たっくんのひみつ

緒方宗谷

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たっくんのひみつ

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 たっくんは,おばあちゃんがだーいすき。
 いつもいっしょにあそんでいます。

 おばあちゃんは、からだのみぎがわがうごきません。

 ですから、あるくだけでもひとくろう。

 あたまのなかもはんぶんしかないので、
 ものをおぼえるのがにがてですし、
 ことばもじょうずにしゃべれません。

 そとでおしごとをしているむすめふうふのために、おせんたくをして、
 ろくさいになったまごのたっくんをがっこうにいかせて、
 それからおそうじをします。

 ですから、とってもたいへん。
 すぐねむくなってしまうので、
 ふだんはおうちにいて、
 よくおひるねをしています。

 でも、たっくんといるときはちがいます。
 たくさんあそんでくれて、
 やさしくしてくれるのです。

 ときどきたっくんは、だだをこねてがっこうにいきません。

 おとうさんもおかあさんも、おこりませんし、おばちゃんもしかりません。

 がっこうをおやすみしたひ、たっくんは、かならずおばあちゃんとおでかけします。

 ふたえきむこうのスーパーマーケット。
 だいすきなモモタのゲームでいっかいあそんでから、
 おおきなこうえんにいくのが、いつものコース。

 おばあちゃんは、みぎあしをひきずっているので、
 あるくのがとてもおそいです。

 ですから、たっくんは、ちょっとすすんではまって、
 またすすんでは、おばあちゃんをまつのでした。

 そんなじかんもたのしいじかん。
 うえこみにはムシがいますし、
 おもしろいかたちのはっぱがいっぱいだから。

 こうえんは、こどもたちのらくえんです。
 たくさんのゆうぐが、ドーナツのように、ぐるりとならんでいるのです。

 たっくんは、たくさんあるゆうぐをひとつひとつあそんでいって、
 ごしゅうもろくしゅうもまわります。

 ひとつのゆうぐであそぶたびに、
 たっくんはおばあちゃんにてをふりました。
 おばあちゃんもたのしげです。

 おやつのじかんがすぎて、おなかがすくと、
 ふたりでおうちにかえります。

 おばあちゃんは、やっぱりあるくのがおそいので、
 たっくんは、ときどきたちどまってふりかえります。

 めがあうと、おばあちゃんは、いつもニッコリ。

 たっくんは、おばあちゃんをひとりであるかせるのがかわいそうだとおもって、
 てをつなぎにみぎによりました。

 すると、おばあちゃんがいいました。

 「ねえ、たっくん、ひだりがわをあるいてちょうだいな」

 なぜかな? と、おもったたっくんはききました。

 すると、おばあちゃんは、やさしくおしえてくれました。

 「だって、みぎにいると、かわいいたっくんがみえないんだもの」

 たっくんはうれしくなって、ひだりにたちました。

 そのとき、たっくんは、おばあちゃんのみぎめになりたい、とおもいました。

 たっくんがそういったら、おばあちゃんはよろこんで、

 「おばあちゃんはとしだし、からだがうごかないから、とおくにはいけないけれど、
 たっくんがおおきくなったら、いろんなところにりょこうにいって、
 みてきたけしきをたくさんおしえてね」

 と、いいました。

 そのとき、たっくんには、ひとつのひみつができました。

 いつかおばあちゃんをつきにつれていってあげよう、とおもったのです。

 ですが、たっくんはいいませんでした。

 おばあちゃんをびっくりさせたいので、
 いまはないしょにしたのです。

 たっくんは、あおいそらにうっすらとみえるつきをみあげて、
 ニッコリほほえみながら、こころのなかでいいました。

 みかづきじゃないんだよ、まんまるまんげつにいくんだよ。

 おしまい
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