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モモタとママと虹の架け橋
第十二話 空の王者
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熊のお母さんは、子熊を救ってくれたモモタたちにとても感謝してくれて、快くお家の大樹に上らせてくれました。
樹冠にやってきた三匹は、とても驚きました。大きな山の頂上にある一番高い木に登ったつもりでいたのに、山の周りにはもっと高い山々がたくさん連なっていたからです。ふもとの村がある方角以外、見渡す限り緑に覆われた山しかありません。
モモタが言いました。
「僕、とても広い世界を旅行してきたつもりだけれど、とっても小さい世界を歩いていたんだね」
すると、アゲハちゃんも感嘆して言いました。
「わたしもよ。わたしたちが住んでいる山が唯一の山かと思っていたけれど、違うのね。
それに、山一つ一つで色や形が違うわ。ということは、生えている木も違うってことよね。もしかしたら、わたしが今まで見たこともないお花がいっぱい咲いているかもしれないわ」
今度はチュウ太が、感動した様子で身を震わせながら言いました。
「僕が住んでるお家の外に田んぼや畑が広がっているのは知っていたけれど、それがずっと続いているわけじゃないんだな。
僕は、あの田畑はどこまで続いているんだろうって思っていたけど、そんなもんじゃないな。想像を絶する大冒険が僕たちを待ってるぜい」
三匹は、小さかった自分を知りました。そして、心の中に成長の息吹がそよいだことを感じて、それぞれの夢と希望に想いを馳せました。
そんな時、微かに影が樹冠の上を通過しました。ふとモモタが空を見上げると、大きく翼を広げたオオタカが旋回しているではありませんか。旋回が終わると同時に、自分たちめがけて急降下してくることは明らかです。
モモタがオオタカの方に身を向けたので、チュウ太がその視線の先を見やりました。そこには視界いっぱい翼を広げたオオタカがいたものだから、ビックリ仰天。思わずすってんころりとひっくり返って、そのままゴロゴロと根本の方まで転げ落ちていきました。
アゲハちゃんも慌てふためいて叫びます。
「モモちゃん逃げて! 食べられちゃうわ」
「大丈夫だよ。この子の名前はキキっていって、僕のお友だちだよ」
モモタのお腹に隠れたアゲハちゃんは、それを聞いてお腹のふあふあな毛の中から顔を出しましたが、まだ怯えています。
下の方からチュウ太の叫ぶ声が聞こえてきました。
「モモター! モモター! 無事でいろよー、モモター! 今助けてやるからなー」
そう叫びながら猛然と木を登ってきて、そのままの勢いでモモタの背中を走って頭の上でこぶしを構えます。
その瞬間、キキにパクッとくわえられてしまいました。
モモタは慌てて言いました。
「あ、それ僕のごはん――じゃなかった、僕のお友達だよ。だから食べないでー」
それを聞いたキキは、チュウ太をモモタの頭に戻します。
「いててて・・・」と言いながら、チュウ太がモモタに言いました。
「今僕のことごはんって言った?」
「ううん、冗談だよ。冗談。チュウ太は大事なお友達ー」
モモタは、それぞれに紹介してあげました。
キキが言いました。
「まさかかと思ったけれど、君だったか。ここは僕がいた“もっと山奥”よりも奥の“奥深い山奥”だよ。よく誰にも食べられずに、こんなところまで来られたね。普通は、熊とかイノシシとか僕とか、王者しか来られないというのに」
モモタは、キキに大冒険を始めたんだと教えてあげました。
キキは、それを聞いて言いました。
「僕は、母星は弱くなかったと思うな。確かに子供たちをそばに置きたかったのは自分のためにだったかもしれないけれど、そこには本当に幸せがあったと思うよ。母星は、子供たちを自分のそばに置くことで、幸せにする自信があったんだよ。それだけの力があったってことさ。
だって、母星は、子供を慈しみ過ぎて、母性の炎を燃え上がらせて太陽になってしまったんだろう? あんなに遠くにあるのに、とても熱く感じるほどの炎だよ。母星が弱いとか、子供たちを愛していなかった、なんて間違いだよ。誰よりも強く愛していたと思うよ。
太陽になったのだって、そばに残った子星だけのためじゃなくて、旅立った子星たちのことも思っていたからじゃないかな。そうじゃなかったら、そばに残った子星が燃えてしまうほどの想いが募らないんじゃないかな」
アゲハちゃんが、「そうか」と言いました。「会えないからこそ想いが募って、燃えるほどの愛が溢れたのね」
「うん、それに、ゾウガメのおじいさんは、『嘆き悲しんで落ちたから夜が生まれた』って言っていたみたいだけれど、逆じゃないかな? 夜しかなかったんだよ」
「なに言ってんだ」とチュウ太、キキのくちばしから逃れて葉の陰から顔を出して言いました。
「ずっと空は青々としていたんだ。子星がたくさんいて楽しかったんだぞ」
「でも太陽はまだ太陽じゃなかったんだよ。母星が太陽になったのは、旅立った子供たちが戻りたいって思った時に帰ってこられるように、道しるべとして赤々と燃えているためなんじゃないかな。そうして朝が生まれたんだ。
そうすると、満天の星空ってすごいと思うよ。輝いているってことは、それだけ太陽がたくさんあるってことじゃないか。愛情深くて太陽になった母星でいっぱいだ。
太陽にだって昔はお母さんがいて、お母さんのもとから旅立ったんだよ。だからここに来てたくさんの子供たちを生んだんだ。夜に輝く星々だってそうだと思うよ。
そう考えると、宇宙は凍ってしまうような寂しくて悲しい場所じゃないんじゃないかな。だって、たくさんの太陽が、飛んでやってくる子供星たちを迎えてくれるんだからさ」
今度は、モモタが「そうか」と言いました。「僕が旅行で色々なところに行った時に、いつも優しい人間がごはんをくれたり、お泊りさせてくれるんだ。子星たちにとっての太陽と、僕にとっての猫好きなお家の人と同じなんだね」
アゲハちゃんが喜びます。
「太陽がいっぱいね。そうしたらとても暖かくって、たくさんの蜜をたたえたお花が満開よ」
「でも――」チュウ太が言いました。「お母さん星は、死んで凍った星の欠片を見たって言うぜ。そのくらい大変な旅路じゃないと、母星もとめないんじゃないかな。それに大冒険って言わないよ」
するとアゲハちゃんが、「あなたは大冒険をしたいんでしょ? 命がけでモモちゃんと旅することで友情を示したいんだから。結論ありきよ」
みんなで大笑いしました。
樹冠にやってきた三匹は、とても驚きました。大きな山の頂上にある一番高い木に登ったつもりでいたのに、山の周りにはもっと高い山々がたくさん連なっていたからです。ふもとの村がある方角以外、見渡す限り緑に覆われた山しかありません。
モモタが言いました。
「僕、とても広い世界を旅行してきたつもりだけれど、とっても小さい世界を歩いていたんだね」
すると、アゲハちゃんも感嘆して言いました。
「わたしもよ。わたしたちが住んでいる山が唯一の山かと思っていたけれど、違うのね。
それに、山一つ一つで色や形が違うわ。ということは、生えている木も違うってことよね。もしかしたら、わたしが今まで見たこともないお花がいっぱい咲いているかもしれないわ」
今度はチュウ太が、感動した様子で身を震わせながら言いました。
「僕が住んでるお家の外に田んぼや畑が広がっているのは知っていたけれど、それがずっと続いているわけじゃないんだな。
僕は、あの田畑はどこまで続いているんだろうって思っていたけど、そんなもんじゃないな。想像を絶する大冒険が僕たちを待ってるぜい」
三匹は、小さかった自分を知りました。そして、心の中に成長の息吹がそよいだことを感じて、それぞれの夢と希望に想いを馳せました。
そんな時、微かに影が樹冠の上を通過しました。ふとモモタが空を見上げると、大きく翼を広げたオオタカが旋回しているではありませんか。旋回が終わると同時に、自分たちめがけて急降下してくることは明らかです。
モモタがオオタカの方に身を向けたので、チュウ太がその視線の先を見やりました。そこには視界いっぱい翼を広げたオオタカがいたものだから、ビックリ仰天。思わずすってんころりとひっくり返って、そのままゴロゴロと根本の方まで転げ落ちていきました。
アゲハちゃんも慌てふためいて叫びます。
「モモちゃん逃げて! 食べられちゃうわ」
「大丈夫だよ。この子の名前はキキっていって、僕のお友だちだよ」
モモタのお腹に隠れたアゲハちゃんは、それを聞いてお腹のふあふあな毛の中から顔を出しましたが、まだ怯えています。
下の方からチュウ太の叫ぶ声が聞こえてきました。
「モモター! モモター! 無事でいろよー、モモター! 今助けてやるからなー」
そう叫びながら猛然と木を登ってきて、そのままの勢いでモモタの背中を走って頭の上でこぶしを構えます。
その瞬間、キキにパクッとくわえられてしまいました。
モモタは慌てて言いました。
「あ、それ僕のごはん――じゃなかった、僕のお友達だよ。だから食べないでー」
それを聞いたキキは、チュウ太をモモタの頭に戻します。
「いててて・・・」と言いながら、チュウ太がモモタに言いました。
「今僕のことごはんって言った?」
「ううん、冗談だよ。冗談。チュウ太は大事なお友達ー」
モモタは、それぞれに紹介してあげました。
キキが言いました。
「まさかかと思ったけれど、君だったか。ここは僕がいた“もっと山奥”よりも奥の“奥深い山奥”だよ。よく誰にも食べられずに、こんなところまで来られたね。普通は、熊とかイノシシとか僕とか、王者しか来られないというのに」
モモタは、キキに大冒険を始めたんだと教えてあげました。
キキは、それを聞いて言いました。
「僕は、母星は弱くなかったと思うな。確かに子供たちをそばに置きたかったのは自分のためにだったかもしれないけれど、そこには本当に幸せがあったと思うよ。母星は、子供たちを自分のそばに置くことで、幸せにする自信があったんだよ。それだけの力があったってことさ。
だって、母星は、子供を慈しみ過ぎて、母性の炎を燃え上がらせて太陽になってしまったんだろう? あんなに遠くにあるのに、とても熱く感じるほどの炎だよ。母星が弱いとか、子供たちを愛していなかった、なんて間違いだよ。誰よりも強く愛していたと思うよ。
太陽になったのだって、そばに残った子星だけのためじゃなくて、旅立った子星たちのことも思っていたからじゃないかな。そうじゃなかったら、そばに残った子星が燃えてしまうほどの想いが募らないんじゃないかな」
アゲハちゃんが、「そうか」と言いました。「会えないからこそ想いが募って、燃えるほどの愛が溢れたのね」
「うん、それに、ゾウガメのおじいさんは、『嘆き悲しんで落ちたから夜が生まれた』って言っていたみたいだけれど、逆じゃないかな? 夜しかなかったんだよ」
「なに言ってんだ」とチュウ太、キキのくちばしから逃れて葉の陰から顔を出して言いました。
「ずっと空は青々としていたんだ。子星がたくさんいて楽しかったんだぞ」
「でも太陽はまだ太陽じゃなかったんだよ。母星が太陽になったのは、旅立った子供たちが戻りたいって思った時に帰ってこられるように、道しるべとして赤々と燃えているためなんじゃないかな。そうして朝が生まれたんだ。
そうすると、満天の星空ってすごいと思うよ。輝いているってことは、それだけ太陽がたくさんあるってことじゃないか。愛情深くて太陽になった母星でいっぱいだ。
太陽にだって昔はお母さんがいて、お母さんのもとから旅立ったんだよ。だからここに来てたくさんの子供たちを生んだんだ。夜に輝く星々だってそうだと思うよ。
そう考えると、宇宙は凍ってしまうような寂しくて悲しい場所じゃないんじゃないかな。だって、たくさんの太陽が、飛んでやってくる子供星たちを迎えてくれるんだからさ」
今度は、モモタが「そうか」と言いました。「僕が旅行で色々なところに行った時に、いつも優しい人間がごはんをくれたり、お泊りさせてくれるんだ。子星たちにとっての太陽と、僕にとっての猫好きなお家の人と同じなんだね」
アゲハちゃんが喜びます。
「太陽がいっぱいね。そうしたらとても暖かくって、たくさんの蜜をたたえたお花が満開よ」
「でも――」チュウ太が言いました。「お母さん星は、死んで凍った星の欠片を見たって言うぜ。そのくらい大変な旅路じゃないと、母星もとめないんじゃないかな。それに大冒険って言わないよ」
するとアゲハちゃんが、「あなたは大冒険をしたいんでしょ? 命がけでモモちゃんと旅することで友情を示したいんだから。結論ありきよ」
みんなで大笑いしました。
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