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第三十九話 いつの間にか定着していた“クラゲ野郎”
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一人で猫に追いかけられて遊んでいたクラゲ野郎が、ローゼたちに気がついて振り返る。でも前も後ろもないんないだから、こっち向いているか分からない。
尻尾を掴まれて「ふぎゃふぎゃ」鳴いている猫を見て、エミリアが大喜び。
「クラゲ野郎さん、猫好きなんですね」
「いや、嫌いだよ」
「そうなんですか? でも楽しそうに遊んでる……」
「こいつらムカつくからこうしてやるんだ」
そう言ったクラゲ野郎は、嫌がる猫の目に触手を入れる。見る見るうちに猫の皮が剥がれていく。それを見たローゼがドン引き。
「お前もか⁉ 皮剥ぎが趣味なんてオントワーンと同じじゃんか‼」
「なんだ、オントワーンを知っているのか? でもあいつなんかと――あっ! イッショニ~ス~ル~ナ~」
もういい加減それやめにしない?
「アイツは皮を剥がれる時の苦しむさまを見るのが好きなんだよ。それにあの気持ち悪い瘡蓋人間? 生人間? を作るのが趣味なんだよ。あんな悪趣味な奴と一緒にされたら困るなー」
「じゃあ、クラゲ野郎は何やってんのよ」とローゼが訊く。
すると、クラゲ野郎は、皮を剥がされた猫を海に投げ捨てて、切れ込みのない猫の着ぐるみを見せてた。
思わず「わぁ、可愛い」とエミリアが喜ぶ。可愛いか? 密かに思っているんだけれど、エミリアってちょっと変わっている。猫がめっちゃもがいている。海水沁みるんだろうな。一目散に逃げていった。
「僕は、中身になんて興味ないね。こっちの毛皮を集めているんだ」
何でそんな趣味……。
「アイツら、いつも僕を狙ってんだ。気がつくと僕の足を食いちぎって持っていくんだよ」
そう聞いて、ローゼは一本千切ってみた。
「こら、やめろ」とクラゲ野郎が怒る。千切れた足、すっごいのた打ち回ってる。敷石の上に落とされたミミズみたい。こりゃ猫も欲しがるよな。それにコイツ、微かに美味しそうな匂いするし。
そういえば、ローゼに叩かれてもげた体も、今までに千切れた足(触手)も全部回復している。さすが人獣、すごい回復力。それに気がついてローゼが言う。
「痛くもかゆくもないんでしょ? 何も殺さなくても」
「殺さないさ。さっきみたいに生きたまま放す時もあるよ」
「そういえば――」とエミリアが言った。「このクリオの町、なんか毛がない猫多かった気が……」
そういえばそうだ。「もしかして、みんな?」とローゼが引き継ぐ。
クラゲ野郎が答えて言った。
「そうだよ。裸猫って種類知ってる? あれみんな僕が作っているんだ」
「マジっすか?」(ローゼ&エミリア)
「嘘」
なんだよ、嘘かよ。そう言えば聞き流したことが一つあった。“殺さないこともある”ってとこ。
「うん、失敗すると中身も溶けちゃうんだ。まあ、故意に溶かしちゃうことの方が多いけどね」
猫が可愛そうだといった感じの表情を浮かべるエミリアに、ローゼが言った。
「まあ、生きとし生ける物みんな生き物を食べて生きているんだからしょうがないわよ。わたしたちだって同じだもの」
するとクラゲ野郎が否定する。
「食べないよ、あんなクソまずいもん。やっぱり牧草牛が美味しいよね」
グルメだな。
「食べてないけどね」
ないのかよ。
「だって僕、海から離れらんないもん。干からびちゃうから」
そうか、それでさっき追っかけてこれなかったのか。
「お願いがあるんですけど」とエミリアが口を開いた。「みんなここで泳げなくて困っているんです。悪さするのやめてもらえませんか?」
「やだね」即答したクラゲ野郎は続けて言った。
「海で泳ぐやつなんて死ねばいいんだ。あいつらみんなイチャイチャしやがって」
「ん?」とローゼ。なんか変な理由ぽい匂いがプンプンする。
「もしかして、リア充が羨ましいんじゃ……」
「違うよ、違うよ―――あっ! チ~ガ~ウ~」
もうやめろって、そのヘリュウムボイスなんかムカつく。
「分からないやつだな、ローゼリッタ。この声の良さ、これが僕のチャームポイントなのに」
気に入ってんかソレ。
「僕は地球人の男から彼女を奪ったから、恨まれているんだ」
「略奪愛?」と二人はビックリした。
「何年も前のある夏の日、僕は可愛い女の子を見つけて一目ぼれしたんだ。彼女はパラソルの下に横になって休んでいたから、僕は海から出ていってオイルを塗ってあげたんだ。
それで意気投合しておしゃべりをしていたらね、彼氏が来て口論になったんだよ。彼女は帰りたがったけれど、僕は本当に愛しているよって説得した。彼氏は激怒して彼女を突き放したから、僕たちは一緒にビーチを後にしたんだ――」
もう少し話は続きそうだったけれど、ローゼは話しを遮ってつっこんだ。
「いやいやいやいや、言ってることと回想と違うじゃん。活字だからってわたし騙されないよ。『この小説でこんな話ないんじゃない?』って読者も気づいてるよ」
いやエミリア、『素敵っ!』じゃないよ。どういう感性してんだよ。今の回想見て本気で思えてる?
時を戻そう。海から上がったクラゲ野郎。恐れおののく海水浴客たちが割れて作った道を悠々と歩いて(浮かんで)、気がつかずに休んでいる女性のとこまでやって来た。デロデロの粘液を触手から出して、女性の体を撫でまわす。見る見るうちに溶け出す柔肌。
かき氷を買って戻ってきた彼氏が、びっくりして彼女のもとに駆け寄った時には、時既に遅し。「助けてー」と叫ぶ彼女の足を触手で引っ張って引き倒し、クラゲ野郎が覆いかぶさる。でも弾力性0のクラゲ野郎。彼女はなんなく逃げだした。
「大丈夫か、ドロシーちゃん」と彼氏が抱きしめて声をかける。「ええ、大丈夫よ」と言って顔をあげるドロシーちゃん。その顔デロデロに溶けて半分骸骨。「ぎょえぇぇぇ‼‼‼」と叫んで逃げだす彼氏。「待ってー」と叫ぶドロシーちゃんは、内臓を引きづりながら少し走って力尽きて膝をつく。抵抗できなくなったドロシーちゃんを引きずって、クラゲ野郎は海へと帰っていった。
マジこえーよ! ホラーじゃんかよ! 後日水着だけが浜に打ち上げられたんじゃないのか?
「よく分かったな」とクラゲ野郎。
ドロシーちゃんどうしたんだよ。
「あれは美味かったな」
食った?
「ああ、ごはんだからな」
最悪野郎だな。
「あれ以来、僕は独りぼっち……」
一生独りぼっちでいてくれよ。
「だからビーチは渡さないよ。リア充なんて糞喰らえだ」
やっぱりそこか。ローゼは呆れて何も言えませんでした。
尻尾を掴まれて「ふぎゃふぎゃ」鳴いている猫を見て、エミリアが大喜び。
「クラゲ野郎さん、猫好きなんですね」
「いや、嫌いだよ」
「そうなんですか? でも楽しそうに遊んでる……」
「こいつらムカつくからこうしてやるんだ」
そう言ったクラゲ野郎は、嫌がる猫の目に触手を入れる。見る見るうちに猫の皮が剥がれていく。それを見たローゼがドン引き。
「お前もか⁉ 皮剥ぎが趣味なんてオントワーンと同じじゃんか‼」
「なんだ、オントワーンを知っているのか? でもあいつなんかと――あっ! イッショニ~ス~ル~ナ~」
もういい加減それやめにしない?
「アイツは皮を剥がれる時の苦しむさまを見るのが好きなんだよ。それにあの気持ち悪い瘡蓋人間? 生人間? を作るのが趣味なんだよ。あんな悪趣味な奴と一緒にされたら困るなー」
「じゃあ、クラゲ野郎は何やってんのよ」とローゼが訊く。
すると、クラゲ野郎は、皮を剥がされた猫を海に投げ捨てて、切れ込みのない猫の着ぐるみを見せてた。
思わず「わぁ、可愛い」とエミリアが喜ぶ。可愛いか? 密かに思っているんだけれど、エミリアってちょっと変わっている。猫がめっちゃもがいている。海水沁みるんだろうな。一目散に逃げていった。
「僕は、中身になんて興味ないね。こっちの毛皮を集めているんだ」
何でそんな趣味……。
「アイツら、いつも僕を狙ってんだ。気がつくと僕の足を食いちぎって持っていくんだよ」
そう聞いて、ローゼは一本千切ってみた。
「こら、やめろ」とクラゲ野郎が怒る。千切れた足、すっごいのた打ち回ってる。敷石の上に落とされたミミズみたい。こりゃ猫も欲しがるよな。それにコイツ、微かに美味しそうな匂いするし。
そういえば、ローゼに叩かれてもげた体も、今までに千切れた足(触手)も全部回復している。さすが人獣、すごい回復力。それに気がついてローゼが言う。
「痛くもかゆくもないんでしょ? 何も殺さなくても」
「殺さないさ。さっきみたいに生きたまま放す時もあるよ」
「そういえば――」とエミリアが言った。「このクリオの町、なんか毛がない猫多かった気が……」
そういえばそうだ。「もしかして、みんな?」とローゼが引き継ぐ。
クラゲ野郎が答えて言った。
「そうだよ。裸猫って種類知ってる? あれみんな僕が作っているんだ」
「マジっすか?」(ローゼ&エミリア)
「嘘」
なんだよ、嘘かよ。そう言えば聞き流したことが一つあった。“殺さないこともある”ってとこ。
「うん、失敗すると中身も溶けちゃうんだ。まあ、故意に溶かしちゃうことの方が多いけどね」
猫が可愛そうだといった感じの表情を浮かべるエミリアに、ローゼが言った。
「まあ、生きとし生ける物みんな生き物を食べて生きているんだからしょうがないわよ。わたしたちだって同じだもの」
するとクラゲ野郎が否定する。
「食べないよ、あんなクソまずいもん。やっぱり牧草牛が美味しいよね」
グルメだな。
「食べてないけどね」
ないのかよ。
「だって僕、海から離れらんないもん。干からびちゃうから」
そうか、それでさっき追っかけてこれなかったのか。
「お願いがあるんですけど」とエミリアが口を開いた。「みんなここで泳げなくて困っているんです。悪さするのやめてもらえませんか?」
「やだね」即答したクラゲ野郎は続けて言った。
「海で泳ぐやつなんて死ねばいいんだ。あいつらみんなイチャイチャしやがって」
「ん?」とローゼ。なんか変な理由ぽい匂いがプンプンする。
「もしかして、リア充が羨ましいんじゃ……」
「違うよ、違うよ―――あっ! チ~ガ~ウ~」
もうやめろって、そのヘリュウムボイスなんかムカつく。
「分からないやつだな、ローゼリッタ。この声の良さ、これが僕のチャームポイントなのに」
気に入ってんかソレ。
「僕は地球人の男から彼女を奪ったから、恨まれているんだ」
「略奪愛?」と二人はビックリした。
「何年も前のある夏の日、僕は可愛い女の子を見つけて一目ぼれしたんだ。彼女はパラソルの下に横になって休んでいたから、僕は海から出ていってオイルを塗ってあげたんだ。
それで意気投合しておしゃべりをしていたらね、彼氏が来て口論になったんだよ。彼女は帰りたがったけれど、僕は本当に愛しているよって説得した。彼氏は激怒して彼女を突き放したから、僕たちは一緒にビーチを後にしたんだ――」
もう少し話は続きそうだったけれど、ローゼは話しを遮ってつっこんだ。
「いやいやいやいや、言ってることと回想と違うじゃん。活字だからってわたし騙されないよ。『この小説でこんな話ないんじゃない?』って読者も気づいてるよ」
いやエミリア、『素敵っ!』じゃないよ。どういう感性してんだよ。今の回想見て本気で思えてる?
時を戻そう。海から上がったクラゲ野郎。恐れおののく海水浴客たちが割れて作った道を悠々と歩いて(浮かんで)、気がつかずに休んでいる女性のとこまでやって来た。デロデロの粘液を触手から出して、女性の体を撫でまわす。見る見るうちに溶け出す柔肌。
かき氷を買って戻ってきた彼氏が、びっくりして彼女のもとに駆け寄った時には、時既に遅し。「助けてー」と叫ぶ彼女の足を触手で引っ張って引き倒し、クラゲ野郎が覆いかぶさる。でも弾力性0のクラゲ野郎。彼女はなんなく逃げだした。
「大丈夫か、ドロシーちゃん」と彼氏が抱きしめて声をかける。「ええ、大丈夫よ」と言って顔をあげるドロシーちゃん。その顔デロデロに溶けて半分骸骨。「ぎょえぇぇぇ‼‼‼」と叫んで逃げだす彼氏。「待ってー」と叫ぶドロシーちゃんは、内臓を引きづりながら少し走って力尽きて膝をつく。抵抗できなくなったドロシーちゃんを引きずって、クラゲ野郎は海へと帰っていった。
マジこえーよ! ホラーじゃんかよ! 後日水着だけが浜に打ち上げられたんじゃないのか?
「よく分かったな」とクラゲ野郎。
ドロシーちゃんどうしたんだよ。
「あれは美味かったな」
食った?
「ああ、ごはんだからな」
最悪野郎だな。
「あれ以来、僕は独りぼっち……」
一生独りぼっちでいてくれよ。
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