470 / 505
モモタとママと虹の架け橋
第百十二話 カンタン航空
しおりを挟む
モモタたちは、クジラのシトの背中に乗って、再び屋久杉が生い茂る島へと戻ってきました。
遠くに見える島を見ながら、チュウ太がモモタに言いました。
「ついこの間ここにいたのに、もう何年も過ぎたように感じるね」
「うん、さっちゃんがおばあちゃんになってたりして」
みんなで笑います。
モモタたちが島の沖合で待っていると、ペリカンのカンタンがやってきました。
「やあ、久しぶり。虹の雫は手に入ったかい?」
「ううん」と答えたモモタは、頭にいるアゲハちゃんを見て、と促すように、視線を上げます。
モモタの頭の上で、アゲハちゃんが自慢げに花粉のクッションを見せてあげました。
チュウ太がカンタンに言いました。
「虹の雫は無かったんだよ」
「なんだぁ、残念だな」
自分のことのようにしょんぼりするその姿を見て、モモタが笑います。
「でも、不思議な体験をしたんだ。人魚とイルカとジュゴンとサメの歌劇を見たんだよ」
「歌劇? オペラのこと? ミュージカルのこと?」
カンタンに問われましたが、みんな分かりません。そもそも歌劇がなにかも分かりません。みんなで顔を見合わせます。
モモタたちから、サンゴ山での出来事を聞き終ったカンタンは言いました。
「僕が知っている虹の雫は、ここから東に行ったところにあるんだ。小さな島のほこらに祀られてるだよ」
キキが訊きました。
「祀られてる? カンタンは虹の雫の場所も知っているの?」
「うん、格子状に組まれた木でできている扉の奥で、まあるい鏡の前に置かれた小さなお座布団に乗せられているよ」
「願いが叶う不思議な雫なのに、隠しもしないのか」キキは訝しげです。
「知らないんじゃないかな」とチュウ太。
カンタンが言いました。
「必要ないんだよ。だって人間は何でもできるもの。羽もないのにお空を飛べるし、遠くにいても誰がどこにいるか分かるんだ」
みんな驚きます。アゲハちゃんが、どうして分かるのか訊きました。
すると、カンタンは首を傾げます。
「知らない。でも、でも僕の友達のペリカンは、黒いネックレスをプレゼントされるほど好かれているよ。優しそうなおじさんがよく遊びにくるって言ってた」
モモタは思いました。(そう言えば、僕が押入れの中でお昼寝していたり、こたつの中にいたりしても、祐ちゃんはすぐに僕を見つけてくれるんだ)
カンタンが続けます。
「ここから随分と遠いから、屋久杉の島で休んでいくといいよ。クジラたちもうんとごはんを食べておいたほうがいいしね」
すると、クジラのお父さんが言いました。
「申し訳ない。私たちは、ここまでしか案内出来ないんだ。実はもともと親戚の家族のところに遊びに行く予定があってね。彼らは今、サンゴ山からもっと南西のほうにいるから、これ以上モモタたちを送ってあげることは出来ないんだよ」
シンタが言います。
「ごめんね。でも東に戻るなら近くに鹿児島があるからそこまでは連れていってあげる。そこから歩いていけば東に行けるから」
「そうかぁ」モモタは残念そうです。
カンタンが言いました。
「参ったなぁ。絶海の孤島なんだ。クジラに運んでもらえないとなると、行くのは無理かも」
「お船は?」とアゲハちゃんが提案です。
「うーん」とカンタン悩みます。「僕は飛んでいって、簡単にお船に乗れるけど、モモタたちは港から乗らないといけないよ。乗せてくれるかなぁ。そもそも、その島に行くお船があるか分からないよ。もしあってもどのお船か分からないし」
八方塞になってしまいました。
しばらく悩んでいると、カンタンが「そうだ!」と叫びます。「僕のお口に乗っていけば、なんとか飛んで連れていってあげられるよ」
チュウ太がすごいドン引き具合で言いました。
「マジ? 『本気』と書いてマジ?」
「マジマジ大『本気』」カンタンが笑います。
モモタも怯えました。
「食べたりしない?」
「食べないよ。お空を飛べる機会なんて、めったにないよ」
カンタンがそう言うと、アゲハちゃんも誘ってきます。
「そうよ。モモちゃんたちはお翅がないんだし、わたしが知っている限り、お空を飛ぼうと思ったら、オオワシ親父にお願いするしかないわ。食べられちゃうけど。あはははは」
「笑い事じゃないよ」とチュウ太がアゲハちゃんにつっこみます。
「大丈夫よ。カンタンはお魚しか食べないみたいだし」
「そのお魚が僕より大きいんだよ。心配だなぁ」
「臆病なんだから」
「じゃあ、アゲハちゃんも一緒にカンタンのお口をエンジョイしようよ」
「遠慮するわ。間違って飲みこまれたら困るもの」
「いや…それ僕もだよ」
「僕を信じてよ。お空を飛ぶのは気持ちいいんだよ」とカンタンが言いました。
どうも決心がつかないチュウ太が、モモタを見やります。
モモタは言いました。
「なんかハラハラドキドキ期待させて、ムシャムシャごっくんなんてことないよね?…誰とは言わないけれど、僕そう言うお友達知ってるんだ・・・」
「誰かしら?」と、アゲハちゃんはクエッションマーク。チュウ太と顔を見合わせます。チュウ太は知らない、というジェスチャーで応えました。
キキが「おかしなタヌキじゃないの?」と一言言います。
「あはははは」モモタは笑うばかりで答えません。
「ああ~(笑)」とアゲハちゃん。なんか納得です。
チュウ太の頭の上に、大きなはてなが浮かび上がりました。チュウ太は村のお友だちですから、山に住んでいるおかしなタヌキには会ったことがないのですね。
遠くに見える島を見ながら、チュウ太がモモタに言いました。
「ついこの間ここにいたのに、もう何年も過ぎたように感じるね」
「うん、さっちゃんがおばあちゃんになってたりして」
みんなで笑います。
モモタたちが島の沖合で待っていると、ペリカンのカンタンがやってきました。
「やあ、久しぶり。虹の雫は手に入ったかい?」
「ううん」と答えたモモタは、頭にいるアゲハちゃんを見て、と促すように、視線を上げます。
モモタの頭の上で、アゲハちゃんが自慢げに花粉のクッションを見せてあげました。
チュウ太がカンタンに言いました。
「虹の雫は無かったんだよ」
「なんだぁ、残念だな」
自分のことのようにしょんぼりするその姿を見て、モモタが笑います。
「でも、不思議な体験をしたんだ。人魚とイルカとジュゴンとサメの歌劇を見たんだよ」
「歌劇? オペラのこと? ミュージカルのこと?」
カンタンに問われましたが、みんな分かりません。そもそも歌劇がなにかも分かりません。みんなで顔を見合わせます。
モモタたちから、サンゴ山での出来事を聞き終ったカンタンは言いました。
「僕が知っている虹の雫は、ここから東に行ったところにあるんだ。小さな島のほこらに祀られてるだよ」
キキが訊きました。
「祀られてる? カンタンは虹の雫の場所も知っているの?」
「うん、格子状に組まれた木でできている扉の奥で、まあるい鏡の前に置かれた小さなお座布団に乗せられているよ」
「願いが叶う不思議な雫なのに、隠しもしないのか」キキは訝しげです。
「知らないんじゃないかな」とチュウ太。
カンタンが言いました。
「必要ないんだよ。だって人間は何でもできるもの。羽もないのにお空を飛べるし、遠くにいても誰がどこにいるか分かるんだ」
みんな驚きます。アゲハちゃんが、どうして分かるのか訊きました。
すると、カンタンは首を傾げます。
「知らない。でも、でも僕の友達のペリカンは、黒いネックレスをプレゼントされるほど好かれているよ。優しそうなおじさんがよく遊びにくるって言ってた」
モモタは思いました。(そう言えば、僕が押入れの中でお昼寝していたり、こたつの中にいたりしても、祐ちゃんはすぐに僕を見つけてくれるんだ)
カンタンが続けます。
「ここから随分と遠いから、屋久杉の島で休んでいくといいよ。クジラたちもうんとごはんを食べておいたほうがいいしね」
すると、クジラのお父さんが言いました。
「申し訳ない。私たちは、ここまでしか案内出来ないんだ。実はもともと親戚の家族のところに遊びに行く予定があってね。彼らは今、サンゴ山からもっと南西のほうにいるから、これ以上モモタたちを送ってあげることは出来ないんだよ」
シンタが言います。
「ごめんね。でも東に戻るなら近くに鹿児島があるからそこまでは連れていってあげる。そこから歩いていけば東に行けるから」
「そうかぁ」モモタは残念そうです。
カンタンが言いました。
「参ったなぁ。絶海の孤島なんだ。クジラに運んでもらえないとなると、行くのは無理かも」
「お船は?」とアゲハちゃんが提案です。
「うーん」とカンタン悩みます。「僕は飛んでいって、簡単にお船に乗れるけど、モモタたちは港から乗らないといけないよ。乗せてくれるかなぁ。そもそも、その島に行くお船があるか分からないよ。もしあってもどのお船か分からないし」
八方塞になってしまいました。
しばらく悩んでいると、カンタンが「そうだ!」と叫びます。「僕のお口に乗っていけば、なんとか飛んで連れていってあげられるよ」
チュウ太がすごいドン引き具合で言いました。
「マジ? 『本気』と書いてマジ?」
「マジマジ大『本気』」カンタンが笑います。
モモタも怯えました。
「食べたりしない?」
「食べないよ。お空を飛べる機会なんて、めったにないよ」
カンタンがそう言うと、アゲハちゃんも誘ってきます。
「そうよ。モモちゃんたちはお翅がないんだし、わたしが知っている限り、お空を飛ぼうと思ったら、オオワシ親父にお願いするしかないわ。食べられちゃうけど。あはははは」
「笑い事じゃないよ」とチュウ太がアゲハちゃんにつっこみます。
「大丈夫よ。カンタンはお魚しか食べないみたいだし」
「そのお魚が僕より大きいんだよ。心配だなぁ」
「臆病なんだから」
「じゃあ、アゲハちゃんも一緒にカンタンのお口をエンジョイしようよ」
「遠慮するわ。間違って飲みこまれたら困るもの」
「いや…それ僕もだよ」
「僕を信じてよ。お空を飛ぶのは気持ちいいんだよ」とカンタンが言いました。
どうも決心がつかないチュウ太が、モモタを見やります。
モモタは言いました。
「なんかハラハラドキドキ期待させて、ムシャムシャごっくんなんてことないよね?…誰とは言わないけれど、僕そう言うお友達知ってるんだ・・・」
「誰かしら?」と、アゲハちゃんはクエッションマーク。チュウ太と顔を見合わせます。チュウ太は知らない、というジェスチャーで応えました。
キキが「おかしなタヌキじゃないの?」と一言言います。
「あはははは」モモタは笑うばかりで答えません。
「ああ~(笑)」とアゲハちゃん。なんか納得です。
チュウ太の頭の上に、大きなはてなが浮かび上がりました。チュウ太は村のお友だちですから、山に住んでいるおかしなタヌキには会ったことがないのですね。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる