表情に、むしろ悠里が助けられるような心地がする。


剛士・拓真・彩奈の順に並んで座っており、その向かいに両親が座っている。
悠里は、皆と距離が近くなるように、彩奈に近い位置のテーブルの短辺側に腰掛ける。

父が微笑んで、剛士と拓真を見つめた。
「勇誠学園の生徒さんは、初めて訪れる家には制服で行く、という校則があるのは昔から有名だけど、今でもそうなの?」

剛士は、照れ笑いのように、柔らかく口元をほころばせる。
「実は僕たちも、今日が初めてでした。緊張しました」
彼の率直な言葉に、父も母も明るい声で笑った。


剛士も拓真も、とても明るくハキハキと話してくれるので、リビングは笑いが絶えなかった。
悠里や彩奈が気を揉む必要もなく、楽しい時間が過ぎてゆく。

父も楽しそうに、剛士たちを相手に、仕事の零れ話などを披露している。
2人が興味深く耳を傾けてくれるので、どんどん話に花が咲いていた。


「そろそろ、いただいたお土産をお出ししようかしら」
母は、皆の顔を見渡して尋ねる。
「いただいたルフナ紅茶は、ミルクティーがお薦めなんだけど、皆さん、ミルクティーはお好きかしら?」

「わあ、悠里ママがオススメのミルクティー、飲みたいなあ!」
彩奈が両手をあげて答えると、皆も一様に賛成した。
母は嬉しそうに大きく頷くと、席を立つ。

「手伝う?」
腰を上げかけた悠里を、母はにっこりとしながら止めた。
「大丈夫よ。悠里はお喋りしてて?」
そうして母は、軽い足取りでキッチンに消えていった。


父の話題は、主に海外出張で起こった珍事件だ。
文化の違いから来る笑い話や、ほっこりする可愛らしい勘違いなど。
話し上手な父は、軽快な語り口で場を賑わせた。

剛士が、微笑みながら問いかける。
「本当に頻繁に、海外出張をされているんですね」

父が、うんうんと頷き答える。
「そうだね。3か月に一度は、何処かしらに旅立ってるかも知れない。それこそ、夫婦揃って3か月くらい帰れないときもあるしね」


そう。去年の秋――剛士と出会ったあの頃も、両親が長期の海外出張中だった。
悠里は、懐かしく思い返す。
同じことを考えたのか、剛士の瞳が真っ直ぐに悠里に注がれた。
ほとんど無意識に、悠里は彼に向かって微笑みかける。
剛士の顔にも、優しい微笑が浮かんだ。

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