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piece3 パーティー前日

悠里ママと彩奈はお友だち

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「彩奈ちゃん、久しぶりね!」

土曜日。いよいよサプライズの前日だ。
クラッカーなどのパーティーグッズを買い込み、悠里宅へ訪れた彩奈。
悠里の母は、玄関まで出てきて迎えた。


ウェーブのかかったボブヘアに、悠里と似た大きな瞳。
母は娘の親友を見つめ、柔らかな微笑みを浮かべる。

「悠里ママ!お久しぶりです!!」
抱きつかんばかりの勢いで、彩奈も喜んでいる。
そんな2人の様子に、思わず悠里は笑ってしまった。


和気藹々とリビングに入ると、母が紅茶と手作りのベイクドチーズケーキを出してくれた。

「わあ!悠里ママのケーキ、久しぶりだあ」
「いただきます!」
彩奈と悠里は早速ケーキを頬張り、舌鼓を打つ。

娘たちの様子を、母はニコニコと見守る。
その優しい笑顔は、悠里の笑い方によく似ていた。


「いつも悠里と仲良くしてくれて、本当にありがとう」
母は彩奈に向かい、嬉しそうに言った。
「いえいえ、こちらこそ! 悠里には本当にお世話になって、楽しませてもらってます!」
「な、何それ」
笑顔の彩奈に、思わず悠里も笑いながら彼女の腕を叩いた。

「悠里も、いつも楽しそうに、彩奈ちゃんの話をしてくれるの」
コロコロと笑い、母は頷いた。

「私や主人が家を空けることが多くて、悠里には苦労させてるから……本当に彩奈ちゃんには、感謝してるわ」
「そんなそんな」
彩奈は明るい笑顔を浮かべる。

「悠里、本当にいい子だから、クラスでも人気で、皆んなに可愛がられてますよ! そ、れ、に!悠里には、めちゃめちゃカッコよ……」
「彩奈ー!」
すんでのところで、悠里は彩奈の口を塞ぐ。

さすがに、母親の前で剛士のことを言われるのは恥ずかしかった。
悠里は強引に話題を逸らす。

「お母さん! ところで、時間大丈夫?」
「あら、もうこんな時間?」
母が腕時計を確認し、目を丸くする。
驚いたときに、パチリと瞬く大きな目も、悠里にそっくりだ。

「あれ? 悠里ママ、もしかしてお仕事ですか?」
彩奈が2人を見比べながら、問いかける。
母が、すまなそうに笑った。

「ええ。日曜日に地方で大事な催し物があってね。私たちは、準備のために前乗りすることになっているの」
「わあ、相変わらずお忙しいんですね」
「本当は、私も朝から行くはずだったんだけどね、」
悪戯っぽく母は笑う。
「どうしても、今日は彩奈ちゃんに会いたくて、主人だけ先に行かせちゃった」

彩奈が、嬉しそうに歓声を上げた。
「私も、久しぶりに悠里ママに会えて嬉しいです!」
まるで友だち同士のような2人に、また悠里は笑いを誘われてしまう。


母は、もう少しお喋りしたかったわと言いながらも、てきぱきと出かける準備を整える。
ピシッとスーツを着こなした母は、娘の悠里から見ても、カッコよく、美しい女性だった。

「明日は、お友だちのお誕生日パーティーなのよね?」
にっこりと母は微笑んだ。
「楽しんでね!」
「はい! 素敵なお家、お借りします!」

彩奈が笑顔でお辞儀をするのを見て、母が笑いながら応える。
「ホームパーティーがしやすいように設計したお家だから、嬉しいわ。たくさん使ってちょうだいね」
「ありがとうございます!」
彩奈が楽しげに赤メガネの奥の目を輝かせた。


母は彩奈に微笑みかけると、悠里に向き直り、悪戯っぽく首を傾げた。
「ボーイフレンド?」

たちまち悠里の顔が林檎のように色づいてしまう。
母が、そして彩奈が笑い出した。
「悠里ママ、鋭い!」
彩奈の声に母は微笑んだ。

「この1週間、遅い時間までクッキーの練習をしていたり、ずいぶん張り切っていたんだもの」
「やだぁ、悠里ったら! そんなに!?」
彩奈が、ケラケラと笑う。
「お、お母さん……」

「ねえ、悠里?」
母が柔らかく悠里の頭を撫でる。
「今度ぜひ、お母さんにも紹介してね」
お父さんは泣いちゃうかも知れないけど、と母は笑う。
何かというと、戯けたように泣きマネをする父を思い出し、悠里も笑ってしまった。


母は、悠里と彩奈に明るい笑顔を向けると、手を振って出かけていった。
「じゃあ、準備がんばってね。パーティー、うまくいきますように!」

「はーい!悠里ママ、行ってらっしゃい!パパさんにも、よろしくお伝えください!」
「ありがと!お母さん、行ってらっしゃい」

娘たち2人は、玄関まで追いかけ、優しい母を見送った。
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