469 / 502
モモタとママと虹の架け橋
第百十四話 愛は単純明快、好き好き大好きだけでいい
しおりを挟む
アゲハちゃんが訊きました。
「カンタンは何もしてあげないの?」
「してあげるよ。させてあげるってことをしてあげるんだ」
「なにもしていないじゃない」
カンタンは説明します。
「マリアジュリアおばさんがしてくれた『ジュエリー・マーメイド』ってお話の教訓は、愛されること、愛すること、理解すること、受け入れること、共に歩むこと、でしょ? でも、難しく考え過ぎだよ。全部なんて無理。どれか一つでもいーんじゃない? 真実でもって愛されるだけ。真実でもって愛するだけ。それだけでいんじゃないかなぁ。
僕がアルトゥールだったら、喜んでククルの行きたい場所についていくよ。だって、優しくしてくれるし、ごはんくれるもん。
僕知らなかったな。太陽がサンゴ礁でできているなんて。美味しいお魚がたくさんいるだろうな。南国のお魚もきれいだけど、天空のお魚はもっときれいなんだろうな。ククルは色々な色に輝くウロコだったんでしょ? 普通のお魚もきっとそうだよ。
ワクワクしちゃうな。虹の雫に貰ったお魚もとっても美味しかったけど、もっと美味しいかも」
そう話しながら、カンタンは、まったりと想像に思いを馳せます。
アゲハちゃんが言いました。
「してもらってばっかり。一方的過ぎよ」
「でも、それでククルは幸せそうだよ。幸せならそれでいーじゃない。もちろん、してほしいことを無理にさせるのはいけないことだと思うよ。『愛しているなら出来るでしょ?』なんて愛を鳥質に取ったようなことを言って、自分の都合のいいように相手を扱ったり、騙したりするのはよくないけど。アルトゥールはそんなことしてないよ。
僕も、ククルがしてくれることは嬉しいし、僕が喜べばククルも喜んでくれる。これも真実の愛なんじゃないかな? ククルは愛することを究めて、僕は愛されることを究める。なんか理想だなぁ」
「してもらってばかりで、お返ししないなんてあんまりだわ」やっぱりアゲハちゃんは納得がいきません。腕を組んで、ぷくっと膨れます。
カンタンが笑いました。
「してもらうのがお返しなんだよ。
そもそも、お返しが欲しくてしてあげるなら、それは真実の愛とは言えないよ。下心があるじゃない。しかも、お返しがないからって怒る相手もいるよね。お返しをもらっているのに気に入らなくて怒る相手もいるし。
本当に相手を愛してるなら、愛を注いでる方は注いでいること自体で幸せを感じてるんじゃないかな。
僕だって、大好きな女の子にお魚を捕ってあげようとしてる時は、とても幸せな気持ちになるんだから。あはははは、食べてばかりじゃないんだよ」
モモタが言いました。
「そうだよね。だって僕たちが嵐の中で力尽きて倒れてた時も、僕たちの介抱をしてくれたもの。僕たちはとても助けられたけど、だからってカンタンは、僕たちに見返りを求めなかった」
「僕は、あの時本当に助けたいって思ったんだ。ただそれだけ。しいて言うなら、“ありがとう”って言葉を聞けて、ああ報われたなぁって思った。それが一番嬉しいよ」
そして続けます。
「あの子は、どんなお魚が好きなのかなとか、このお魚は食べるのかなとか、喜んでくれるかなとか、考えてるのが幸せなんだ。
ククルにとって、アルトゥールに何かをしてあげることが幸せだったんだよ」
チュウ太がカンタンに言いました。
「でも、アルトゥールは望まなかったでしょ?」
「うん、だから押し付けなかったでしょ。でも、結局は同じ方向をおんなじ流れで泳いでたから、吹き溜まりでグルグルだったんだよ。
二匹とも、火傷を気にして泳いでたじゃない。でも、火傷がなくたって太陽は太陽だし、軽石は軽石だよ。
お家まで日差しが届かないからなんなの? ウツボは夜のお友達でしょう? 日差しなんか関係ないよ。日差しに当りたければ、軽石の上まで泳いで行けばいいよ。それにアルトゥールは、ハゼにも醜いって言われてて、人魚にも醜いって言われるって言ってたけど、人魚にばかにされて傷つく? 人魚はとってもきれいだよ、男も女も。
モモタだったらどう? ライオンやトラに、「お前は小さい」って馬鹿にされて傷つくの? 同じ猫に言われたら傷つくかもしれないけど、ライオンだよ? 何とも思わないでしょ。だって違いすぎるもの。
だから、四の五の言わずに『ククルちゃ~ん、ありがとー』ってハグすればいいじゃない」
カンタンは、縷々と話し続けます。
「天空に行くと不幸になるから、海から動きたくないって言ってたけど、結局は不幸だったんでしょ? だったら行っても行かなくても変わらないじゃない。おんなじなら行ってみようよ。まだ見ぬ空へ」
同じ鳥同士理解しあえると思ったのか、カンタンはキキを見つめました。キキも、鳥として大切な何かを視線で返したようです。
カンタンがみんなを見渡して続けます。
「だから、ついていっちゃえばよかったのに。人魚の家族だってよくしてくれるよ。そしたらお魚いっぱいだぁ」
モモタは言いました。
「なんか分かる。僕も小さい頃思ったもの。ずっとご主人様の祐ちゃんのお家の中で遊んでたけど、お外があることを知って、恐る恐る出てみたんだ。初めはおっかなびっくりだったけど、お外はとても楽しいことで溢れていたよ。
赤ちゃんの頃、世界は祐ちゃんのお家が全てだったけど、屋根に上れるようになって、もっと広い世界が塀の向こうに広がっているんだって知ったんだ。
ある時、お庭の木に渡り鳥さんがお泊りした時に、紅葉に彩られた山や、煌めく海のお話を聞かせてくれたの。僕には翼がないから、遠くへお出かけすることなんて考えたこともなかったけど、僕にもできるよって励ましてくれたんだ。
初めてお外に出た時は、とても怖い目に遭うよって思っていたけど、怖い目になんてほとんど会わなかった。つらい思いをしたことはあるけど、今振り返ったらいい思い出。
カンタンの言う通り、心持ちなのかも」
気持ちに時間はないのですね。もしかしたら、裏も表もないのかもしれません。起こった事象が心のどこら辺に触れるかによるのでしょうか。逆に、心が発する光が、どのように目の前に起こった事象を照らすのかによるのかもしれません。
「カンタンは何もしてあげないの?」
「してあげるよ。させてあげるってことをしてあげるんだ」
「なにもしていないじゃない」
カンタンは説明します。
「マリアジュリアおばさんがしてくれた『ジュエリー・マーメイド』ってお話の教訓は、愛されること、愛すること、理解すること、受け入れること、共に歩むこと、でしょ? でも、難しく考え過ぎだよ。全部なんて無理。どれか一つでもいーんじゃない? 真実でもって愛されるだけ。真実でもって愛するだけ。それだけでいんじゃないかなぁ。
僕がアルトゥールだったら、喜んでククルの行きたい場所についていくよ。だって、優しくしてくれるし、ごはんくれるもん。
僕知らなかったな。太陽がサンゴ礁でできているなんて。美味しいお魚がたくさんいるだろうな。南国のお魚もきれいだけど、天空のお魚はもっときれいなんだろうな。ククルは色々な色に輝くウロコだったんでしょ? 普通のお魚もきっとそうだよ。
ワクワクしちゃうな。虹の雫に貰ったお魚もとっても美味しかったけど、もっと美味しいかも」
そう話しながら、カンタンは、まったりと想像に思いを馳せます。
アゲハちゃんが言いました。
「してもらってばっかり。一方的過ぎよ」
「でも、それでククルは幸せそうだよ。幸せならそれでいーじゃない。もちろん、してほしいことを無理にさせるのはいけないことだと思うよ。『愛しているなら出来るでしょ?』なんて愛を鳥質に取ったようなことを言って、自分の都合のいいように相手を扱ったり、騙したりするのはよくないけど。アルトゥールはそんなことしてないよ。
僕も、ククルがしてくれることは嬉しいし、僕が喜べばククルも喜んでくれる。これも真実の愛なんじゃないかな? ククルは愛することを究めて、僕は愛されることを究める。なんか理想だなぁ」
「してもらってばかりで、お返ししないなんてあんまりだわ」やっぱりアゲハちゃんは納得がいきません。腕を組んで、ぷくっと膨れます。
カンタンが笑いました。
「してもらうのがお返しなんだよ。
そもそも、お返しが欲しくてしてあげるなら、それは真実の愛とは言えないよ。下心があるじゃない。しかも、お返しがないからって怒る相手もいるよね。お返しをもらっているのに気に入らなくて怒る相手もいるし。
本当に相手を愛してるなら、愛を注いでる方は注いでいること自体で幸せを感じてるんじゃないかな。
僕だって、大好きな女の子にお魚を捕ってあげようとしてる時は、とても幸せな気持ちになるんだから。あはははは、食べてばかりじゃないんだよ」
モモタが言いました。
「そうだよね。だって僕たちが嵐の中で力尽きて倒れてた時も、僕たちの介抱をしてくれたもの。僕たちはとても助けられたけど、だからってカンタンは、僕たちに見返りを求めなかった」
「僕は、あの時本当に助けたいって思ったんだ。ただそれだけ。しいて言うなら、“ありがとう”って言葉を聞けて、ああ報われたなぁって思った。それが一番嬉しいよ」
そして続けます。
「あの子は、どんなお魚が好きなのかなとか、このお魚は食べるのかなとか、喜んでくれるかなとか、考えてるのが幸せなんだ。
ククルにとって、アルトゥールに何かをしてあげることが幸せだったんだよ」
チュウ太がカンタンに言いました。
「でも、アルトゥールは望まなかったでしょ?」
「うん、だから押し付けなかったでしょ。でも、結局は同じ方向をおんなじ流れで泳いでたから、吹き溜まりでグルグルだったんだよ。
二匹とも、火傷を気にして泳いでたじゃない。でも、火傷がなくたって太陽は太陽だし、軽石は軽石だよ。
お家まで日差しが届かないからなんなの? ウツボは夜のお友達でしょう? 日差しなんか関係ないよ。日差しに当りたければ、軽石の上まで泳いで行けばいいよ。それにアルトゥールは、ハゼにも醜いって言われてて、人魚にも醜いって言われるって言ってたけど、人魚にばかにされて傷つく? 人魚はとってもきれいだよ、男も女も。
モモタだったらどう? ライオンやトラに、「お前は小さい」って馬鹿にされて傷つくの? 同じ猫に言われたら傷つくかもしれないけど、ライオンだよ? 何とも思わないでしょ。だって違いすぎるもの。
だから、四の五の言わずに『ククルちゃ~ん、ありがとー』ってハグすればいいじゃない」
カンタンは、縷々と話し続けます。
「天空に行くと不幸になるから、海から動きたくないって言ってたけど、結局は不幸だったんでしょ? だったら行っても行かなくても変わらないじゃない。おんなじなら行ってみようよ。まだ見ぬ空へ」
同じ鳥同士理解しあえると思ったのか、カンタンはキキを見つめました。キキも、鳥として大切な何かを視線で返したようです。
カンタンがみんなを見渡して続けます。
「だから、ついていっちゃえばよかったのに。人魚の家族だってよくしてくれるよ。そしたらお魚いっぱいだぁ」
モモタは言いました。
「なんか分かる。僕も小さい頃思ったもの。ずっとご主人様の祐ちゃんのお家の中で遊んでたけど、お外があることを知って、恐る恐る出てみたんだ。初めはおっかなびっくりだったけど、お外はとても楽しいことで溢れていたよ。
赤ちゃんの頃、世界は祐ちゃんのお家が全てだったけど、屋根に上れるようになって、もっと広い世界が塀の向こうに広がっているんだって知ったんだ。
ある時、お庭の木に渡り鳥さんがお泊りした時に、紅葉に彩られた山や、煌めく海のお話を聞かせてくれたの。僕には翼がないから、遠くへお出かけすることなんて考えたこともなかったけど、僕にもできるよって励ましてくれたんだ。
初めてお外に出た時は、とても怖い目に遭うよって思っていたけど、怖い目になんてほとんど会わなかった。つらい思いをしたことはあるけど、今振り返ったらいい思い出。
カンタンの言う通り、心持ちなのかも」
気持ちに時間はないのですね。もしかしたら、裏も表もないのかもしれません。起こった事象が心のどこら辺に触れるかによるのでしょうか。逆に、心が発する光が、どのように目の前に起こった事象を照らすのかによるのかもしれません。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
おなら、おもっきり出したいよね
魚口ホワホワ
児童書・童話
ぼくの名前は、出男(でるお)、おじいちゃんが、世界に出て行く男になるようにと、つけられたみたい。
でも、ぼくの場合は、違うもの出ちゃうのさ、それは『おなら』すぐしたくなっちゃんだ。
そんなある日、『おならの妖精ププ』に出会い、おならの意味や大切さを教えてもらったのさ。
やっぱり、おならは、おもっきり出したいよね。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)
にきの奇怪な間話
葉野亜依
児童書・童話
十三歳の夏休み。久しぶりに祖母の家へと訪れた少年・にきは、突然奇怪なモノ――所謂あやかしが見えるようになってしまった。
彼らの言動に突っ込みつつ、彼らの存在を受け入れつつ、それでも毎日振り回されてばかり。
小鬼や動き出す欄間、河童に喋る吐水龍、更には狐憑きの女の子も現れて……。
普通の少年と奇怪なモノたちによる、ひと夏の日常あやかし話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる