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piece5 楽しい観覧車
2人の小さな空間
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窓から差し込む日差しが、とても暖かかった。
何を話すことがなくても、剛士をすぐ傍に感じる。
いつもなら、こんなことはできないはずなのに。
悠里は心のままに、彼の逞しい肩に頭を預ける。
剛士も何も言わず、ただ優しく、髪を撫でてくれる。
――気持ちいいな……
穏やかな幸せに包まれて。
優しい温もりに誘われて。
悠里はそっと、目を閉じた。
「……悠里」
優しい声とともに、ポンポンと頭を撫でられる。
「ん……」
ゆっくりと、悠里は目を開けた。
一瞬、自分の状況がわからなかった。
繋がれた暖かい手。もたれかかった優しい腕。
「……ん?」
「大丈夫か? もう少しで着くぞ」
「えっ?」
慌てて身体を起こし、悠里は傍らの剛士を見つめる。
「……私……寝てた?」
ふっと剛士が吹き出す。
「うん」
「ええっ」
一気に耳まで赤くなってしまう。
「ご、ごめんなさい!」
あまりの衝撃にあたふたする悠里を見て、剛士が優しく笑い彼女の頭を撫でる。
「疲れてたんだろ?別にいいよ」
悠里は首を横に振り、俯いた。
「ごめんなさい……」
「なんで? 俺、嬉しかったよ?」
「え……?」
おそるおそる彼の顔を窺うと、剛士の切れ長の瞳が、柔らかく悠里を見つめていた。
「悠里が、俺に甘えてくれたから」
「ゴウさん……」
長い指が、嬉しそうに悠里の髪に触れる。
「可愛かった」
「ゴ、ゴウさん……」
今度は別の理由で、悠里の頬が真っ赤に色づく。
「……ほら。もう少しで、着いちゃうからさ、」
剛士の逞しい腕が、距離を取って座り直していた悠里を、そっと引き寄せた。
「もう少しだけ、傍にいよう?」
「……うん」
彼の暖かさを間近に感じながら、悠里はこの優しい時間を胸に刻みつけた。
「悠里ーおっはよー!」
地上に辿り着くと、彩奈が顔いっぱいに笑いを浮かべて悠里を抱きしめた。
「お、おはよ……?」
どうして、眠っていたことを知られているのだろう。
戸惑う悠里の顔を見、拓真が微笑んだ。
「2周目の観覧車は、どうだった?」
「……2周目!?」
悠里は大きな目を更に見開き、3人の顔を見回す。
「2周目、だったの……?」
「だって悠里ちゃん、めちゃめちゃ気持ち良さそうに寝てんだもん」
拓真が笑いながら応えた。
「起こすの可哀想だったし、普通に降り損なったしで、スタッフさんが『じゃあ2周目行ってらっしゃい』って、言ってくれたんだ」
顔から火が出るとは、このことだろう。
悠里は両手で顔を隠しながら、力なく崩れ落ちる。
「もう、悠里ったらー!超可愛かったよ~?」
彩奈の笑い声とともに、遠慮なくバシバシと叩かれる背中。
「うぅ……」
一体自分は、何分寝ていたのだろう。
2周目であることも言わず、ただ微笑んでくれた、優しい剛士。
「ごめんなさい……」
改めて悠里は彼を見上げ、心からの謝罪を繰り返す。
剛士が笑いながら、悠里の隣にしゃがんだ。
「ちょっとは、スッキリしたか?」
言われてみれば、頭の芯にこびりついていた眠気が、かなり引いていた。
「……はい。スッキリしました……」
「良かったな」
優しい笑顔とともに、クシャクシャと髪を撫でられる。
彩奈と拓真が笑って、口々に励ましと冷やかしを投げかけてくる。
3人の明るい笑顔を見ているうちに、悠里も笑ってしまった。
何を話すことがなくても、剛士をすぐ傍に感じる。
いつもなら、こんなことはできないはずなのに。
悠里は心のままに、彼の逞しい肩に頭を預ける。
剛士も何も言わず、ただ優しく、髪を撫でてくれる。
――気持ちいいな……
穏やかな幸せに包まれて。
優しい温もりに誘われて。
悠里はそっと、目を閉じた。
「……悠里」
優しい声とともに、ポンポンと頭を撫でられる。
「ん……」
ゆっくりと、悠里は目を開けた。
一瞬、自分の状況がわからなかった。
繋がれた暖かい手。もたれかかった優しい腕。
「……ん?」
「大丈夫か? もう少しで着くぞ」
「えっ?」
慌てて身体を起こし、悠里は傍らの剛士を見つめる。
「……私……寝てた?」
ふっと剛士が吹き出す。
「うん」
「ええっ」
一気に耳まで赤くなってしまう。
「ご、ごめんなさい!」
あまりの衝撃にあたふたする悠里を見て、剛士が優しく笑い彼女の頭を撫でる。
「疲れてたんだろ?別にいいよ」
悠里は首を横に振り、俯いた。
「ごめんなさい……」
「なんで? 俺、嬉しかったよ?」
「え……?」
おそるおそる彼の顔を窺うと、剛士の切れ長の瞳が、柔らかく悠里を見つめていた。
「悠里が、俺に甘えてくれたから」
「ゴウさん……」
長い指が、嬉しそうに悠里の髪に触れる。
「可愛かった」
「ゴ、ゴウさん……」
今度は別の理由で、悠里の頬が真っ赤に色づく。
「……ほら。もう少しで、着いちゃうからさ、」
剛士の逞しい腕が、距離を取って座り直していた悠里を、そっと引き寄せた。
「もう少しだけ、傍にいよう?」
「……うん」
彼の暖かさを間近に感じながら、悠里はこの優しい時間を胸に刻みつけた。
「悠里ーおっはよー!」
地上に辿り着くと、彩奈が顔いっぱいに笑いを浮かべて悠里を抱きしめた。
「お、おはよ……?」
どうして、眠っていたことを知られているのだろう。
戸惑う悠里の顔を見、拓真が微笑んだ。
「2周目の観覧車は、どうだった?」
「……2周目!?」
悠里は大きな目を更に見開き、3人の顔を見回す。
「2周目、だったの……?」
「だって悠里ちゃん、めちゃめちゃ気持ち良さそうに寝てんだもん」
拓真が笑いながら応えた。
「起こすの可哀想だったし、普通に降り損なったしで、スタッフさんが『じゃあ2周目行ってらっしゃい』って、言ってくれたんだ」
顔から火が出るとは、このことだろう。
悠里は両手で顔を隠しながら、力なく崩れ落ちる。
「もう、悠里ったらー!超可愛かったよ~?」
彩奈の笑い声とともに、遠慮なくバシバシと叩かれる背中。
「うぅ……」
一体自分は、何分寝ていたのだろう。
2周目であることも言わず、ただ微笑んでくれた、優しい剛士。
「ごめんなさい……」
改めて悠里は彼を見上げ、心からの謝罪を繰り返す。
剛士が笑いながら、悠里の隣にしゃがんだ。
「ちょっとは、スッキリしたか?」
言われてみれば、頭の芯にこびりついていた眠気が、かなり引いていた。
「……はい。スッキリしました……」
「良かったな」
優しい笑顔とともに、クシャクシャと髪を撫でられる。
彩奈と拓真が笑って、口々に励ましと冷やかしを投げかけてくる。
3人の明るい笑顔を見ているうちに、悠里も笑ってしまった。
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