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モモタとママと虹の架け橋
第九十六話 擾乱横丁
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第四景 応援する者たち
(イルカとジュゴンを取り囲んで泳ぎ回るサメ。
狂乱索餌の如きの様相を呈している)
様々なサメたち
「凶暴」「残虐」「嚀猛」「凄絶」「酸鼻」「惨烈」
(唱和)
「凶暴、残虐、嚀猛、
凄絶、酸鼻、惨烈」
「凶暴、残虐、嚀猛、凄絶、酸鼻、惨烈」
「凶暴、残虐、嚀猛、凄絶、酸鼻、
惨烈」
シルチ (オーサンにいだかれながら)
「ああ、どうしましょう、
このままではみんなが食べられてしまうわ」
オーサン「みんな、早く逃げるんだ、相手は六匹、
他のサメは数にはならない」
ジュゴンの家臣たち
(合唱)
「なにを言うのかこのイルカは。
お前が姫を惑わせるが因果」
イルカの家臣たち
「たぶらかせたのはジュゴンのほうだ。
まずはお前たちが食われればいい」
オーサン(飛び出して、タッチューに突撃)
「なにをしているんだイルカたち、今戦えるのは僕たちだけだ、
いや僕たちだから戦えるんだ。
ジュゴンの泳ぎでは頑張っても、サメから逃れること叶わない。
だが僕たちの泳ぎであれば、何倍も早いのだから――」
シルチ (逃げまどいながら)
「ああ、オーサン様」
オーサン(シルチのもとに泳いでいって)
「シルチ!」
イルカの家臣たち
(合唱)
「我らだけなら、全員無傷で、全員無傷で、逃げ切れるというもの。
なぜにジュゴンを助けるために、殿下は戦えとおっしゃるか」
ジュゴンの家臣たち
(合唱)
「なんと道徳なき者たちか、困る者を放って逃げ腐るとは、
シルチ様、シルチ様、このようなのです、イルカの本性、
ならばその王子とて、中身は皆と同じでしょう」
シルチ 「(ジュゴンの家臣に向かって)
なにを見ているのですか、真実を見なさい。
今あなた方が、食べられずに生きていられるは、
誰のおかげか考えなさい。
今正にわたしを奪い去ろうと傲慢に、迫ってくる牙の先から、
この身を守るは、誰のひれか、よく目を見開き、
網膜に映しなさい」
オーサン「しかしこれでは、らちが明かない、
僕一頭では到底皆を助けきれない」
シルチ 「ああ、オーサン様、
そんなこと、おっしゃらないで一言も。
諦めないで、だって方法は、まだ一つ残っているのですから」
(オーサンのひれから離れて漂う)
タッチュー
(無抵抗なシルチにくらいつこうと迫る)
オーサン「シルチー」
(急いで泳いで助けにいくが間に合わない)
イルカとジュゴン全員
(目を背ける)
(同時にキキとマンタと、アゲハちゃんとチム、ジンベイザメのチュウ太が現れる)
(タッチューが起こした波の波動が皆に伝わる)
(一同沈黙)
オーサン(シルチに向かって目を見開いている)
キキ
(マンタと共にシルチとタッチューの間に入る)
「お待たせオーサン」
一同
(キキのほうを見る)
アゲハちゃん
(チュウ太と共に、みんなの頭上を旋回しながら)
「お待たせしました、シルチ様」
キキ 「マンタを呼びに行っていたんだ、そばでバカンスしていたからね。
こんなことになるんじゃないかと心配してね」
マンタ 「ケンカはやめな、みっともないよ。
それでもやるっていうのなら、僕のしっぽの先が、
停戦のための境を引いてあげよう。
もしこの一線を超えると言うなら、
苛烈なビンタをお見舞いしよう、僕の必殺平ひれ打ちを」
アゲハちゃん
「わたしはジンベイザメのチュウ太を呼びに行っていたの」
(皆が見上げるチュウ太の姿は、実際ネズミのように小さい。
だが、その身から発するオーラは、誰にも負けない巨大さと優しさをみんなに感じさせて、一同感嘆する)
チュウ太「やっと登場、主役級、みんな見惚れてくれよほんとに」
キキ 「ここへと戻ってくる途中に、ジュゴンのアゲハちゃんと会ったのさ」
アゲハちゃん
「国王陛下は、既に姫が、
フカの谷に向かっているのをご存じでいました。
ですがここにはホオジロザメがたくさん住んでいますから、
誰かが食べられてしまうかも。
それで助けを乞おうと、このわたしたちを
チュウ太のところに頼みに使わして、急いで行っていたのです」
チュウ太
(ジュゴンに向かって)
「さあさ、僕のそばにみんなでよって、僕と一緒だったら安全だ。
周りをマンタが泳いでくれれば、ホオジロザメでも破れない」
キキ 「それでもなお襲いくるなら、僕が相手をしてあげよう」
タッチュー
「蹴散らせ、高が三匹じゃないか、俺たちのほうが数がいるんだ」
(さまざまなサメたちは動かない)
ガッパイ「お前らそれでもフカの谷に、住みつく力のある者たちか」
ワタブー「お前らの、その口に生えた牙は、本当に牙か?」
甲高い声のサメ
「勘弁してくれ、兄貴たち、俺たちゃあんたらが言う通り、
雑魚なのさ」
ひねたサメ
「いくらなんでもマンタなんかに、
嚙みつこうものなら、ひっぱたかれてあの世行き」
さまざまなサメ
(合唱)
「(チュウ太に向かって)しかもあの小さく見えなくもない体から、
発せられるは巨魁な力、小さく見えるは錯覚だ」
チュウ太「小さいなんて勘違いっっ」
オーサン「さあ今の内に抜けるんだ、このフカの谷から抜けるんだ」
シルチ 「ですがどこに向かうというのです?
サンゴ礁では迎えないでしょう、
わたしのことなど迎えないでしょう」
オーサン「だからどこか遠くに行くのさ、誰もが追いつけないどこか遠くに」
(オーサンとシルチは上手からはけ、イルカ王とジュゴン王がそれを追いかける。
他のみんなは下手にはける)
(イルカとジュゴンを取り囲んで泳ぎ回るサメ。
狂乱索餌の如きの様相を呈している)
様々なサメたち
「凶暴」「残虐」「嚀猛」「凄絶」「酸鼻」「惨烈」
(唱和)
「凶暴、残虐、嚀猛、
凄絶、酸鼻、惨烈」
「凶暴、残虐、嚀猛、凄絶、酸鼻、惨烈」
「凶暴、残虐、嚀猛、凄絶、酸鼻、
惨烈」
シルチ (オーサンにいだかれながら)
「ああ、どうしましょう、
このままではみんなが食べられてしまうわ」
オーサン「みんな、早く逃げるんだ、相手は六匹、
他のサメは数にはならない」
ジュゴンの家臣たち
(合唱)
「なにを言うのかこのイルカは。
お前が姫を惑わせるが因果」
イルカの家臣たち
「たぶらかせたのはジュゴンのほうだ。
まずはお前たちが食われればいい」
オーサン(飛び出して、タッチューに突撃)
「なにをしているんだイルカたち、今戦えるのは僕たちだけだ、
いや僕たちだから戦えるんだ。
ジュゴンの泳ぎでは頑張っても、サメから逃れること叶わない。
だが僕たちの泳ぎであれば、何倍も早いのだから――」
シルチ (逃げまどいながら)
「ああ、オーサン様」
オーサン(シルチのもとに泳いでいって)
「シルチ!」
イルカの家臣たち
(合唱)
「我らだけなら、全員無傷で、全員無傷で、逃げ切れるというもの。
なぜにジュゴンを助けるために、殿下は戦えとおっしゃるか」
ジュゴンの家臣たち
(合唱)
「なんと道徳なき者たちか、困る者を放って逃げ腐るとは、
シルチ様、シルチ様、このようなのです、イルカの本性、
ならばその王子とて、中身は皆と同じでしょう」
シルチ 「(ジュゴンの家臣に向かって)
なにを見ているのですか、真実を見なさい。
今あなた方が、食べられずに生きていられるは、
誰のおかげか考えなさい。
今正にわたしを奪い去ろうと傲慢に、迫ってくる牙の先から、
この身を守るは、誰のひれか、よく目を見開き、
網膜に映しなさい」
オーサン「しかしこれでは、らちが明かない、
僕一頭では到底皆を助けきれない」
シルチ 「ああ、オーサン様、
そんなこと、おっしゃらないで一言も。
諦めないで、だって方法は、まだ一つ残っているのですから」
(オーサンのひれから離れて漂う)
タッチュー
(無抵抗なシルチにくらいつこうと迫る)
オーサン「シルチー」
(急いで泳いで助けにいくが間に合わない)
イルカとジュゴン全員
(目を背ける)
(同時にキキとマンタと、アゲハちゃんとチム、ジンベイザメのチュウ太が現れる)
(タッチューが起こした波の波動が皆に伝わる)
(一同沈黙)
オーサン(シルチに向かって目を見開いている)
キキ
(マンタと共にシルチとタッチューの間に入る)
「お待たせオーサン」
一同
(キキのほうを見る)
アゲハちゃん
(チュウ太と共に、みんなの頭上を旋回しながら)
「お待たせしました、シルチ様」
キキ 「マンタを呼びに行っていたんだ、そばでバカンスしていたからね。
こんなことになるんじゃないかと心配してね」
マンタ 「ケンカはやめな、みっともないよ。
それでもやるっていうのなら、僕のしっぽの先が、
停戦のための境を引いてあげよう。
もしこの一線を超えると言うなら、
苛烈なビンタをお見舞いしよう、僕の必殺平ひれ打ちを」
アゲハちゃん
「わたしはジンベイザメのチュウ太を呼びに行っていたの」
(皆が見上げるチュウ太の姿は、実際ネズミのように小さい。
だが、その身から発するオーラは、誰にも負けない巨大さと優しさをみんなに感じさせて、一同感嘆する)
チュウ太「やっと登場、主役級、みんな見惚れてくれよほんとに」
キキ 「ここへと戻ってくる途中に、ジュゴンのアゲハちゃんと会ったのさ」
アゲハちゃん
「国王陛下は、既に姫が、
フカの谷に向かっているのをご存じでいました。
ですがここにはホオジロザメがたくさん住んでいますから、
誰かが食べられてしまうかも。
それで助けを乞おうと、このわたしたちを
チュウ太のところに頼みに使わして、急いで行っていたのです」
チュウ太
(ジュゴンに向かって)
「さあさ、僕のそばにみんなでよって、僕と一緒だったら安全だ。
周りをマンタが泳いでくれれば、ホオジロザメでも破れない」
キキ 「それでもなお襲いくるなら、僕が相手をしてあげよう」
タッチュー
「蹴散らせ、高が三匹じゃないか、俺たちのほうが数がいるんだ」
(さまざまなサメたちは動かない)
ガッパイ「お前らそれでもフカの谷に、住みつく力のある者たちか」
ワタブー「お前らの、その口に生えた牙は、本当に牙か?」
甲高い声のサメ
「勘弁してくれ、兄貴たち、俺たちゃあんたらが言う通り、
雑魚なのさ」
ひねたサメ
「いくらなんでもマンタなんかに、
嚙みつこうものなら、ひっぱたかれてあの世行き」
さまざまなサメ
(合唱)
「(チュウ太に向かって)しかもあの小さく見えなくもない体から、
発せられるは巨魁な力、小さく見えるは錯覚だ」
チュウ太「小さいなんて勘違いっっ」
オーサン「さあ今の内に抜けるんだ、このフカの谷から抜けるんだ」
シルチ 「ですがどこに向かうというのです?
サンゴ礁では迎えないでしょう、
わたしのことなど迎えないでしょう」
オーサン「だからどこか遠くに行くのさ、誰もが追いつけないどこか遠くに」
(オーサンとシルチは上手からはけ、イルカ王とジュゴン王がそれを追いかける。
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