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第六十六話 カトワーズの実力
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二人の戦況は厳しい。そればかりか、これ以外の方法でエルザに攻撃を加えられる可能性も皆無だった。
ローゼもエミリアも理解できないまま、力だけが消耗していく。二人の敗戦は目に見えていた。それもそのはず。エミリアが単発で霊撃を打ち放ってローゼが斬撃を合わせる、の繰り返しに対して、エルザは切れ目なく霊力を放出し続けている。だから、二人の攻撃が一瞬やむたびにエルザの霊力がムチの先(ローゼ側)に向かって進んで、二人を追い詰めていく。
「そうだ、カトワーズ! わたしカトワーズを呼んでくるわ」
彼を思い出したローゼがエミリアに叫ぶ。
ローゼ戦線離脱。それを追おうとするエルザの前にエミリアが立ちはだかる。消耗しきったエミリア一人では、もはやエルザと綱引きできない。エミリアは防御に徹することにし、竜蛇の如くのたまうムチを弾いてエルザの進撃を阻む。
それでもなおエルザは前進をやめない。エミリアは、ローゼとエルザの距離を何とかキープしながらも、彼女をその場に押しとどめることが出来なかった。
戦線が移動してしばらく後、ローゼがエルザと対峙していた場所に立つ美穂、何かを見つけた様子だ。それを眺めて何か思いつきそうだと考える。曲げた左手、右肘乗せて、人差し指を頬にあてがい考える。そしてピキーンと煌めくダイヤモンドeye‘s。思わず拾い上げたのは、ローゼがポシェットから落とした揚羽のアイマスクだ。
どこをどう逃げたのか、ローゼは見覚えある大通りに出た。ここ泊まっているホテルのそばだ。そう気がついたローゼは、必死にカトワーズの名前を呼ぶ。
「ローゼちゃん、どうした? ローゼちゃん!」とホテルから顔を出したカトワーズ。
「お願いカトワーズ、助けてー」
「美穂を持て余してんだろ?」
「違うわ、エルザが襲ってきてるのよ」
ローゼが逃げて来た方をカトワーズが見やると、すれ違う建物をムチで破壊しながら追ってくるエルザが見える。
「エルザ、貴族から落ちぶれたくせに、あの強さか」と呟いたカトワーズは、クラゲ船に乗って、ホテルの窓から飛び降りた。
「カトワーズ? あんたローゼの味方する気?」エルザが身構える。
「あんな畜生以下の存在でも、一度は婚約した仲だからな」
「婚約? あの子貴族には見えない立ち振る舞いだけれど……」
「そう、騙されたんだ。結婚詐欺と言うやつだよ」
「わたし何も騙してないもん」と不貞腐れるローゼ。でも二人ガン無視。
エルザが言った。
「それより、何で縛られてんのよ。しかも面白そうなのに乗って――て、それエイドリアンじゃない! まさかローゼが倒したって言うの?」
「そうらしい」カトワーズが神妙な面持ちで答える。
信じられないと言った感じで頬に左手をあて、首を横に振るうエルザ。
「マッドサイエンティスト(悪の魔導研究者)に改造されたって過去だけでも悲惨だけれど、最後が干物だなんて浮かばれないわね」
「ん?」とローゼ、エミリアと見つめ合う。少し考えたけどまあいっか。
「そうね、まあいいわ」とエルザ「ちょうどいいから、どっちが格上か決着つけましょう」と、カトワーズに飛びかかる。
「望むところだ。その強気の鼻っ柱をへし折って、僕の奴隷にしてやる。
落ちぶれた元貴族を奴隷にできるなんて、すごい軍隊が出来るぞ」
もわもわもわ~んと妄想が広がる。
なんか突然戦争中。でもエルザ、サドスティックな技繰り出して宮殿の中で踊っているだけじゃんか。全然攻撃も防御もしていないよ。ハーレムに埋もって見惚れてないで攻めてくる敵と戦えよカトワーズ。てか、あんた姿見えてないよ。どんだけいるんだよ、お前のハーレム。
外では男の奴隷どもが戦っている。あ、でもめっちゃつえー。給料と装備に金惜しまないから、すんげーつえー。都市国家(妄想は侯国に見える)なのにちょっとした国(公国ほど小さくないやつ)並みの戦車大隊まであんじゃん。しかも傭兵までも抱え込んで、食糧もつのか? なに? 全部金で解決できる? 言うは易しだけれども、金はかじっても食えないぞ。
それはさて置き、今は現実。
スッゲー閃光を放つカトワーズ。マジっすか? 「ふぎぎぎぎー」と力を絞り出す。お屋敷でローゼと闘っていたほどではないけれど、すごいサイコエネルギーを発している。
『ソニック・ブレッド』
発射された弾は砲弾(サイコ・キャノン)くらいある。クラゲの触手で縛られているのがダムとなって体内にたまった力が、一気に放出されているようだ。
でも、渦巻くムチのバリアの前に打ち消される。威力だってすんごいのに、とローゼ腰抜かしそう。
激しい戦いの中で、飛散するサイコエネルギーの青い塊が流れ矢みたいになって飛んでくる。火山が噴火して燃える石が尾を引いて落ちてくるようだ。そればかりか、雷のように飛ぶ霊力の柱とのた打ち回るムチも加わり、町は魔物に襲われたかのごとく今まで以上に大パニック。
ここいらにいる富豪たちは、名のある戦士や拳闘士を抱えているはずだが、だれも二人に手出しができない様子。
ただ、カトワーズにつく兵士たちとエルザのセシュターズの間で戦争勃発。大惨事が広範囲。しかもセシュターズすっげー強い。目隠しされて手足縛られているのに、兵士と互角ってどんだけよー?
カルデは自治都市だから、ロッツォレーチェ王国の軍隊は駐屯していない。代わりに自警団がある。都市内には幾つかのギルドがあって、自警団員は皆そこで剣術を習っている。ギルドの主催者にも生徒(主に富豪に仕えている)にもお金があるもんだから、方々の国々から有名な剣術家を呼び寄せてレッスンしているらしい。
ローゼが見たところ、カトワーズに組した兵士たちは凡百なスカラー(生徒)やフリースカラー(自由生徒)ではない。士官クラスの力量を持つプロポスト(準師範)やマイスター(師範)ばかりだ。
軍隊顔負けの強さを誇っている彼らと同等に渡り合うんだから、セシュターズ……変態ルックも綺麗に霞む。
ローゼが視線を戻すと、カトワーズが乗るクラゲ船は機動力がないので、段々とエルザに追い詰められていく。これはマズイ、とローゼが加勢に入る。クラゲ船に繋がれた触手を手に取って、勢いよくカトワーズを回し振るう。
モーニングスターのように使われて、「この僕をこんな扱いにするとはー」と泣き叫ぶカトワーズが、ムチに打たれまい、と必死に超能力で防戦する。
すっごい青い稲光を発して、サイコエネルギーとムチがぶつかり合う。
ローゼが、よくわたしこの二人に勝てたよなぁ、とドン引きするくらいすんごい二人。ローゼ必死。ついていくだけで精一杯。
下ネタ変態ファンタジーにあるまじき荒唐無稽で熾烈な戦い。こんな大決戦アリですか? 何度でも言いますよ、この作品、下ネタ変態ファンタジー。片や、奴隷国家建国を夢見る女の敵な鬼畜野郎、もう片一方を見てみると、男をなぶって恍惚に浸るSМ女王。お互いの目的は、どちらも共に相手を奴隷化することですからね。何度でも言いますよ、この作品、下ネタ変態ファンタジーですからー! ざんねーん、むねーん! 斬り捨てごめーん! ハラキリ三昧! 打ち首、蹴鞠で、晒し首。
ローゼもエミリアも理解できないまま、力だけが消耗していく。二人の敗戦は目に見えていた。それもそのはず。エミリアが単発で霊撃を打ち放ってローゼが斬撃を合わせる、の繰り返しに対して、エルザは切れ目なく霊力を放出し続けている。だから、二人の攻撃が一瞬やむたびにエルザの霊力がムチの先(ローゼ側)に向かって進んで、二人を追い詰めていく。
「そうだ、カトワーズ! わたしカトワーズを呼んでくるわ」
彼を思い出したローゼがエミリアに叫ぶ。
ローゼ戦線離脱。それを追おうとするエルザの前にエミリアが立ちはだかる。消耗しきったエミリア一人では、もはやエルザと綱引きできない。エミリアは防御に徹することにし、竜蛇の如くのたまうムチを弾いてエルザの進撃を阻む。
それでもなおエルザは前進をやめない。エミリアは、ローゼとエルザの距離を何とかキープしながらも、彼女をその場に押しとどめることが出来なかった。
戦線が移動してしばらく後、ローゼがエルザと対峙していた場所に立つ美穂、何かを見つけた様子だ。それを眺めて何か思いつきそうだと考える。曲げた左手、右肘乗せて、人差し指を頬にあてがい考える。そしてピキーンと煌めくダイヤモンドeye‘s。思わず拾い上げたのは、ローゼがポシェットから落とした揚羽のアイマスクだ。
どこをどう逃げたのか、ローゼは見覚えある大通りに出た。ここ泊まっているホテルのそばだ。そう気がついたローゼは、必死にカトワーズの名前を呼ぶ。
「ローゼちゃん、どうした? ローゼちゃん!」とホテルから顔を出したカトワーズ。
「お願いカトワーズ、助けてー」
「美穂を持て余してんだろ?」
「違うわ、エルザが襲ってきてるのよ」
ローゼが逃げて来た方をカトワーズが見やると、すれ違う建物をムチで破壊しながら追ってくるエルザが見える。
「エルザ、貴族から落ちぶれたくせに、あの強さか」と呟いたカトワーズは、クラゲ船に乗って、ホテルの窓から飛び降りた。
「カトワーズ? あんたローゼの味方する気?」エルザが身構える。
「あんな畜生以下の存在でも、一度は婚約した仲だからな」
「婚約? あの子貴族には見えない立ち振る舞いだけれど……」
「そう、騙されたんだ。結婚詐欺と言うやつだよ」
「わたし何も騙してないもん」と不貞腐れるローゼ。でも二人ガン無視。
エルザが言った。
「それより、何で縛られてんのよ。しかも面白そうなのに乗って――て、それエイドリアンじゃない! まさかローゼが倒したって言うの?」
「そうらしい」カトワーズが神妙な面持ちで答える。
信じられないと言った感じで頬に左手をあて、首を横に振るうエルザ。
「マッドサイエンティスト(悪の魔導研究者)に改造されたって過去だけでも悲惨だけれど、最後が干物だなんて浮かばれないわね」
「ん?」とローゼ、エミリアと見つめ合う。少し考えたけどまあいっか。
「そうね、まあいいわ」とエルザ「ちょうどいいから、どっちが格上か決着つけましょう」と、カトワーズに飛びかかる。
「望むところだ。その強気の鼻っ柱をへし折って、僕の奴隷にしてやる。
落ちぶれた元貴族を奴隷にできるなんて、すごい軍隊が出来るぞ」
もわもわもわ~んと妄想が広がる。
なんか突然戦争中。でもエルザ、サドスティックな技繰り出して宮殿の中で踊っているだけじゃんか。全然攻撃も防御もしていないよ。ハーレムに埋もって見惚れてないで攻めてくる敵と戦えよカトワーズ。てか、あんた姿見えてないよ。どんだけいるんだよ、お前のハーレム。
外では男の奴隷どもが戦っている。あ、でもめっちゃつえー。給料と装備に金惜しまないから、すんげーつえー。都市国家(妄想は侯国に見える)なのにちょっとした国(公国ほど小さくないやつ)並みの戦車大隊まであんじゃん。しかも傭兵までも抱え込んで、食糧もつのか? なに? 全部金で解決できる? 言うは易しだけれども、金はかじっても食えないぞ。
それはさて置き、今は現実。
スッゲー閃光を放つカトワーズ。マジっすか? 「ふぎぎぎぎー」と力を絞り出す。お屋敷でローゼと闘っていたほどではないけれど、すごいサイコエネルギーを発している。
『ソニック・ブレッド』
発射された弾は砲弾(サイコ・キャノン)くらいある。クラゲの触手で縛られているのがダムとなって体内にたまった力が、一気に放出されているようだ。
でも、渦巻くムチのバリアの前に打ち消される。威力だってすんごいのに、とローゼ腰抜かしそう。
激しい戦いの中で、飛散するサイコエネルギーの青い塊が流れ矢みたいになって飛んでくる。火山が噴火して燃える石が尾を引いて落ちてくるようだ。そればかりか、雷のように飛ぶ霊力の柱とのた打ち回るムチも加わり、町は魔物に襲われたかのごとく今まで以上に大パニック。
ここいらにいる富豪たちは、名のある戦士や拳闘士を抱えているはずだが、だれも二人に手出しができない様子。
ただ、カトワーズにつく兵士たちとエルザのセシュターズの間で戦争勃発。大惨事が広範囲。しかもセシュターズすっげー強い。目隠しされて手足縛られているのに、兵士と互角ってどんだけよー?
カルデは自治都市だから、ロッツォレーチェ王国の軍隊は駐屯していない。代わりに自警団がある。都市内には幾つかのギルドがあって、自警団員は皆そこで剣術を習っている。ギルドの主催者にも生徒(主に富豪に仕えている)にもお金があるもんだから、方々の国々から有名な剣術家を呼び寄せてレッスンしているらしい。
ローゼが見たところ、カトワーズに組した兵士たちは凡百なスカラー(生徒)やフリースカラー(自由生徒)ではない。士官クラスの力量を持つプロポスト(準師範)やマイスター(師範)ばかりだ。
軍隊顔負けの強さを誇っている彼らと同等に渡り合うんだから、セシュターズ……変態ルックも綺麗に霞む。
ローゼが視線を戻すと、カトワーズが乗るクラゲ船は機動力がないので、段々とエルザに追い詰められていく。これはマズイ、とローゼが加勢に入る。クラゲ船に繋がれた触手を手に取って、勢いよくカトワーズを回し振るう。
モーニングスターのように使われて、「この僕をこんな扱いにするとはー」と泣き叫ぶカトワーズが、ムチに打たれまい、と必死に超能力で防戦する。
すっごい青い稲光を発して、サイコエネルギーとムチがぶつかり合う。
ローゼが、よくわたしこの二人に勝てたよなぁ、とドン引きするくらいすんごい二人。ローゼ必死。ついていくだけで精一杯。
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