猫のモモタ

緒方宗谷

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樹海に住むお友達

代わりなんていくらでもいるんだから

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樹海 老兵は去るのみ日本狼の話

 大きな森の、奥深くの東側と西側に、それぞれ1匹の狼が住んでいました。
 若い頃はブイブイ言わしていた2匹でしたが、とても年を取ってしまってからは、ウサギにもバカにされるほど弱ってしまって、狩りもままなりません。
 西の狼は、頭が良かったのと、鼻がとても利いたので、早いうちからビーグルたちに取り入って、狩りのおこぼれにあずかっていました。
 西の狼が、久々にビーグルたちのもとにやって来て、言いました。
 「ビーグルや、ビーグル。
  あっちにイノシシがいるから、ついておいで」
 「お、爺さん、いつも悪いな、いつものように匂いがする辺りまで頼むよ」
 一太がそういうと、西の狼は、先頭に立ってビーグルを導きます。
 ビーグルの鼻がイノシシの匂いをロックオンすると、西の狼は、木の陰に隠れます。
 「わんわんわんわん」
 たくさんのビーグルが吠え猛る後ろから、やって来たカウボーイおじさんが、追い詰められたイノシシを鉄砲でズドーンと撃って仕留めます。
 カウボーイおじさんはイノシシを持てかえってお肉にします。
 ビーグルたちは、たくさんのお肉をもらえるのをまだかまだかと待っています。
 みんながお腹がいっぱいになった頃、一太がお肉の塊を持って、敷地の外でしょんぼり待っていた西の狼のところにやってきて言いました。
 「ほら、じいさん、お肉の分け前だ。
  あんたのおかげで、すぐに獲物が捕れて助かるよ。
  あんたはなくてはならない存在だよ」
 しかしある時、西の狼は怪我をしてしまいました。
 樹海の動物たちは、みんな喜びましたが、当然ビーグルたちは困りました。
 みんなで動物の匂いをたどって色々な所を探していると、東の狼が来て言いました。
 「ワシの鼻だって悪くないから、手伝おう。
  その代り、わけまえをおくれよ」
 ビーグルたちは、東の狼の申し出を受け入れました。
 それからしばらくして、西の狼の怪我が治りました。
 西の狼はとてもお腹が空いていたので、すぐにカウボーイハウスに向かいます。
 戻ってきた西の狼に、一太が言ました。
 「もう東の狼がいるから、間にあっているよ」
 「そんあぁ、わしの方が東のよりも鼻がいいんじゃ」
 「でも間に合っているよ。東のじいさんでも十分鼻いいしね。
  それに、必要なのは鼻じゃないんだ。
  樹海の奥に住んでいることなんだよ。
  匂いを追って獲物を見つけるだけだったら、僕たちだけで十分さ。
 でも樹海の奥に住んでいるオオカミなら、どこに誰が住んでいるか分かっているだろ。
  教えてくれさえすれば、それで十分なんだ。
  捕まえるのは僕たちなんだから」
 「東のは東しか知らん。西はわしがよう知っとる」
 「でもどちらかだけで十分だよ。
  不必要に命を奪っていいわけないしね」
 西の狼は怒りました。
 「わしの命はどうなるんじゃ」
 「それは自分でなんとかしなよ」
 西の狼は取り合ってもらえず、すごすごと帰っていくしかありませんでした。
 とってかわられない何かを持たなければ、生きていくのは大変です。



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