猫のモモタ

緒方宗谷

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荷物を背負うカニと背負わないカニの話

困ってる。困ってないの裏返し?

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 人間のお家でモモタが寝ていると、羽虫を介してカエルを食べないカニのオオ君に呼び出されました。
 モモタは何事かと思って、次の日に行ってみると、お家の前でオオ君が呆然としています。
 アラモト君もいました。呼び出されたのはモモタだけではないようです。
 アラモト君が言いました。
 「モモタまで呼び出して、まさかまた僕たちにお魚捕ってこいっていうんじゃないだろうな。
  それは居候させている君がしなきゃいけないことだろ。僕たちのすることじゃないよ。
  どうせ君のお家にはたくさんの枯葉を蓄えているんだろ?
  それでも食べさせていろよ」
 そう言われたオオ君は、ため息をついて言いました。
 「もう疲れたよ。
  あのカエル、枯葉なんて食べれないし。
  虫持ってきて、魚持ってきてって、って言うんだ
  お願い、君たちで巣の土を掘って、彼を外に出してよ」
 モモタはびっくりしました。たいそうな大仕事です。
 しかも水にどっぷりと浸からないといけませんでした。
 でも、そんな大変なことしたくありません。
 「もう疲れたよ」オオ君は繰り返します。
 それを遮って、アラモト君が言いました。
 「お引越ししたら? それかお部屋に閉じこもっちゃえばいいじゃない。
  あのカエルが沈んでいられるのは、君があれこれお世話してあげているからだよ。
  君が今の君であり続ける限り、彼も今の彼でい続けるだろうね」
 そう言い残して、アラモト君は去っていきます。
 見送ったモモタは、申し訳なさそうにオオ君を見やりました。
 「ごめんね。僕じゃ役に立たないみたい。
  だって水の中には入れないし、入っても息出来ないもん」
 「するどい爪と牙があるじゃない。
  それで何とか助けておくれよ
  そうだ、その爪と牙をおくれよ。
  そうしないと撲不幸になっちゃうよ。
  それでもいいの?」
 「よくないよ。そうだ、土を掘ってお家を作るお友達を探してみるよ」
 そう言い終わって、モモタはアラモト君を追いかけました。
 オオ君は何も答えませんでしたが、モモタの背中に痛いほどの視線が刺さります。
 モモタが来たのを見やって、アラモト君がいました。
 「凄いこと言っていたね。君の爪と牙をよこせだって?
  僕たちカニには、猫の爪や牙よりも鋭くて大きなハサミが二つもあるっていうのにね、何考えているんだろうね。
  オオ君は枯葉がお好みで、食べるに困ったことないから、望んだものは手に入って当たり前だとでも思っているんだろうね」
 「もしかしたら、愛情を欲しがっているのかもしれないよ」
 そう言ってモモタは思いました。
 だからこそカエルを追い出さないのかな? と。


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