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piece5 2人の恋、4人の友情の始まりは
努力は認められている
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『悠里ちゃんは、柴崎を庇いやがった』
『お前のせいだ!お前が悠里ちゃんに近づかなければ……』
目つきの悪い男の吐いた言葉が、剛士の胸を駆け巡っていた。
自分への恨みによって、男たちは悠里へのストーカー行為をエスカレートさせた。
そして悠里は彼らの激しい逆恨みを買い、傷つけられたのだと思うと、彼女に関わった自分を責める気持ちすら湧いた。
彼の心情を察したのだろう、谷が口を開いた。
「柴崎。気にするなよ?」
「……え?」
「お前の行動は、正しかった。お前のおかげで、彼女を救うことができたんだ」
何と言ってよいかわからず、剛士は切れ長の目を伏せる。
「それに、」
谷は続ける。
「お前が評価されているのは、お前がいつも、ひたむきに頑張っているからだ。あいつらの逆恨みを気に病む必要はない」
胸を張れ、と谷が剛士の背をバシンと叩いた。
谷の暖かさに剛士は少し、救われる気がする。
『柴崎は、努力しているぞ』
目つきの悪い男が剛士に恨みを叫んだときも、谷はしっかりと、そう言ってくれた。
照れくさくなりながらも、剛士はそっと谷に頭を下げる。
谷はニッと笑い、この話は終わりだとばかりに、がっしりとした手で剛士の肩を叩いた。
そして、がらりと話題を変える。
「この後、あいつらの父兄にお越しいただき、今回の件の処罰が校長から告げられることになってる」
「……あいつらの処罰、どうなるんですか?」
「さあな」
谷は首を傾げた。
「校長のお沙汰次第だ」
「……警察には?」
剛士の思いを汲み取り、谷は頷く。
「お前がそう考えるのは、当然だな。しかし、お前のおかげで彼女に物理的被害は出なかった。警察に行ったところで、厳重注意が関の山だろう。……それに」
谷は、すまなそうに剛士を見た。
「彼女が了承してくれるならば、なるべく内部で処理したい。それが、正直なところだ」
剛士は眉根を寄せ、唇を引き結んだ。
「悠里は、あんな酷い目に遭ったのに……」
「……そうだな」
谷は静かに頷いた。
「しかし今回のことは、彼女の身体に傷がつかなかったことを喜ぼう」
谷の言う意味は、わかる。
しかし剛士は、悠里の心は傷ついたのに、と思わずにはいられなかった。
「……すまんな」
慰めるような声音で、谷は呟いた。
そして、校長からの言伝を述べる。
「柴崎。彼女と連絡を取れるか? この件で校長が彼女にお詫びをしたいとのことだ。可能であれば今日の放課後、彼女に時間を取ってもらえるか、確認してほしい」
「……わかりました」
谷にこれ以上言っても仕方がない。
谷も、わかってはくれているのだ。
やり切れない気持ちを抱えながらも、剛士は小さく首を縦に振った。
『お前のせいだ!お前が悠里ちゃんに近づかなければ……』
目つきの悪い男の吐いた言葉が、剛士の胸を駆け巡っていた。
自分への恨みによって、男たちは悠里へのストーカー行為をエスカレートさせた。
そして悠里は彼らの激しい逆恨みを買い、傷つけられたのだと思うと、彼女に関わった自分を責める気持ちすら湧いた。
彼の心情を察したのだろう、谷が口を開いた。
「柴崎。気にするなよ?」
「……え?」
「お前の行動は、正しかった。お前のおかげで、彼女を救うことができたんだ」
何と言ってよいかわからず、剛士は切れ長の目を伏せる。
「それに、」
谷は続ける。
「お前が評価されているのは、お前がいつも、ひたむきに頑張っているからだ。あいつらの逆恨みを気に病む必要はない」
胸を張れ、と谷が剛士の背をバシンと叩いた。
谷の暖かさに剛士は少し、救われる気がする。
『柴崎は、努力しているぞ』
目つきの悪い男が剛士に恨みを叫んだときも、谷はしっかりと、そう言ってくれた。
照れくさくなりながらも、剛士はそっと谷に頭を下げる。
谷はニッと笑い、この話は終わりだとばかりに、がっしりとした手で剛士の肩を叩いた。
そして、がらりと話題を変える。
「この後、あいつらの父兄にお越しいただき、今回の件の処罰が校長から告げられることになってる」
「……あいつらの処罰、どうなるんですか?」
「さあな」
谷は首を傾げた。
「校長のお沙汰次第だ」
「……警察には?」
剛士の思いを汲み取り、谷は頷く。
「お前がそう考えるのは、当然だな。しかし、お前のおかげで彼女に物理的被害は出なかった。警察に行ったところで、厳重注意が関の山だろう。……それに」
谷は、すまなそうに剛士を見た。
「彼女が了承してくれるならば、なるべく内部で処理したい。それが、正直なところだ」
剛士は眉根を寄せ、唇を引き結んだ。
「悠里は、あんな酷い目に遭ったのに……」
「……そうだな」
谷は静かに頷いた。
「しかし今回のことは、彼女の身体に傷がつかなかったことを喜ぼう」
谷の言う意味は、わかる。
しかし剛士は、悠里の心は傷ついたのに、と思わずにはいられなかった。
「……すまんな」
慰めるような声音で、谷は呟いた。
そして、校長からの言伝を述べる。
「柴崎。彼女と連絡を取れるか? この件で校長が彼女にお詫びをしたいとのことだ。可能であれば今日の放課後、彼女に時間を取ってもらえるか、確認してほしい」
「……わかりました」
谷にこれ以上言っても仕方がない。
谷も、わかってはくれているのだ。
やり切れない気持ちを抱えながらも、剛士は小さく首を縦に振った。
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