猫のモモタ

緒方宗谷

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体験主義のカルガモの話

出来ないからやらないんじゃない、やらないから出来ないんだ

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 モモタは、朝から山の中で遊んでいました。
 お腹が空いたので、お昼ごはんを食べるために町へ戻ろうと、沢のそばの土手を川上に向かって歩いている時のことでした。
 何やら、「ママー、ママー」と聞き覚えのある声が聞こえてきます。
 モモタが見ると、川上の方からカルガモ親子が流れてきました。
 浅い川でしたが幅があって、ちょっと流れが急な川です。
 石が沢山落ちていましたから、流れがぶつかって、所々で、小さな渦を巻いていました。
 モモタが、急な土手からみんなを見やります。
 「ひい、ふう、みい、よう・・・一羽足りないっ」
 モモタはびっくりしました。一番下のヒナがいなかったのです。
 しばらくその場にとどまって、ヒナが来るのを待ちましたが、一向にやって来ません。
 モモタは、お腹が空いていることも忘れて、土手の上からヒナを探しながら、町へと返りました。
 すると、ママたちと一緒にいなかった五番目の赤ちゃんは、ため池に1羽でいました。
 ホッとしたモモタは、急にお腹が空いていることを思い出して、お世話になっている人間のお家に帰って、ごはんを食べました。
 しばらくしてモモタが日向ぼっこしに戻ってくると、五番目の赤ちゃんは、何やら陸に上がってはため池に飛び込み、陸に上がってはため池に飛び込み、を繰り返しています。
 そこに、飼い猫のみーちゃんがやって来て言いました。
 「あの子、ママとはぐれちゃったのね。
  毎年、あのカルガモのお母さんは、ヒナたちが育ってくると、山の方にお引越しするのよ」
 モモタは訊きました。
 「あのヒナはどうなっちゃうんだろう?ママはお迎えに来るのかなぁ?」
 「どうかしら、美味しそうだから、沢山のお友達が狙っているでしょうね。
  もしかしたら、コイも弱るのを待っているんじゃないかしら」
 どうもヒナは、自分を狙う誰かの視線から逃げるために、上がった陸からため池に飛び込んでいるようでした。
 モモタは言いました。
 「一番下の弟と言っても、一番お兄ちゃんとおんなじ大きさでしょう?
  ならもう少し待てば大きくなって、一羽でもお引越しできるんじゃないかなぁ?
  だって毎年、みんなちゃんとお引越ししているんだもの」
 すると、みーちゃんがケラケラ笑います。
 「えー?まさかー。だって、ぴよぴよママのあとを追いかけているしか出来ない赤ちゃんよ。
  今だって、せっかく坂を上ってきたのにまたため池に落ちて、逆さでほらもがいているじゃない」
 ミーちゃんは、五番目の赤ちゃんが何もできないから、上っては落ちてを繰り返している、と思っている様子です。
 ですが、モモタには違って見えました。モモタには、あのカルガモ赤ちゃんが一生懸命前進しているように見えました。





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