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piece2 紹介してくれないか?

全部、好き

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悠里は熱くなる頬を持て余しながら、首を左右に振った。
「そ、そんな。わかんない……」

剛士との出会いから、今日に至るまでの触れ合い。
さまざまなシーンが、パラパラと脳裏を軽やかに走っていく。
そのひとつひとつが、悠里の胸を甘く震わせた。

「私……ゴウさんの目が好き。声が好き。大きな手が好き……」
悠里は、頭に浮かんだ気持ちを、そのまま言葉にしていた。

「優しいところも、がんばり屋さんなところも、バスケに……バスケ部に、いつも一生懸命なところも。全部、全部好き……」


ぷーっと彩奈が豪快に吹き出し、悠里の頭を撫でた。
「あっはっは! いつからって聞いたのに、そんな盛大に、どこが好きかを答えてくれるなんて!」
「……えっ?」

自分は、何を口走っているのだろう。
悠里は林檎のように、真っ赤に色づいてしまった。
「ホント、悠里ってば可愛いなあ! ねえ、シバさん?」

彩奈は、グシャグシャと悠里の髪を掻き乱し、剛士に同意を求める。
さすがの彼も照れたのか、切れ長の瞳を伏せ、ぼそりと呟いた。

「……可愛すぎだろ」
「ゴ、ゴウさん……」

拓真が楽しい笑い声を立て、剛士の肩を叩く。
「良かったな、ゴウ? 全部、全部好きだって」
「う、うっせ」
「あはは、ゴウがそんな照れるの、珍しいよね」

いいものを見た、と言わんばかりに、拓真がニコニコと微笑んだ。
「で? ゴウは、悠里ちゃんのどこが好き?」
「うっせ。全部だよ」
「全部ー!!」
拓真が、彩奈が声を揃えて、ハイタッチをした。


「いやあ、良かった良かった」
ひとしきり囃し立てた後、拓真が微笑んだ。

「今日、みんなで笑えて、良かったよ」
彼の優しい目が、彩奈、そして悠里を交互に見つめる。
大丈夫だよ、と励ますような、暖かい笑顔だった。

拓真が、片目を瞑ってみせる。
「じゃあ土曜日! よろしくね! 時間とか詳細決まったら、また教えてね?」
「は、はい」
悠里は、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね!」

拓真は大きく頷くと、切り替えるように、パンッと手を打つ。
「さあ、遅くなっちゃったね。帰ろ!」
4人は鞄を持ち、席を立った。

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