猫のモモタ

緒方宗谷

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ウジ

世界は重なる沢山の層

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 もとのおうちに戻ってすぐに、ウジ光が、末ウジをなぐさめながら言いました。
 「モモタが一緒にうんこを食べてくれたら、立ち直れるんだけれどなぁ」
 末ウジは「うん」とうなずいて「でもどうしよう、僕たちこの水うんこから出られないし」
 すると、ウジ松が言います。
 「そうだ、となりのけもの道に、新しくうんこが落とされたんでしょう?
  何とかモモタを呼べないかなぁ。
  もしモモタが僕たちを嫌っているのではなくて、うんこを嫌ってこの道を通ってくれないのなら、やっぱりモモタは隣のけもの道も通らないと思うんだ」
 なるほどー、と思ったハエたちは、「空飛ぶお魚がいた」とか、「可愛いヤマネコがいた」とか、「面白いお友達がいた」、とか言って、モモタが隣のけもの道を通るように仕向けます。
 興味をそそられたモモタが、隣のけもの道にやって来ました。
 みんなは、息を殺して見守ります。
 モモタは、何事もないように一本うんちのそばを通っていきました。
 その話は、木々や草むらの中に隠れて見ていたハエたちを介して、またたく間に広がりました。
 ウジたち大ショックです。口だけ笑って、目は笑えずにいました。
 ウジ松が言いました。 
 「うんこが怖いわけではないことは分かった。
  ねえ、お兄ちゃんとお姉ちゃんたち、僕たちを隣のうんこにお引越しさせておくれよ」
 ハエたちは、えっちらおっちら、ウジたちを運んであげました。
 いくにちかして、またモモタが、空飛ぶお魚や、可愛いヤマネコや、面白いお友達を探しにやってきました。
 ウジたちは、一本うんちの中で、息をひそめてモモタを覗き見ています。
 突然モモタが身構えました。
 そして、一目散にやぶの中に隠れて、そのまま逃げていってしまいました。
 ウジたちは大ショックです。今回も口だけ笑って、目は笑えずにいました。
 「やっぱりイジメ?イジメなの?」
 末ウジが泣き始めます。
 たまたま低く飛んできたクマタカの耳にも聞こえるほどの大声で。
 それからというものハエたちは、モモタに対してよそよそしくなりました。
 ほとんどのハエは、モモタと知り合いですらありませんでしたが、わざと目の前を飛んだり、耳の後ろを飛んだりと、ときどき色々と悪さをするようになりました。
 ですがモモタは気がついていません。夢中で遊んでいましたから、ハエの飛ぶ音に気がつけなかったのです。
 

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