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モモタとママと虹の架け橋
第百二十二話 受け継いできたもの、受け継いでいくもの
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世界は満天の星に埋め尽くされました。一天に初めて太陽が誕生すると、瞬く間にたくさんの太陽が卒然と姿を現すようになったのです。
それは、自らが太陽になれる、と信じた星々がいたからでした。今まで闇夜の中で独りぽっちでいたがために、信じられなかった輝けるという真実を、顕然(けんぜん)とした真実として見せつけられて、自らも輝けると信じられたからです。
彼らは、自らの才能を白日の下に晒し、大きく見開いたまなこで眼前に見据えていたからこそ、太陽になれたのでした。
星々は様々な色に輝いています。そして終日(ひねもす)やめることはありません。赤色、黄色、青色、その他諸々の色でした。彼らの中に生まれ育った想いの結晶で一番多かった色が、その星の色となったのです。
星々の間に横たわった縹渺(ひょうびょう)とした距離が埋まったわけではありません。ですが、輝きの前でその距離は、無いも等しいものでした。
幸甚(こうじん)たる想いを光に変えて、星々は語り合いました。莫逆の友となり、最愛の者となり、博愛の対象として、光を注ぎ合ったのです。星々は、無限に広がる空の彼方で新しい星が誕生する度に、歓喜の歌を歌い合いました。
飽くことのない熱情がほとばしっていたからなのでしょう。結晶は次第に姿を変えて、鉱石となり、宝石となりました。そればかりか植物となり、魚となって、動物となりました。しかのみならず人ともなりました。ここにあまねく命が生まれ出でたのです。
地中に生まれ出た者は、地の上を。海中に生まれた者は大地を。大地に生まれた者は、空を。空に生まれた者は、雲の彼方に夢を馳せるようになりました。
悠久の時の中で、多くの命が誕生し滅んでいきました。今はなき太古の命もあるでしょう。ですが彼らの想いもまた、進み化す命の営みの中に記憶され受け継がれているのです。そして、その想いは自らが発した光の中に溶け込んで、時空を超えて、未来の誰かへと繋がっていくことでしょう。
一期一会の邂逅(かいこう)を求めて、花は咲き乱れて自らの美しさを誇り、鳥は美しくさえずって愛を謳います。魚は踊るように水を切り、動物たちは舞踏しながら駆け回っています。
宝石や鉱石が地中を彩り太陽を作ったのと同じように、生ま出た生命も、その身を、その声を美しく飾りました。星々は、より一層その美しさを増していったのです。
悠久の時の中で、己が望みさえすればどのようにだって己は変われる、そして世界は変わる、ということを知った星々は、無限に広がる宇宙の中で、多くの星に囲まれながらも唯一無二の存在として、自らを誰かに伝えるために、より一層輝きました。
迂遠(うえん)な様子であったとしても、その綺羅星の如き光の筋は、そこに何かを残し、そして魅かれる誰かを導くのです。オーロラのように。そして出会い繋がった星々が寄りそってできた天の川のように。星の中に萌え出た光の筋は、これほどまでに大きな光の川にもなり得るのです。
可能性が毫(ごう)もなくとも諦めないでください。鹿爪らしい理由をつけて、自らを慰籍(いしゃ)しないでください。
私たち星の上に誕生した生命は、無限に広がる水中に生まれた球状波紋が、縹渺(ひょうびょう)とした大海原を広がっていくような時間と空間の中で、孤独でいることを嘆きつつも諦めなかった星の寸毫(すんごう)の煌めきから生まれたのですから、間違いなく私たちの心もその煌めきを宿し輝けることでしょう。
星々が放ったその熱情は、今なお全ての動植物、そして宝石や鉱物が持ち得る希望の光、夢の結晶として、魂に宿っているのです。
世界が美しいのは、まさにその心の中心で核を成す神秘の結晶があるおかげなのでしょう。そして、その結晶を熟成させて胸の中で膨らませて溢れさせることによって成長し、新しい出会いを追い求めることが出来るのです。
出会いがあって別れがあり、そして再会があるのは、ひとえに花房の一朶(いちだ)のような光の筋が、心に育っているからなのです。
なかずんく自らの想いを信じられた生命は、さらに美しく輝き華やいだ色に心を染めました。それは一朶(いちだ)のみならず、幾本もに増えて梢となり、満開の桜のように世界を彩ることでしょう。
花散るは、移ろいやすい心の象徴として捉えられるかもしれません。ですが吹雪と化した桜の花びらが、どこからともなく舞い込んだ部屋には、まだ見ぬその桜の木に思いを馳せる心が生まれるのです。
世界は出会いと別れ、そして再会を繰り返す中で沸き起こる喜びに満ち満ちています。確かにつらいこともあるでしょう。悲しいこともあるでしょう。ですがそれも一縷の光として紡ぎだし、いつか誰かに伝えるのです。
避けては通れぬ困難も、立ち直れないと思えるほどの挫折も経験するでしょう。ですが、砕けた想いの欠片もまた、希望の宝石として輝いているのです。その中から、一つを拾って温めることができさえすれば、そこには歓喜が生まれるのです。
永遠と思われた暗闇の中で、自分はたった一つだと思えて悲嘆にくれた星たちでさえ、夢と希望を持ち得たのです。何者も越えることの出来ないであろう時間と距離の壁を乗り越え、星々は繋がりました。
星系を作り、星座を作り、銀河を作り、神話を作りって、時空を超えて伝えてきました。全て夢と希望の光を発することで。
ですから、私たちが住むこの星の青く輝く光から生まれた全生命は、将来存在しうる全生命は、人知の及ばぬ遠い未来へさえも、夢と希望を託していけるのです。
ある一瞬において、つらく悲しい出来事でさえも、命の物語を彩る特別な演出だと考えられれば、最後は素晴らしく輝かしい光を伝えることが出来るでしょう。誰もがその光に魅かれ導かれて繋がり、新たな光を生んで広がっていくのです。
挫けて諦めたその先にも光の筋は広がっていって新たな輝きとなる、と信じてみることが出来たなら、素敵ではありませんか?
星であることをやめてしまった星たちは、闇色の暗黒星へと変貌を遂げました。色もなく光も放たない星ですが、彼らとて永遠にそのままとは限りません。今は泣き疲れて眠っているだけかもしれないのです。もしかしたら、今正に夢想しているかもしれないのです。
だとしたら、彼らはいつか輝くでしょう。長い長い膨大な量の時間を経た後、彼らの中から太陽が生まれるかもしれません。みんなが太陽になるかもしれません。
夢破れて砕け散った星々もありましたが、彼らとて砕けた星屑のままとは限らないのです。現に彼らは星雲と化して闇色を美しくぼやかして染め、多くの星々を魅了しているのですから。
彼らが初めにえがいた夢は、実現できなかったのかもしれません。ですが、夢と希望が枯れるまで望み続けてまい進したればこそ、広大な宇宙を染めあげる星雲と化せたのでしょう。望んだ形とは違うかもしれません。ですが計らずも、数多の星々とは違う唯一無二の美しい光を醸し出して、皆と繋がることができたのです。
残った星屑でさえ、星の子として生まれ変わって、新たな星へと成長していくでしょう。ただ、今がその時ではないだけなのです。
喜ばしいこともつらいことも歌に紡ぎ、あまねく命と共に語り継いでいきましょう。
生きとし生ける者は、すべからく出会いを求めて夢想して、まだ見ぬ誰かに懸想(けそう)してほしいものです。
だって、そうして宇宙は、私たちは、誕生したのですから。
それは、自らが太陽になれる、と信じた星々がいたからでした。今まで闇夜の中で独りぽっちでいたがために、信じられなかった輝けるという真実を、顕然(けんぜん)とした真実として見せつけられて、自らも輝けると信じられたからです。
彼らは、自らの才能を白日の下に晒し、大きく見開いたまなこで眼前に見据えていたからこそ、太陽になれたのでした。
星々は様々な色に輝いています。そして終日(ひねもす)やめることはありません。赤色、黄色、青色、その他諸々の色でした。彼らの中に生まれ育った想いの結晶で一番多かった色が、その星の色となったのです。
星々の間に横たわった縹渺(ひょうびょう)とした距離が埋まったわけではありません。ですが、輝きの前でその距離は、無いも等しいものでした。
幸甚(こうじん)たる想いを光に変えて、星々は語り合いました。莫逆の友となり、最愛の者となり、博愛の対象として、光を注ぎ合ったのです。星々は、無限に広がる空の彼方で新しい星が誕生する度に、歓喜の歌を歌い合いました。
飽くことのない熱情がほとばしっていたからなのでしょう。結晶は次第に姿を変えて、鉱石となり、宝石となりました。そればかりか植物となり、魚となって、動物となりました。しかのみならず人ともなりました。ここにあまねく命が生まれ出でたのです。
地中に生まれ出た者は、地の上を。海中に生まれた者は大地を。大地に生まれた者は、空を。空に生まれた者は、雲の彼方に夢を馳せるようになりました。
悠久の時の中で、多くの命が誕生し滅んでいきました。今はなき太古の命もあるでしょう。ですが彼らの想いもまた、進み化す命の営みの中に記憶され受け継がれているのです。そして、その想いは自らが発した光の中に溶け込んで、時空を超えて、未来の誰かへと繋がっていくことでしょう。
一期一会の邂逅(かいこう)を求めて、花は咲き乱れて自らの美しさを誇り、鳥は美しくさえずって愛を謳います。魚は踊るように水を切り、動物たちは舞踏しながら駆け回っています。
宝石や鉱石が地中を彩り太陽を作ったのと同じように、生ま出た生命も、その身を、その声を美しく飾りました。星々は、より一層その美しさを増していったのです。
悠久の時の中で、己が望みさえすればどのようにだって己は変われる、そして世界は変わる、ということを知った星々は、無限に広がる宇宙の中で、多くの星に囲まれながらも唯一無二の存在として、自らを誰かに伝えるために、より一層輝きました。
迂遠(うえん)な様子であったとしても、その綺羅星の如き光の筋は、そこに何かを残し、そして魅かれる誰かを導くのです。オーロラのように。そして出会い繋がった星々が寄りそってできた天の川のように。星の中に萌え出た光の筋は、これほどまでに大きな光の川にもなり得るのです。
可能性が毫(ごう)もなくとも諦めないでください。鹿爪らしい理由をつけて、自らを慰籍(いしゃ)しないでください。
私たち星の上に誕生した生命は、無限に広がる水中に生まれた球状波紋が、縹渺(ひょうびょう)とした大海原を広がっていくような時間と空間の中で、孤独でいることを嘆きつつも諦めなかった星の寸毫(すんごう)の煌めきから生まれたのですから、間違いなく私たちの心もその煌めきを宿し輝けることでしょう。
星々が放ったその熱情は、今なお全ての動植物、そして宝石や鉱物が持ち得る希望の光、夢の結晶として、魂に宿っているのです。
世界が美しいのは、まさにその心の中心で核を成す神秘の結晶があるおかげなのでしょう。そして、その結晶を熟成させて胸の中で膨らませて溢れさせることによって成長し、新しい出会いを追い求めることが出来るのです。
出会いがあって別れがあり、そして再会があるのは、ひとえに花房の一朶(いちだ)のような光の筋が、心に育っているからなのです。
なかずんく自らの想いを信じられた生命は、さらに美しく輝き華やいだ色に心を染めました。それは一朶(いちだ)のみならず、幾本もに増えて梢となり、満開の桜のように世界を彩ることでしょう。
花散るは、移ろいやすい心の象徴として捉えられるかもしれません。ですが吹雪と化した桜の花びらが、どこからともなく舞い込んだ部屋には、まだ見ぬその桜の木に思いを馳せる心が生まれるのです。
世界は出会いと別れ、そして再会を繰り返す中で沸き起こる喜びに満ち満ちています。確かにつらいこともあるでしょう。悲しいこともあるでしょう。ですがそれも一縷の光として紡ぎだし、いつか誰かに伝えるのです。
避けては通れぬ困難も、立ち直れないと思えるほどの挫折も経験するでしょう。ですが、砕けた想いの欠片もまた、希望の宝石として輝いているのです。その中から、一つを拾って温めることができさえすれば、そこには歓喜が生まれるのです。
永遠と思われた暗闇の中で、自分はたった一つだと思えて悲嘆にくれた星たちでさえ、夢と希望を持ち得たのです。何者も越えることの出来ないであろう時間と距離の壁を乗り越え、星々は繋がりました。
星系を作り、星座を作り、銀河を作り、神話を作りって、時空を超えて伝えてきました。全て夢と希望の光を発することで。
ですから、私たちが住むこの星の青く輝く光から生まれた全生命は、将来存在しうる全生命は、人知の及ばぬ遠い未来へさえも、夢と希望を託していけるのです。
ある一瞬において、つらく悲しい出来事でさえも、命の物語を彩る特別な演出だと考えられれば、最後は素晴らしく輝かしい光を伝えることが出来るでしょう。誰もがその光に魅かれ導かれて繋がり、新たな光を生んで広がっていくのです。
挫けて諦めたその先にも光の筋は広がっていって新たな輝きとなる、と信じてみることが出来たなら、素敵ではありませんか?
星であることをやめてしまった星たちは、闇色の暗黒星へと変貌を遂げました。色もなく光も放たない星ですが、彼らとて永遠にそのままとは限りません。今は泣き疲れて眠っているだけかもしれないのです。もしかしたら、今正に夢想しているかもしれないのです。
だとしたら、彼らはいつか輝くでしょう。長い長い膨大な量の時間を経た後、彼らの中から太陽が生まれるかもしれません。みんなが太陽になるかもしれません。
夢破れて砕け散った星々もありましたが、彼らとて砕けた星屑のままとは限らないのです。現に彼らは星雲と化して闇色を美しくぼやかして染め、多くの星々を魅了しているのですから。
彼らが初めにえがいた夢は、実現できなかったのかもしれません。ですが、夢と希望が枯れるまで望み続けてまい進したればこそ、広大な宇宙を染めあげる星雲と化せたのでしょう。望んだ形とは違うかもしれません。ですが計らずも、数多の星々とは違う唯一無二の美しい光を醸し出して、皆と繋がることができたのです。
残った星屑でさえ、星の子として生まれ変わって、新たな星へと成長していくでしょう。ただ、今がその時ではないだけなのです。
喜ばしいこともつらいことも歌に紡ぎ、あまねく命と共に語り継いでいきましょう。
生きとし生ける者は、すべからく出会いを求めて夢想して、まだ見ぬ誰かに懸想(けそう)してほしいものです。
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