猫のモモタ

緒方宗谷

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荷物を背負うカニと背負わないカニの話

未来は今から決まってる

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 モモタは遊ぶのに夢中で、いつの間にか陽が暮れてしまいました。
 今日はキャンプしよう、と思って、静かに眠れるところを探していると、
「ブクブク、困ったブクブク」
という、不思議な鳴き声が、どこからともなく聞こえてきます。
 モモタは、川の真ん中にあった大きな石の上で、その声の主を見つけたので、声をかけました。
「こんばんは、カニさん。どうしたの?」
「ああ、ちょっと悩み事があってね。
 実は、ずっと前からカエルのイシカワ君が僕のお家に居候しているんだ」
 そう言って、河原の反対側にある土の崖に空いた穴をハサミで指しました。
 「うわ、なんか微笑ましいね。
  姿の違うお友達が一緒におねんねできるなんて、凄いことだよ」
 モモタは、表情をぱぁっと明るくしましたが、それとはうって変わって、カニは暗い表情で言いました。
 「でも、ずっと巣穴の底に沈んでいるんだ。
  全然出てこないし、おしゃべりもしてくれない。
  そばによると、『離れてっ』言うんだ」
 モモタは言いました。
 「いいじゃない。そのうち一緒におねんねできるよ。
  だって世の中には、カニを食べるカエルもいるし、カエルを食べるカニもいるよ。
  それなのに、お互いをごはんにせずに一緒にいられるって、それだけで凄いことだと思うけどなぁ」
 すると、後ろから声がしました。
 「いいもんか。迷惑千万だよ。
  あいつ、彼が優しくてカエルを食べないのをいいことに、居座っちゃってるんだ」
 モモタが振り返ると、別のカニがいました。この子は、カエルを食べるカニのアラモト君でした。
 アラモト君は、続けて言いました。
 「カエルはカエルとして、カエルと過ごさせた方がいいよ。
  早いところ追い出しちゃいな。そうしたら僕が食べてやるさ」
 それを聞いたカエルを食べないカニのオオ君は、悩んでいる様子で、「うーん」と唸ります。
 アラモト君が、更に言いました。
 「今まで一緒に寝起きしてきたんだから、心寂しく思うのは仕方ないけど、いつまでもお家の奥に沈んでいさせる気かい?
  今は我慢のし時だと思うけどね」
 モモタには言っていることが分かりません。オオ君も分からない様子です。
 アラモト君は、付け加えて言いました。
 「今変わらないと、未来は変わらないぜ」
 モモタはようやく気がつきました。
 オオ君の悩みを解決する方法はあるのでしょう。
 ですが、解決できるかできないかは、このオオ君に次第なのです。


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