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第六話 漆黒のタイフーン! オントワーン・セルガー
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月も雲に隠れた真っ暗闇。ローゼたちが、塀の外まで逃げながら追って来た手下どもをあらかた倒して、もういいよ手形なんて……なんて気持ちになったちょうどその時、新たな敵が現れた。
「ふっふっふっ」と笑う声に「だれっ?」と叫んだローゼが、声のする方に振り返る。スーパーロングのダークエルフだ。
ボロボロで破れたようになった袖のないTシャツ。これが実はもともと長袖だったのにこんなになるまで大事に着ているなんて、ローゼたちには知る由もない。色あせて少し紫色っぽい黒デニムの下体衣(ズボン)を穿いている。
ローゼが訝しげにオントワーンの周りを一周回る。変な行動をとられて「なんだ?」と呟くオントワーンに向かって、「普通……」とローゼ。もしかしたら、お尻の部分だけ生地がないとか、Tシャツにブラが透けているのかと思った。
オントワーンは剣を抜くと、鞘を投げ捨てた後シャキーン、と構えてローゼに言った。
「悪魔牙団のアジトに侵入して生きて返れるなんて思うな。今度は俺が相手をしてやる。ここで死んでもらおう」
「真面目ね」
「当り前だ」
なんか物足りない。本来こんな展開を望んでいたはずなんだけれど……。ローゼはレイピアを構える。やや腰をかがめて右手を突きだす“第四の構え”。ローゼ息を飲む。すごい威圧感。それもそのはず。オントワーンは百八十五センチの長身、持っている剣は刃渡り百四十センチを優に超えていそうなツーハンドソード。ローゼは一瞬エストックかと見間違えたほど。その剣を軽々と片手で操っている。
剣捌きも信じられないほど速い。スピードでなら勝てると踏んでいたローゼは、攻撃に転じることが出来ない。振り下ろされた剣をいなしてレイピアを振るうも、オントワーンは軽いフットワークで避けてしまう。そして再びローゼは防戦一方。
ローゼは軍学校在学中の見習い剣士だが、もし軍に入ったら騎士の称号を得られるほどの実力がある。それに対してオントワーンは場数を踏んで実力を高めた実践派。基本がなっていないから、ときどき隙が出来る。そこを見逃さなかったローゼは、時間をかけて確実に主導権を握りにいく。
ローゼの母国ミッドエルには、ツーハンドソードの元祖、ツヴァイヘンダーという両手剣がある。百二十センチから百八十センチもある長身の剣だ。それを相手に訓練をしたことがあったから、上手く対応できた。
距離を置いて構えなおすオントワーンが、感嘆の言葉を吐いた。
「女だてらに腕が立つ」
「あなたもね。基礎は無いようだけれどっ」
オントワーンが勢いよくオーバルハウ(上からの斬撃)を浴びせかけた。
ローゼは、オーバルハウを受ける素振りを見せてからすかして、左オーバルハウを被せ撃つ。
だが、野生の感か動体視力が良いのか、オントワーンはレイピアをクルンプハウ(扇を開く様な横斬撃)からソードスローイング(巻き込みつつ弾く)してすかさずシェルハウ(腰の横に剣を構え、グリップを支点にして縦の斬撃)。
そう返してくるのは教科書通り。ローゼは、弾かれた勢いでブレードを回転させて左ツベルクハウ(旋回斬り)。
だが、オントワーンは頭を反らせてうまく避けた。
彼の剣圧は凄まじい。
普通のレイピアは、リカッソ(剣の根元の刃のない部分)がヒルトの内側にあるが、ローゼのはちょっと特殊。スワップヒルトの外まで六角形のリカッソが伸びていて、六角形の左右の面に絡み合う蔦に、今にも香りが漂ってきそうなほど綺麗な絡み合う蔓と花の象嵌が施されている。
剣身よりも太いリカッソでシェルハウを受けたローゼだったが、このまま強くバインドしながらリェドル(ねじる)して刺突で追い打ちをかけたら、弱い部分に刃を舐められてレイピアを折られかねない。そこでローゼは、柔らかくバインドしたまま、接点を軸にして再度ツベルクハウ。
右オクスに構える動作でツベルクハウを受けるオントワーン。
両者相手のバックを取ろう、と時計回りで滑り舞う。
(ここだ!)と突如踏み止まったローゼ、シュテッヒェン(刺突)を撃ち込んだ。
それに呼応するように、オントワーンも刺突を放つ。
二人は互いの突きを頭を反らせて避けつつ、ツーリックステップ(後ろ)。しばしの沈黙。
間もなくして、まず口を開いたのは、オントワーンだった。
「なかなかやるな、ローゼリッタ・クラインワルツ。なげーなお前の名前。この俺を本気にさせるとはな」
「ふん、負け惜しみなんて言う暇あったら降参しなさいよ。名前の長さ関係ないの! わたしの連れが雑魚もかたしちゃったみたいだしね」
「ほざけ! おしゃべりはここまでだ‼ 行け! 我が騎馬隊‼」
オントワーンが叫ぶと、森の奥に地を揺るがす振動が響き、眠っていた鳥が起きて逃げ出した。
何事か、と辺りを見渡しながら、ローゼがエミリアに叫ぶ。
「盗賊団に襲われた人たちはコイツを恐れていたのね! 本気で行くわよ、エミリア!」
「はい」
数が多い。そうか、オントワーンは部下の騎馬隊の準備を待っていたのか。姿を現した騎馬隊は恐ろしい風貌をしている。――て三角木馬かい‼ 超手作り感満載のシンプルなやつ。足元台じゃんか、どうやって出てこれたんだ?
騎乗しているやつら、全員ブリーフ姿で跨っていて、後ろ手に縛られている。しかも足には鉄丸付きの鎖がはめられていた。
やや間があって、
「あー……、んじゃ、そう言うことで――」と帰ろうとするローゼを三角木馬が取り囲む。
オロオロするエミリアが叫んだ。
「ローゼさん、この騎馬隊空飛んでますよ」
「オントワーンが霊力で飛ばしているのね」
騎兵(?)相手にレイピアと空手では分が悪すぎる。それでも自慢の剣捌きと空手技で、次々に騎兵(?)を倒していく。
それを見せつけられても余裕しゃくしゃくのオントワーン。腕を胸の前で組んでほくそ笑む。
「レイピアと素手でよく我が騎馬隊と戦える。通称三角木馬隊と恐れられる騎馬隊相手にこれほど持ち堪えるとは……褒めてやろう」
騎馬隊と間違われる三角木馬隊の間違いなのでは? 通称じゃないよね? あからさまに三角木馬だよね、正式名称。
「憧れてんだ、騎馬隊に」とオントワーン。「でもここ岩山じゃん? 牧草はえねーでやんの、シクシクシク」
「泣かないでよ」とローゼ「裏に森があるじゃん、あそこ切り開けばいいことでしょう?」
「最低だなお前、それ自然破壊じゃんか」とオントワーンがきっぱりと非難した。
人間やめますか?状態の人間破壊者に言われたくねーよ。
三角木馬隊を退かせたオントワーンは、鉄丸を引きずりながらやって来た部下が後ろ手に持っていた自分専用の特別鉄丸を足に装着する。
「受けよ! トルネードアターック‼」
オントワーンがクルクル回って襲い掛かってきた。
ドカーン!
避けたローゼたちの後ろにあった小屋が一棟崩壊した。「うぉ! 何その威力!」とローゼ狼狽。エミリアも逃げまどう始末。奴隷鉄丸に撲殺されるなんてシャレにならん。
いろんなものを粉砕したり、部下の顔面にオウンゴールきめたり散々してから、改めてローゼたちの実力を認めたオントワーン、強者を前にして高鳴る気持ちを抑えるような口調で言った。
「俺の技を全て避けきるなんて、ただ者じゃねーな」
「ふん、良い子は自分の髪で手足を結んでおねんねしてなさい」とローゼ言い返す。
「ふん、減らず口を。――だが、確かに良い案だ」
おいおい、試す気満々か?
「俺たちの趣味を前にして震え上がらなかったのはお前たちが始めてだ」
趣味かよこれ? やな趣味だな、いや、わたしたちも震え上がってるから! ほんと違う意味で。
「よーしみんな集まれ」とオントワーン。わらわらと手下が集う。
「みんなでハリケーンアタッーク!」「「「アターック!」」」
「ぎゃぁァァ! いっせいに来たー‼」ローゼ絶叫。
回転ブリーフ鉄の玉。遠心力凄過ぎでパンツ脱げてるやつもいる。ローゼはエミリアの目を覆ってR指定回避に右往左往。とりあえずフルチンのやつだけでも仕留めないと、とローゼが奮闘する。
ローゼが脱げたパンツをレイピアでつついて穿き直させる度に、「あはあはあは~ん」と叫ぶ手下ども。チクチクされて気持ちいい。こっちは聞いてて気持ち悪い。
「あはあはあは~ん」
「あはあはあは~ん」
「あはあはあは~ん」
なんかエコー効いてるよ。
て! よく見るとおんなじやつじゃんか! ゴムが伸びていて、穿かせたそばから脱げちゃってるよ! 嫌な気配を感じて振り返ると、後ろ手なのに上手くパンツを脱ぐ奴までいやがった。ワザとはやめてよ。ほんとサイアク。
「ローゼさん、パンツかぶったやつまでいますよ」エミリア指摘。
「あっだめ! 目開けちゃ」
「大丈夫ですよ、回っていてかむっているとこ――」
パコっとローゼが殴る。
「いったーい!」
「『――とこ す! ら! 見えていませんでしたから』って言おうとしたのよね? ねっっ⁉⁉」
月明かりも無いんだから、大丈夫だよね? ぎりぎりセーフ。鉄丸が前を被っていて見えなかったってこと。あ、でも一人いじけてる奴いるね、どうしたんだろうね。
エミリアがぽん、と手を叩いて、ローゼを呼ぶ。いいこと思いついたらしい。
「はたち設定に変える」「却下」「切り落とす」「こえーよ」「剃る」「?」
三つ目意味あんのか? 子供のフリさせれば大丈夫? ダメだろ。子供にしちゃえば大丈夫? だからダメだって、木馬に乗ってくるとこからやり直しだよ。もういいよ。とりあえずローゼの剣捌きがすごすぎて、上手く蝶結びにして脱げなくしたってことにするから。
でもエミリア物言い。難癖つける。
「だめですよローゼさん、そんなことできないでしょ?」
「真面目か‼」
エミリアの猛抗議で蝶結びは取りやめ。レイピアで強引にブリーフを引っ張って、肩に引っ掛ける。
「ハイレグみたいになってるー」エミリア大喜び。
ワナワナ震え出したオントワーンが大絶叫「なんかエローい」
意味分からん。片っぽの乳首が出ているのが良いらしい。さっきまで両方出てたじゃん。
戦線に復帰したエミリアの奮戦もあって、徐々にだが乱れたペースが整っていく。数が多いいだけで、一つ一つはトルネードアタックと変わらない。
🎼アンドゥトロァ アンドゥトロァ ローゼ ひっかけ エミリア 殴る ローゼ ひっかけ エミリア 殴る♪🎼
コツを掴んだエミリアは、鉄丸を正拳突きで打ち返して次々に手下をのしていく。後ろで手を叩いてリズムをとってくれているオントワーンのオ・カ・ゲ。
――て、何やってんの? オントワーン。
「ふっふっふっ」と笑う声に「だれっ?」と叫んだローゼが、声のする方に振り返る。スーパーロングのダークエルフだ。
ボロボロで破れたようになった袖のないTシャツ。これが実はもともと長袖だったのにこんなになるまで大事に着ているなんて、ローゼたちには知る由もない。色あせて少し紫色っぽい黒デニムの下体衣(ズボン)を穿いている。
ローゼが訝しげにオントワーンの周りを一周回る。変な行動をとられて「なんだ?」と呟くオントワーンに向かって、「普通……」とローゼ。もしかしたら、お尻の部分だけ生地がないとか、Tシャツにブラが透けているのかと思った。
オントワーンは剣を抜くと、鞘を投げ捨てた後シャキーン、と構えてローゼに言った。
「悪魔牙団のアジトに侵入して生きて返れるなんて思うな。今度は俺が相手をしてやる。ここで死んでもらおう」
「真面目ね」
「当り前だ」
なんか物足りない。本来こんな展開を望んでいたはずなんだけれど……。ローゼはレイピアを構える。やや腰をかがめて右手を突きだす“第四の構え”。ローゼ息を飲む。すごい威圧感。それもそのはず。オントワーンは百八十五センチの長身、持っている剣は刃渡り百四十センチを優に超えていそうなツーハンドソード。ローゼは一瞬エストックかと見間違えたほど。その剣を軽々と片手で操っている。
剣捌きも信じられないほど速い。スピードでなら勝てると踏んでいたローゼは、攻撃に転じることが出来ない。振り下ろされた剣をいなしてレイピアを振るうも、オントワーンは軽いフットワークで避けてしまう。そして再びローゼは防戦一方。
ローゼは軍学校在学中の見習い剣士だが、もし軍に入ったら騎士の称号を得られるほどの実力がある。それに対してオントワーンは場数を踏んで実力を高めた実践派。基本がなっていないから、ときどき隙が出来る。そこを見逃さなかったローゼは、時間をかけて確実に主導権を握りにいく。
ローゼの母国ミッドエルには、ツーハンドソードの元祖、ツヴァイヘンダーという両手剣がある。百二十センチから百八十センチもある長身の剣だ。それを相手に訓練をしたことがあったから、上手く対応できた。
距離を置いて構えなおすオントワーンが、感嘆の言葉を吐いた。
「女だてらに腕が立つ」
「あなたもね。基礎は無いようだけれどっ」
オントワーンが勢いよくオーバルハウ(上からの斬撃)を浴びせかけた。
ローゼは、オーバルハウを受ける素振りを見せてからすかして、左オーバルハウを被せ撃つ。
だが、野生の感か動体視力が良いのか、オントワーンはレイピアをクルンプハウ(扇を開く様な横斬撃)からソードスローイング(巻き込みつつ弾く)してすかさずシェルハウ(腰の横に剣を構え、グリップを支点にして縦の斬撃)。
そう返してくるのは教科書通り。ローゼは、弾かれた勢いでブレードを回転させて左ツベルクハウ(旋回斬り)。
だが、オントワーンは頭を反らせてうまく避けた。
彼の剣圧は凄まじい。
普通のレイピアは、リカッソ(剣の根元の刃のない部分)がヒルトの内側にあるが、ローゼのはちょっと特殊。スワップヒルトの外まで六角形のリカッソが伸びていて、六角形の左右の面に絡み合う蔦に、今にも香りが漂ってきそうなほど綺麗な絡み合う蔓と花の象嵌が施されている。
剣身よりも太いリカッソでシェルハウを受けたローゼだったが、このまま強くバインドしながらリェドル(ねじる)して刺突で追い打ちをかけたら、弱い部分に刃を舐められてレイピアを折られかねない。そこでローゼは、柔らかくバインドしたまま、接点を軸にして再度ツベルクハウ。
右オクスに構える動作でツベルクハウを受けるオントワーン。
両者相手のバックを取ろう、と時計回りで滑り舞う。
(ここだ!)と突如踏み止まったローゼ、シュテッヒェン(刺突)を撃ち込んだ。
それに呼応するように、オントワーンも刺突を放つ。
二人は互いの突きを頭を反らせて避けつつ、ツーリックステップ(後ろ)。しばしの沈黙。
間もなくして、まず口を開いたのは、オントワーンだった。
「なかなかやるな、ローゼリッタ・クラインワルツ。なげーなお前の名前。この俺を本気にさせるとはな」
「ふん、負け惜しみなんて言う暇あったら降参しなさいよ。名前の長さ関係ないの! わたしの連れが雑魚もかたしちゃったみたいだしね」
「ほざけ! おしゃべりはここまでだ‼ 行け! 我が騎馬隊‼」
オントワーンが叫ぶと、森の奥に地を揺るがす振動が響き、眠っていた鳥が起きて逃げ出した。
何事か、と辺りを見渡しながら、ローゼがエミリアに叫ぶ。
「盗賊団に襲われた人たちはコイツを恐れていたのね! 本気で行くわよ、エミリア!」
「はい」
数が多い。そうか、オントワーンは部下の騎馬隊の準備を待っていたのか。姿を現した騎馬隊は恐ろしい風貌をしている。――て三角木馬かい‼ 超手作り感満載のシンプルなやつ。足元台じゃんか、どうやって出てこれたんだ?
騎乗しているやつら、全員ブリーフ姿で跨っていて、後ろ手に縛られている。しかも足には鉄丸付きの鎖がはめられていた。
やや間があって、
「あー……、んじゃ、そう言うことで――」と帰ろうとするローゼを三角木馬が取り囲む。
オロオロするエミリアが叫んだ。
「ローゼさん、この騎馬隊空飛んでますよ」
「オントワーンが霊力で飛ばしているのね」
騎兵(?)相手にレイピアと空手では分が悪すぎる。それでも自慢の剣捌きと空手技で、次々に騎兵(?)を倒していく。
それを見せつけられても余裕しゃくしゃくのオントワーン。腕を胸の前で組んでほくそ笑む。
「レイピアと素手でよく我が騎馬隊と戦える。通称三角木馬隊と恐れられる騎馬隊相手にこれほど持ち堪えるとは……褒めてやろう」
騎馬隊と間違われる三角木馬隊の間違いなのでは? 通称じゃないよね? あからさまに三角木馬だよね、正式名称。
「憧れてんだ、騎馬隊に」とオントワーン。「でもここ岩山じゃん? 牧草はえねーでやんの、シクシクシク」
「泣かないでよ」とローゼ「裏に森があるじゃん、あそこ切り開けばいいことでしょう?」
「最低だなお前、それ自然破壊じゃんか」とオントワーンがきっぱりと非難した。
人間やめますか?状態の人間破壊者に言われたくねーよ。
三角木馬隊を退かせたオントワーンは、鉄丸を引きずりながらやって来た部下が後ろ手に持っていた自分専用の特別鉄丸を足に装着する。
「受けよ! トルネードアターック‼」
オントワーンがクルクル回って襲い掛かってきた。
ドカーン!
避けたローゼたちの後ろにあった小屋が一棟崩壊した。「うぉ! 何その威力!」とローゼ狼狽。エミリアも逃げまどう始末。奴隷鉄丸に撲殺されるなんてシャレにならん。
いろんなものを粉砕したり、部下の顔面にオウンゴールきめたり散々してから、改めてローゼたちの実力を認めたオントワーン、強者を前にして高鳴る気持ちを抑えるような口調で言った。
「俺の技を全て避けきるなんて、ただ者じゃねーな」
「ふん、良い子は自分の髪で手足を結んでおねんねしてなさい」とローゼ言い返す。
「ふん、減らず口を。――だが、確かに良い案だ」
おいおい、試す気満々か?
「俺たちの趣味を前にして震え上がらなかったのはお前たちが始めてだ」
趣味かよこれ? やな趣味だな、いや、わたしたちも震え上がってるから! ほんと違う意味で。
「よーしみんな集まれ」とオントワーン。わらわらと手下が集う。
「みんなでハリケーンアタッーク!」「「「アターック!」」」
「ぎゃぁァァ! いっせいに来たー‼」ローゼ絶叫。
回転ブリーフ鉄の玉。遠心力凄過ぎでパンツ脱げてるやつもいる。ローゼはエミリアの目を覆ってR指定回避に右往左往。とりあえずフルチンのやつだけでも仕留めないと、とローゼが奮闘する。
ローゼが脱げたパンツをレイピアでつついて穿き直させる度に、「あはあはあは~ん」と叫ぶ手下ども。チクチクされて気持ちいい。こっちは聞いてて気持ち悪い。
「あはあはあは~ん」
「あはあはあは~ん」
「あはあはあは~ん」
なんかエコー効いてるよ。
て! よく見るとおんなじやつじゃんか! ゴムが伸びていて、穿かせたそばから脱げちゃってるよ! 嫌な気配を感じて振り返ると、後ろ手なのに上手くパンツを脱ぐ奴までいやがった。ワザとはやめてよ。ほんとサイアク。
「ローゼさん、パンツかぶったやつまでいますよ」エミリア指摘。
「あっだめ! 目開けちゃ」
「大丈夫ですよ、回っていてかむっているとこ――」
パコっとローゼが殴る。
「いったーい!」
「『――とこ す! ら! 見えていませんでしたから』って言おうとしたのよね? ねっっ⁉⁉」
月明かりも無いんだから、大丈夫だよね? ぎりぎりセーフ。鉄丸が前を被っていて見えなかったってこと。あ、でも一人いじけてる奴いるね、どうしたんだろうね。
エミリアがぽん、と手を叩いて、ローゼを呼ぶ。いいこと思いついたらしい。
「はたち設定に変える」「却下」「切り落とす」「こえーよ」「剃る」「?」
三つ目意味あんのか? 子供のフリさせれば大丈夫? ダメだろ。子供にしちゃえば大丈夫? だからダメだって、木馬に乗ってくるとこからやり直しだよ。もういいよ。とりあえずローゼの剣捌きがすごすぎて、上手く蝶結びにして脱げなくしたってことにするから。
でもエミリア物言い。難癖つける。
「だめですよローゼさん、そんなことできないでしょ?」
「真面目か‼」
エミリアの猛抗議で蝶結びは取りやめ。レイピアで強引にブリーフを引っ張って、肩に引っ掛ける。
「ハイレグみたいになってるー」エミリア大喜び。
ワナワナ震え出したオントワーンが大絶叫「なんかエローい」
意味分からん。片っぽの乳首が出ているのが良いらしい。さっきまで両方出てたじゃん。
戦線に復帰したエミリアの奮戦もあって、徐々にだが乱れたペースが整っていく。数が多いいだけで、一つ一つはトルネードアタックと変わらない。
🎼アンドゥトロァ アンドゥトロァ ローゼ ひっかけ エミリア 殴る ローゼ ひっかけ エミリア 殴る♪🎼
コツを掴んだエミリアは、鉄丸を正拳突きで打ち返して次々に手下をのしていく。後ろで手を叩いてリズムをとってくれているオントワーンのオ・カ・ゲ。
――て、何やってんの? オントワーン。
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