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モモタとママと虹の架け橋
第十九話 言葉に気持ちを込めるって、とっても大切
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随分と押し問答が続いたあと、ふと千夏ちゃんは気がつきました。
「あ、もしかしたらあの鳥かしら」
以前テレビで見た駅前のヒョロッとした鳥。千夏ちゃんは、ひじを曲げてわきを締め、上げた手のひらの甲を上に向けて指先を外に伸ばし、指をバラバラに動かしながら、その鳥のまねをして、「ぎゃぎゃぎゃっ」と鳴きました。
「そうそうそう、その鳥だ~!」
万歳したオオタカに千夏ちゃんビックリ、反対側の隅っこに飛びのいて、「食べないでぇ~」と泣き叫びます。
逃げた千夏ちゃんをチュウ太が「チューチュー」追いかけまわして、それをやめさせるためにモモタが「にゃあにゃあ」追いかけまわし、よけいに大騒ぎ。
モモタは、なんとかチュウ太を捕まえて、窓まで駆けていって、外にほっぽり出しました。そして振り返り、千夏ちゃんが落ち着くのを待ちます。そして、しばらくしてようやく落ち着いた千夏ちゃんを、窓の外に招くように見つめ上げました。
恐る恐るモモタに近づく千夏ちゃんが言いました。
「その鳥がいるの?」
するとモモタが「んにゃーん」と鳴いて、少し開いた窓から外にすり抜けました。
お姉さんは、急いで灰色のちびパーカーとインディコ・デニムに着替え、外に出てモモタを探します。モモタは少し離れたところから、千夏ちゃんを見つめていました。
千夏ちゃんが駆けてついてくるのを確認しながら、モモタは小走りで青い屋根のアパートに向かいます。
ミゾゴイが閉じ込められているアパートに辿り着くと、モモタは、千夏ちゃんにすがりよりました。
千夏ちゃんは、モモタを抱き上げて言いました。
「このアパートのどこかにとまっているのかしら?」
アパートの周りを一周まわって庭木も見るけれど、ミゾゴイなんてどこにもいません。千夏ちゃんは、ぞろぞろついてくるみんなを引き連れて、もう一周まわります。ですがやっぱりどこにも見当たりません。
「お家の中だよ」モモタが千夏ちゃんの胸の中から飛び降りて、ベランダの窓に呼び寄せます。
千夏ちゃんもやってきて、少し離れたところから窓を見やりますが、カーテンが閉まっていて中が見えません。
部屋の明かりはついているので、誰かがいるはずです。中の人に気がつかれて、変に思われるといけないのでしょう。千夏ちゃんは、あまりそばには寄ってはくれません。
チュウ太が言いました。
「何で部屋に乱入しないんだよ。人間の力なら、窓ガラスなんて簡単にパリンと破れるだろう?」
すると、キキが言いました。
「人間は野生じゃないから、そんなことしないよ。それに人間は王者じゃないから、僕みたいには出来ないさ」
ちょっと自慢気です。
だいぶ悩んだ様子の千夏ちゃんが、行ったり来たりしながら、窓を見ています。
「モモにゃん、ここ人のお家だから、わたしここでは遊べないの、ごめんね」
そう言って、千夏ちゃんは帰ろうとします。
モモタたちは、必死に鳴いてひきとめますが、千夏ちゃんは、申し訳なさそうにバイバイと手を振って歩いていってしましました。
「そうだ」とモモタは窓に向かって、大きな声で叫ぶように言いました。すると、中のミゾゴイが、「助けてー! たーすーけーてー!」と、大声をだしました。
「ぐげぇー! ぐげーぐげーぐげーぐげー」という鳴き声が聞こえた千夏ちゃんは、アパートの方を振り返って、鳴き声のする窓へと駆け寄ります。
そして、「いるんだ、やっぱり・・・」と呟きました。
中は見えないけれど、ミゾゴイは間違いなく中にいるようです。
微かに中の人の声も聞こえました。鳥かごを叩くような音と共に、「黙れよ、おい、静かにしろよ」と言う男の人の声です。
「そう言えば、あの鳥保護鳥じゃなかったけ?」と独り言を言いながら、お尻のポケットからスマホを取り出した千夏ちゃんは、村役場の電話番号を調べてかけてみます。
しばらくすると、お巡りさんと役所の人と保健所の人がやって来ました。
やって来た人たちは、部屋の住人に対して何やら難しいことを言っています。何を言っているか分からなかったモモタは、キキたちに訊いてみますが、誰も分かりません。
ミゾゴイは、絶滅危惧種Ⅱ類に該当する、と言っています。いったい何のことでしょう。
役所の人が、住人の男の人に言いました。
「とても数が少ないので、希少野生動物に該当し、生育保護区が指定されているんですよ。その区域内では捕獲は禁止。違反すると5年以下の懲役、または500万以下の罰金ですよ」
アゲハちゃんが言いました。
「なんか、守ってあげないと死んじゃうくらいか弱い鳥みたいね」
住人の男の人は言い訳していますが、やってきて人たちには通じません。
役所の人は続けて言いました。
「平成二五年に、国内小動物絶滅危惧種Ⅰ、Ⅱ類の捕獲、譲渡は禁止になったんですよ」
しばらく静かに聞いていたお巡りさんが、ずいっと一歩前に歩み出て言いました。
「ちょっと、署で話を聞きましょうか」
事件はそれでおーしまい。住人の男の人は御用となりました。
「あ、もしかしたらあの鳥かしら」
以前テレビで見た駅前のヒョロッとした鳥。千夏ちゃんは、ひじを曲げてわきを締め、上げた手のひらの甲を上に向けて指先を外に伸ばし、指をバラバラに動かしながら、その鳥のまねをして、「ぎゃぎゃぎゃっ」と鳴きました。
「そうそうそう、その鳥だ~!」
万歳したオオタカに千夏ちゃんビックリ、反対側の隅っこに飛びのいて、「食べないでぇ~」と泣き叫びます。
逃げた千夏ちゃんをチュウ太が「チューチュー」追いかけまわして、それをやめさせるためにモモタが「にゃあにゃあ」追いかけまわし、よけいに大騒ぎ。
モモタは、なんとかチュウ太を捕まえて、窓まで駆けていって、外にほっぽり出しました。そして振り返り、千夏ちゃんが落ち着くのを待ちます。そして、しばらくしてようやく落ち着いた千夏ちゃんを、窓の外に招くように見つめ上げました。
恐る恐るモモタに近づく千夏ちゃんが言いました。
「その鳥がいるの?」
するとモモタが「んにゃーん」と鳴いて、少し開いた窓から外にすり抜けました。
お姉さんは、急いで灰色のちびパーカーとインディコ・デニムに着替え、外に出てモモタを探します。モモタは少し離れたところから、千夏ちゃんを見つめていました。
千夏ちゃんが駆けてついてくるのを確認しながら、モモタは小走りで青い屋根のアパートに向かいます。
ミゾゴイが閉じ込められているアパートに辿り着くと、モモタは、千夏ちゃんにすがりよりました。
千夏ちゃんは、モモタを抱き上げて言いました。
「このアパートのどこかにとまっているのかしら?」
アパートの周りを一周まわって庭木も見るけれど、ミゾゴイなんてどこにもいません。千夏ちゃんは、ぞろぞろついてくるみんなを引き連れて、もう一周まわります。ですがやっぱりどこにも見当たりません。
「お家の中だよ」モモタが千夏ちゃんの胸の中から飛び降りて、ベランダの窓に呼び寄せます。
千夏ちゃんもやってきて、少し離れたところから窓を見やりますが、カーテンが閉まっていて中が見えません。
部屋の明かりはついているので、誰かがいるはずです。中の人に気がつかれて、変に思われるといけないのでしょう。千夏ちゃんは、あまりそばには寄ってはくれません。
チュウ太が言いました。
「何で部屋に乱入しないんだよ。人間の力なら、窓ガラスなんて簡単にパリンと破れるだろう?」
すると、キキが言いました。
「人間は野生じゃないから、そんなことしないよ。それに人間は王者じゃないから、僕みたいには出来ないさ」
ちょっと自慢気です。
だいぶ悩んだ様子の千夏ちゃんが、行ったり来たりしながら、窓を見ています。
「モモにゃん、ここ人のお家だから、わたしここでは遊べないの、ごめんね」
そう言って、千夏ちゃんは帰ろうとします。
モモタたちは、必死に鳴いてひきとめますが、千夏ちゃんは、申し訳なさそうにバイバイと手を振って歩いていってしましました。
「そうだ」とモモタは窓に向かって、大きな声で叫ぶように言いました。すると、中のミゾゴイが、「助けてー! たーすーけーてー!」と、大声をだしました。
「ぐげぇー! ぐげーぐげーぐげーぐげー」という鳴き声が聞こえた千夏ちゃんは、アパートの方を振り返って、鳴き声のする窓へと駆け寄ります。
そして、「いるんだ、やっぱり・・・」と呟きました。
中は見えないけれど、ミゾゴイは間違いなく中にいるようです。
微かに中の人の声も聞こえました。鳥かごを叩くような音と共に、「黙れよ、おい、静かにしろよ」と言う男の人の声です。
「そう言えば、あの鳥保護鳥じゃなかったけ?」と独り言を言いながら、お尻のポケットからスマホを取り出した千夏ちゃんは、村役場の電話番号を調べてかけてみます。
しばらくすると、お巡りさんと役所の人と保健所の人がやって来ました。
やって来た人たちは、部屋の住人に対して何やら難しいことを言っています。何を言っているか分からなかったモモタは、キキたちに訊いてみますが、誰も分かりません。
ミゾゴイは、絶滅危惧種Ⅱ類に該当する、と言っています。いったい何のことでしょう。
役所の人が、住人の男の人に言いました。
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アゲハちゃんが言いました。
「なんか、守ってあげないと死んじゃうくらいか弱い鳥みたいね」
住人の男の人は言い訳していますが、やってきて人たちには通じません。
役所の人は続けて言いました。
「平成二五年に、国内小動物絶滅危惧種Ⅰ、Ⅱ類の捕獲、譲渡は禁止になったんですよ」
しばらく静かに聞いていたお巡りさんが、ずいっと一歩前に歩み出て言いました。
「ちょっと、署で話を聞きましょうか」
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