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piece2 剛士の決意

初めての2人登校

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「おはよー悠里!…… へ? 柴崎、さん?」
翌朝、彩奈は聖マリアンヌ女学院の手前にある交差点で、素っ頓狂な声を上げる。

「彩奈!おはよ……」
少し恥ずかしそうに、悠里は笑顔を見せた。
「よお」
対して剛士は、涼しい顔で応える。
そして、悠里に言った。

「じゃあ、俺はここで。また帰りは連絡する」
「はい! ありがとうございます」
悠里は嬉しそうに微笑んだ。

剛士も小さな微笑で応え、勇誠学園に向かって歩いていく。
その様子を、彩奈は絶句して見つめた。  


「もー、もーびっくりしたわ!」
教室に入るなり、彩奈は悠里に詰め寄る。
「さあ悠里。詳しく説明してもらうからね!」

「え、えっとね……」
彩奈の勢いに後ずさりしながら、悠里は答える。

「実は昨日、間違ってイタズラ電話を取っちゃったの。それで、外に出たんだけど」  
なるべく友人に心配をかけないように、努めて落ち着いた声を装う。

「駅で偶然、柴崎さんに会って。相談したら……」
説明しながら、だんだん恥ずかしくなり、声が小さくなった。
「学校の行き帰り、一緒にしてくれるって……」

彩奈は感嘆の吐息を漏らし微笑みかけたが、はたと真顔になった。
「……悠里。昨日、何かあったね?」

ドキリとして、悠里は彼女を見る。  
「だって、これまで毎日かかってるイタ電をとっただけで、今さら外に飛び出したりする? それに、」

赤メガネ越しの理知的な瞳が、探るように悠里を捕えた。
「柴崎さんに相談した内容って、なあに? イタ電だけで、学校の送り迎えするなんて話には、ならないと思うんだけど」

悠里は頷き、苦笑を浮かべた。
彩奈の鋭さには、かなわない。
「……うん。ごめん」


悠里は、正直にすべての出来事を告白した。
数日前に届いた封筒と、その中身のこと。
警察に相談しても取り合ってもらえなかったこと。
そして、昨夜のイタズラ電話。複数の男の声が聞こえたこと。
笑いながら、自分の名前を呼んでいたこと。

声が震えそうになるのを必死に堪え、悠里は小さな声で言った。
「それで、気が動転しちゃって……外に出たの」

「……そうだったんだ」
彩奈は、悲しそうに眉をしかめて、悠里を見つめる。
「怖かったね。悠里……」
優しい声で彩奈は呟き、そっと悠里の髪に触れた。

親友の暖かさに、堪えていた感情が飛び出す。
それは涙に代わって、彼女の瞳から、ぼろりと零れ落ちた。
「もう。なんですぐ言わないかなあ」
くしゃくしゃと悠里の頭を撫でながら、彩奈は笑った。

「あんたのことだから、私に心配かけないようにって、我慢してたんでしょ。ほんと水臭いんだから」
泣き笑いしながら悠里は、乱れた髪のまま頷いた。
「ごめん……ありがと」


彩奈が、ニッと笑う。
「……にしても、私にはこんな遠慮するくせに、柴崎さんには素直に話したんだね?」

悠里は慌てて弁解する。
「ちが、昨日は動転してて……」
「2人はもう、両想いだね!」
悠里の言葉を素通りし、彩奈は大声で言った。
「いいなー! あんなイケメンボディーガード、兼カレシかあ。私も欲しい!」

衝撃のあまり、悠里の涙も乾く。
「そ、そんなんじゃないよ! 私を心配してくれてるからだよ。柴崎さん、優しいから……」
「優しいだけで、そこまでしないって普通!」

真っ赤な顔で口をつぐんだ悠里を見て、彩奈が微笑む。  
「いい人だね! 柴崎さん」
赤メガネの奥にある瞳が、柔らかく輝いた。

「やっぱり、心配だったもん。私たち女だけじゃさ。柴崎さんがナイト役を買って出てくれて、正直、私も安心してる。イタ電の犯人もさ、柴崎さんが一緒にいるのを見たら、諦めてくれるかもよ?」
「……だと、いいな」
悠里は頬を染めたまま、頷いた。
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