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モモタとママと虹の架け橋
第百二十八話 島の善意
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モモタたちは、ようやく噴煙が上がる島の近くに戻ってきました。噴火した島は形を変えて、心なしか前よりも少し大きくなっています。立ち上る煙の量も何倍にも増えていて、巨大な入道雲の様相を呈していました。
島の様相は大きく変わっています。おびただしい量の火山灰が降り注ぎ、大地の力強さを物語っていたゴツゴツした岩石は、そのほとんどが火山灰に覆われて、重々しい砂地と化していました。
始めは一番近い無人島に向かったカンタンでしたが、降り注ぐ火山礫や小さな噴石の多さを羽で感じ、その島に下り立つのは危険だと察知して、もう少し離れたところにある人間たちが住む島に下りました。
モモタが、港の防波堤の先まで走っていきます。みんなはその後に続いていって、火山島を見ました。
「ここからじゃ、よく分からないね」モモタが呟きます。
カンタンがモモタの横に歩み出て言いました。
「さっき空から見た限りだと、まだだいぶ火の川がくすぶっていたよ。黒い地面のようで、すぐ下は燃え盛ってるんじゃないかな」
「それじゃあ、当分はいけないね」とチュウ太がため息をつきました。
「ほこらだけでも無事だといいんだけれど・・・」アゲハちゃんが心配して言います。
再びカンタンが話し始めました。
「今日はもう休もうよ。長い時間飛んできてくたくただもん。明日僕とキキでほこらを見てきてあげるよ」
もうすでに、ゆうやけこやけのゆうげ時です。それに気がついたキキが辺りを見渡しながら言いました。
「ごはんどうしよう。もう陽が沈み始める頃だよ。僕やカンタンでは夜目が利かないからおあずけになっちゃう」
「ああ、僕はキキたちのごはんをとることは出来ないから、モモタ頼みだね」とチュウ太がモモタを見上げました。
ですが、いくらモモタの目がよく利くからといって、大きなカンタンとキキのごはんを捕ってこられるほどの力はありません。捕ってきたとしても満腹には出来ないでしょう。
みんなはそう思いながらもたよりは彼だけだったので、モモタを見やります。
モモタは、ケロッとした様子で言いました。
「チュウ太とアゲハちゃんは大丈夫でしょう? キキとカンタンはお魚大好きだから、何とかできると思うんだ」
自分自身がそう言い終わるのを待たずに、モモタはきょろきょろとし始めます。そして、お母さんと噴火を見にきていた可愛い女の子を見つけて、「にゃあにゃあ」鳴きながらすり寄りました。
女の子が、喜びの声を上げて言いました。
「うわ、可愛い猫ちゃん。なんていうお名前?」
そうモモタに訊きながら、首輪を見て続けます。
「モモタっていうの? わたし亜紀ちゃんよ」
亜紀ちゃんは、モモタの様子を見てすぐに察しました。
「お腹が空いているんでしょう? お家においで、わたしのお家漁師だから、お魚たくさん余っているのよ――って、おっきな鳥いるー! ママー、おっきな鳥いるー!」
亜紀ちゃんは大興奮です。
カンタンの周りには大人たちが集まってきて、スマホで写真を撮り始めました。男の子たちは喜んで騒いでいます。
亜紀ちゃんは言いました。
「みんなモモタのお友達なんでしょう? お家においで、お魚はたくさんあるんだから。ねえママいいでしょう?」
亜紀ちゃんママはとても困った様子でしたが、亜紀ちゃんはママのスカートにしがみついて、おしりをフリフリ揺らしながらおねだりビーム。頑張って食い下がります。
「みんなあの噴火でごはんが食べれなくて大変なんだよ。助けてあげないと可哀想だよ」
亜紀ちゃんにそう言われて、亜紀ちゃんママがモモタたちに瞳を向けました。それと同時に、モモタたちは一斉に瞳をウルウルさせて、上目使い。ちょうどいい感じに首を斜めに傾けます。誰が見たってイチコロでしょう。もう可愛くって仕方がないはずです。
亜紀ちゃんママは、亜紀ちゃんとモモタたちの頑張りに根負けして、みんなを連れて帰ってあげることにしました。
「やったぁー」モモタたちは大喜び。
亜紀ちゃんのお家は漁師のお家でしたが、母屋の隣で小さな干物工場を営んでいます。ですから、冷凍庫にはたくさんのお魚がしまわれていました。それに、亜紀ちゃんのお家は、噴火した島とは反対側の海のそばにあって、漁船もそちら側の港にありましたから、漁が出来ないわけではないようです。
そのおかげで、カンタンみたいに大きなペリカンにも、心配せずにお魚をあげることが出来ました。
とても筋肉質で大雑把な感じでありながら優しそうな亜紀ちゃんのお父さんが言いました。
「おお、よく食う鳥だなペリカンは。どんどん食え、噴火のことは心配するな。ここら辺には黒潮が流れているから、灰や軽石はみんな北に流れてしまうんだ。だから、漁ができなくはなんねぇ」
カンタンは嬉しくなって、鳴き声を上げました。
亜紀ちゃんパパとカンタンがおしゃべりしているところに、近所の人たちが子供や孫を連れてやって来ます。カンタンがとても珍しいので、ごはんをあげたい、とやって来たのでした。
ペリカンは渡り鳥なのですが、日本では大変珍しい鳥です。日本に渡ってこないわけではありません。ですが渡ってくるのは稀でしたから、渡ってくるペリカンは迷鳥と言われていました。もちろん、この島に渡ってきたのは初めてでしょう。
たくさんのご近所さんがお魚を持ってきたので、みんな満腹です。チュウ太に対しても優しく接してくれました。集まってきた人たちは、チュウ太が土間にいることで怒ったりはしませんでした。そればかりか、ピーナッツを分けてくれました。
亜紀ちゃんじいじは、キキがお気に入り。鷹匠になったつもりなのでしょう。腕にバスタオルを巻いてキキを腕に乗せようとあの手この手を繰り出して苦戦していました。
キキは、空の王者です。何者にも従う気はありません。
ですが、そこが男のロマンを掻きたてるのでしょう。キキの悠然とした佇まいから発せられるその気概に、男の子たちは目を輝かせながら、羨望の眼差しを向けていました。
亜紀ちゃんばあばが、アゲハちゃんのために蜂蜜を出してあげていると、そこに女の子たちがやってきました。
「おばあちゃん、アゲハちょうちょにお花をあげていい?」
「あらあら、いいですよ。喜ぶからこっちにおいで。
この子は人になれているみたいで、わたしを怖がらないのよ。お花を手に持ったままでも、蜜を吸ってくれるんじゃないかしら」
女の子たちは「わぁ~」と歓喜して、畳の居間あがります。茶色く塗られた重厚で大きな食卓の角っこで輪になって、さっそくお花をアゲハちゃんにプレゼント。
アゲハちゃんはとっても喜んでお礼を言いながら、ひらひらと舞い踊りるように飛びながら行ったり来たり。色々な花のハニーフルコースを楽しみました。
モモタたちは、島田家(亜紀ちゃんのお家)のみんなとご近所さんたちによくされ過ぎて、お腹満腹満タンぱんです。みんな膨れたお腹が重すぎて動けません。その日はそのまま夜が更けていって、みんなは居間と土間で深い眠りにつきました。
島の様相は大きく変わっています。おびただしい量の火山灰が降り注ぎ、大地の力強さを物語っていたゴツゴツした岩石は、そのほとんどが火山灰に覆われて、重々しい砂地と化していました。
始めは一番近い無人島に向かったカンタンでしたが、降り注ぐ火山礫や小さな噴石の多さを羽で感じ、その島に下り立つのは危険だと察知して、もう少し離れたところにある人間たちが住む島に下りました。
モモタが、港の防波堤の先まで走っていきます。みんなはその後に続いていって、火山島を見ました。
「ここからじゃ、よく分からないね」モモタが呟きます。
カンタンがモモタの横に歩み出て言いました。
「さっき空から見た限りだと、まだだいぶ火の川がくすぶっていたよ。黒い地面のようで、すぐ下は燃え盛ってるんじゃないかな」
「それじゃあ、当分はいけないね」とチュウ太がため息をつきました。
「ほこらだけでも無事だといいんだけれど・・・」アゲハちゃんが心配して言います。
再びカンタンが話し始めました。
「今日はもう休もうよ。長い時間飛んできてくたくただもん。明日僕とキキでほこらを見てきてあげるよ」
もうすでに、ゆうやけこやけのゆうげ時です。それに気がついたキキが辺りを見渡しながら言いました。
「ごはんどうしよう。もう陽が沈み始める頃だよ。僕やカンタンでは夜目が利かないからおあずけになっちゃう」
「ああ、僕はキキたちのごはんをとることは出来ないから、モモタ頼みだね」とチュウ太がモモタを見上げました。
ですが、いくらモモタの目がよく利くからといって、大きなカンタンとキキのごはんを捕ってこられるほどの力はありません。捕ってきたとしても満腹には出来ないでしょう。
みんなはそう思いながらもたよりは彼だけだったので、モモタを見やります。
モモタは、ケロッとした様子で言いました。
「チュウ太とアゲハちゃんは大丈夫でしょう? キキとカンタンはお魚大好きだから、何とかできると思うんだ」
自分自身がそう言い終わるのを待たずに、モモタはきょろきょろとし始めます。そして、お母さんと噴火を見にきていた可愛い女の子を見つけて、「にゃあにゃあ」鳴きながらすり寄りました。
女の子が、喜びの声を上げて言いました。
「うわ、可愛い猫ちゃん。なんていうお名前?」
そうモモタに訊きながら、首輪を見て続けます。
「モモタっていうの? わたし亜紀ちゃんよ」
亜紀ちゃんは、モモタの様子を見てすぐに察しました。
「お腹が空いているんでしょう? お家においで、わたしのお家漁師だから、お魚たくさん余っているのよ――って、おっきな鳥いるー! ママー、おっきな鳥いるー!」
亜紀ちゃんは大興奮です。
カンタンの周りには大人たちが集まってきて、スマホで写真を撮り始めました。男の子たちは喜んで騒いでいます。
亜紀ちゃんは言いました。
「みんなモモタのお友達なんでしょう? お家においで、お魚はたくさんあるんだから。ねえママいいでしょう?」
亜紀ちゃんママはとても困った様子でしたが、亜紀ちゃんはママのスカートにしがみついて、おしりをフリフリ揺らしながらおねだりビーム。頑張って食い下がります。
「みんなあの噴火でごはんが食べれなくて大変なんだよ。助けてあげないと可哀想だよ」
亜紀ちゃんにそう言われて、亜紀ちゃんママがモモタたちに瞳を向けました。それと同時に、モモタたちは一斉に瞳をウルウルさせて、上目使い。ちょうどいい感じに首を斜めに傾けます。誰が見たってイチコロでしょう。もう可愛くって仕方がないはずです。
亜紀ちゃんママは、亜紀ちゃんとモモタたちの頑張りに根負けして、みんなを連れて帰ってあげることにしました。
「やったぁー」モモタたちは大喜び。
亜紀ちゃんのお家は漁師のお家でしたが、母屋の隣で小さな干物工場を営んでいます。ですから、冷凍庫にはたくさんのお魚がしまわれていました。それに、亜紀ちゃんのお家は、噴火した島とは反対側の海のそばにあって、漁船もそちら側の港にありましたから、漁が出来ないわけではないようです。
そのおかげで、カンタンみたいに大きなペリカンにも、心配せずにお魚をあげることが出来ました。
とても筋肉質で大雑把な感じでありながら優しそうな亜紀ちゃんのお父さんが言いました。
「おお、よく食う鳥だなペリカンは。どんどん食え、噴火のことは心配するな。ここら辺には黒潮が流れているから、灰や軽石はみんな北に流れてしまうんだ。だから、漁ができなくはなんねぇ」
カンタンは嬉しくなって、鳴き声を上げました。
亜紀ちゃんパパとカンタンがおしゃべりしているところに、近所の人たちが子供や孫を連れてやって来ます。カンタンがとても珍しいので、ごはんをあげたい、とやって来たのでした。
ペリカンは渡り鳥なのですが、日本では大変珍しい鳥です。日本に渡ってこないわけではありません。ですが渡ってくるのは稀でしたから、渡ってくるペリカンは迷鳥と言われていました。もちろん、この島に渡ってきたのは初めてでしょう。
たくさんのご近所さんがお魚を持ってきたので、みんな満腹です。チュウ太に対しても優しく接してくれました。集まってきた人たちは、チュウ太が土間にいることで怒ったりはしませんでした。そればかりか、ピーナッツを分けてくれました。
亜紀ちゃんじいじは、キキがお気に入り。鷹匠になったつもりなのでしょう。腕にバスタオルを巻いてキキを腕に乗せようとあの手この手を繰り出して苦戦していました。
キキは、空の王者です。何者にも従う気はありません。
ですが、そこが男のロマンを掻きたてるのでしょう。キキの悠然とした佇まいから発せられるその気概に、男の子たちは目を輝かせながら、羨望の眼差しを向けていました。
亜紀ちゃんばあばが、アゲハちゃんのために蜂蜜を出してあげていると、そこに女の子たちがやってきました。
「おばあちゃん、アゲハちょうちょにお花をあげていい?」
「あらあら、いいですよ。喜ぶからこっちにおいで。
この子は人になれているみたいで、わたしを怖がらないのよ。お花を手に持ったままでも、蜜を吸ってくれるんじゃないかしら」
女の子たちは「わぁ~」と歓喜して、畳の居間あがります。茶色く塗られた重厚で大きな食卓の角っこで輪になって、さっそくお花をアゲハちゃんにプレゼント。
アゲハちゃんはとっても喜んでお礼を言いながら、ひらひらと舞い踊りるように飛びながら行ったり来たり。色々な花のハニーフルコースを楽しみました。
モモタたちは、島田家(亜紀ちゃんのお家)のみんなとご近所さんたちによくされ過ぎて、お腹満腹満タンぱんです。みんな膨れたお腹が重すぎて動けません。その日はそのまま夜が更けていって、みんなは居間と土間で深い眠りにつきました。
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