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第八十七話 言葉っていいように利用するためにあるんだよな
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第四幕 もののふを制し、公家をも超えた伝説の男 東洋の奇跡 活人剣 ――て長げーな
「太古の昔、ある武士(もののふ)が昇殿の際に持ち込んだとされる刀だ。斬らずして相手を斬り伏せる霊刀。とある下級武士がこれを手に入れて、武士の長へと上り詰めた、という。我が国伝統の剣術の一つ、活人剣の更に元祖中の元祖の刀なのだ」
「ちょっと待て」と言って、あせあせ中段に構えた佐間之介、二、三回送り足の練習をして「よしっ」と発して、今度は本番、送り足で「めーん!」と叫ぶ。
「何?“めーん”って」とローゼは身構えるが、サムライブレードすごい放物線を描いて迫ってくる。しかも一回大きく振りかぶっているから、避けてください、と言っているようなもの。どんだけ素人? この剣捌き。ローゼは後ろにスロープパスして難なくかわす。
申し訳なさそうにローゼ、
「もしかして……なんちゃって侍ですか?」
「馬鹿者! これは剣道と言って、ジパング剣術全ての基本を成すもの」
ジパング皇国と言えば、世界に名だたる陸軍大国。無敵の侍軍団の名は世界に轟いているほどだ。
「でも、ジパングが戦争したって話聞きませんよね」とエミリアがローゼに訊く。
「まあ、大海の真ん中に浮かぶ孤島の国って話だからね。でも、南の島々を支配する宗主国でもあるから一応帝国らしいけど、実際強いかどうかは分からないわね」
遠い昔にラルガルマンと海戦したくらいしか思い当たらない。
「バカにしおって」とプリプリ怒る佐間之介は、不器用なすり足で近寄ってくる。またまた「めーん!」と叫んだ。
「え?」と叫んで佐間之介を見るローゼ。気配が感じられなかった。突然発する覇気に動転した。
避ける動作を取れなかったローゼ、ぽかり、と頭を叩かれた。
「ローゼさん――やりぃ」とエミリアがはしゃぐ。
やりぃ、じゃねーよ。何喜んでんだよ。わたし死んだら小説おわっちゃうじゃんかよ。
「わたしが引き継ぎますから大丈夫です」エミリア反論。
身もふたもねー言い方だな。
突然「あー」とエミリアが叫んだ。指さす先を他の二人が見ると、なんと刀が折れている。
「ああっ、伝説の刀が」と叫ぶ佐間之介から引き継いで、エミリア「ローゼリッタを殺る前に‼」と続けた。
お前の殺意ほんとスゲーな。ついでっぽく殺す気満々。
「わたし(エミリア)が手を下したら、ローゼリッタファンを取り込めませんからね」
自分のファンは逃げないの前提かよ。
「逃げたら全員即死刑ですから」よそ風のように流れるエミリアの声。
ファンなんだと思ってんだよ。
「畜生」
最低だな、おい。ここまで来たら、もはや主人公サイドの人間じゃねーよ。
「ツンデレですよ」
“デレ”どこだよ。“ツン”も“ツン”どころじゃないよ。
やんややんや、と続ける二人。それを見ていた佐間之介。さすがに切れる堪忍袋。
「拙者をのけ者にして、なんと無礼な。折れた刀どうしてくれる」
いや、折ったのお前だよね。
「お主の頭が悪いのだ」
「ひどいこと言うけど、エミリアの暴言の後だからなんか可愛いよ」と言ったローゼが気がついた。見ると、その刀、竹包みに銀箔貼っただけの代物。竹みつってやつ。
「あんた、それ騙されているのでは?」とローゼが教える。
「いや、騙されてはおらぬ。宮中では帯刀は許されておらぬゆえ、竹でできた刀に銀箔を貼って持ち込んだのだ」
そういう歴史的逸話はそれはそれで面白いけど、武器としては無力なのでは?
「何を申すか。己を殺そうとする公家どもをこの刀で跪かせたのじゃ。刀の霊気によってな」
持ってたやつの覇気か、ただ単に本物と見間違えたのでは?
「現に、お主は我が前に跪いておるであろう」
頭かち割られて痛かったからだよ。何が活人剣だよ。思いっきり殺す気だっただろ?
「故に活きるのだ」
わけ分からん。
普通、人斬りに嫌気がさして人を活かすために剣を振るうことを決意するとか、国を治める方法は人を殺して言うことを聞かせるのではなく、人を活かして豊かにさせる、とか、その思想を言い表したのが“活人剣”だろ?
それを聞いてびっくりするエミリア。
「わ、ローゼさんからそんな哲学めいた言葉が出てくるなんて、頭打ったんですか?」
「うん、今打ったから――じゃないよ、わたしけっこう勉強してんのよ? 大学生のわりに――」
ローゼの言葉をそよ風程度に受け流すエミリアに、ローゼは諦めて言葉を止めて佐間之介に向き直る。
「なんかアホすぎて戦う気が失せちゃうわ」
「ほう、負けを認めると申すか。これこそ活人剣の極意である」
「いいわよ、なんかもうわたし、お家帰りたいわ」とあきれるローゼが負けを認めた。
「だが、我が宝刀を折った報いは受けてもらうぞ。死をもってな」
活人剣の神髄無視だな。
「太古の昔、ある武士(もののふ)が昇殿の際に持ち込んだとされる刀だ。斬らずして相手を斬り伏せる霊刀。とある下級武士がこれを手に入れて、武士の長へと上り詰めた、という。我が国伝統の剣術の一つ、活人剣の更に元祖中の元祖の刀なのだ」
「ちょっと待て」と言って、あせあせ中段に構えた佐間之介、二、三回送り足の練習をして「よしっ」と発して、今度は本番、送り足で「めーん!」と叫ぶ。
「何?“めーん”って」とローゼは身構えるが、サムライブレードすごい放物線を描いて迫ってくる。しかも一回大きく振りかぶっているから、避けてください、と言っているようなもの。どんだけ素人? この剣捌き。ローゼは後ろにスロープパスして難なくかわす。
申し訳なさそうにローゼ、
「もしかして……なんちゃって侍ですか?」
「馬鹿者! これは剣道と言って、ジパング剣術全ての基本を成すもの」
ジパング皇国と言えば、世界に名だたる陸軍大国。無敵の侍軍団の名は世界に轟いているほどだ。
「でも、ジパングが戦争したって話聞きませんよね」とエミリアがローゼに訊く。
「まあ、大海の真ん中に浮かぶ孤島の国って話だからね。でも、南の島々を支配する宗主国でもあるから一応帝国らしいけど、実際強いかどうかは分からないわね」
遠い昔にラルガルマンと海戦したくらいしか思い当たらない。
「バカにしおって」とプリプリ怒る佐間之介は、不器用なすり足で近寄ってくる。またまた「めーん!」と叫んだ。
「え?」と叫んで佐間之介を見るローゼ。気配が感じられなかった。突然発する覇気に動転した。
避ける動作を取れなかったローゼ、ぽかり、と頭を叩かれた。
「ローゼさん――やりぃ」とエミリアがはしゃぐ。
やりぃ、じゃねーよ。何喜んでんだよ。わたし死んだら小説おわっちゃうじゃんかよ。
「わたしが引き継ぎますから大丈夫です」エミリア反論。
身もふたもねー言い方だな。
突然「あー」とエミリアが叫んだ。指さす先を他の二人が見ると、なんと刀が折れている。
「ああっ、伝説の刀が」と叫ぶ佐間之介から引き継いで、エミリア「ローゼリッタを殺る前に‼」と続けた。
お前の殺意ほんとスゲーな。ついでっぽく殺す気満々。
「わたし(エミリア)が手を下したら、ローゼリッタファンを取り込めませんからね」
自分のファンは逃げないの前提かよ。
「逃げたら全員即死刑ですから」よそ風のように流れるエミリアの声。
ファンなんだと思ってんだよ。
「畜生」
最低だな、おい。ここまで来たら、もはや主人公サイドの人間じゃねーよ。
「ツンデレですよ」
“デレ”どこだよ。“ツン”も“ツン”どころじゃないよ。
やんややんや、と続ける二人。それを見ていた佐間之介。さすがに切れる堪忍袋。
「拙者をのけ者にして、なんと無礼な。折れた刀どうしてくれる」
いや、折ったのお前だよね。
「お主の頭が悪いのだ」
「ひどいこと言うけど、エミリアの暴言の後だからなんか可愛いよ」と言ったローゼが気がついた。見ると、その刀、竹包みに銀箔貼っただけの代物。竹みつってやつ。
「あんた、それ騙されているのでは?」とローゼが教える。
「いや、騙されてはおらぬ。宮中では帯刀は許されておらぬゆえ、竹でできた刀に銀箔を貼って持ち込んだのだ」
そういう歴史的逸話はそれはそれで面白いけど、武器としては無力なのでは?
「何を申すか。己を殺そうとする公家どもをこの刀で跪かせたのじゃ。刀の霊気によってな」
持ってたやつの覇気か、ただ単に本物と見間違えたのでは?
「現に、お主は我が前に跪いておるであろう」
頭かち割られて痛かったからだよ。何が活人剣だよ。思いっきり殺す気だっただろ?
「故に活きるのだ」
わけ分からん。
普通、人斬りに嫌気がさして人を活かすために剣を振るうことを決意するとか、国を治める方法は人を殺して言うことを聞かせるのではなく、人を活かして豊かにさせる、とか、その思想を言い表したのが“活人剣”だろ?
それを聞いてびっくりするエミリア。
「わ、ローゼさんからそんな哲学めいた言葉が出てくるなんて、頭打ったんですか?」
「うん、今打ったから――じゃないよ、わたしけっこう勉強してんのよ? 大学生のわりに――」
ローゼの言葉をそよ風程度に受け流すエミリアに、ローゼは諦めて言葉を止めて佐間之介に向き直る。
「なんかアホすぎて戦う気が失せちゃうわ」
「ほう、負けを認めると申すか。これこそ活人剣の極意である」
「いいわよ、なんかもうわたし、お家帰りたいわ」とあきれるローゼが負けを認めた。
「だが、我が宝刀を折った報いは受けてもらうぞ。死をもってな」
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