猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
229 / 502
欲のためならなんでも言えちゃう白猫の話

弱さは美味しいダシになる

しおりを挟む
 モモタが空き地の草むらで、ごろりんこしていると、誰かの声が聞こえてきます。
 見ると、道路の方を、メインクーンのアルフについて回る、野良白猫の女の子がいました。
 だんだんと距離が縮まってきたので、話の内容がモモタにも伝わります。
 女の子は言いました。
 「わたしの赤ちゃんが、お乳を飲んでくれなくて大変なの」
 アルフが答えます。
 「もう、乳離れの時期じゃないの?
  あげるのやめてみたらどう」
 「だめ。ミューミュー鳴いて、せがんで転げまわるの。
  『お乳くれなきゃ、遊ばないぞ』って言うのよ。
  それにこないだも、おしりにうんちがついていて、『きれいにしてくれなきゃ、ずっと転げちゃうもん』って転げてたのよ」
 「それいちいち聞いていたら、ずっと乳離れしないんじゃないかな」
 「もう大変で、ごはんを捕りに行けないの。
  だから、あなたがネズミを捕ったら、わたしにちょうだい。
  あなたは、ご主人様からごはん貰ってるし、いいでしょう?」
 メインクーンは悩んでいる様子でしたが、それ以降、たまにお外に遊びに出る度に、捕まえたネズミを女の子にあげるようになりました。
 それから度々、女の子に、
 「あのカラスが食べている鳥のお肉美味しそうね、盗ってちょうだい」とか、
 「あのダックスフンドが食べてるごはんが欲しい」とおねだりしては、盗ってもらっていました。
 さすがのメインクーンも疲れた様子で、言いました。
 「そんなに僕に頼っていたら、君自身1匹じゃ暮らしていけなくなっちゃうよ。
  いい加減、自分の力でごはん取ったら?
  君自身が捕ってるネズミの数だって、他の猫と変わらないんだから、カラスや犬のごはん盗らなくても、楽しくやっていけるだろう?」
 すると、しょんぼりした女の子は、「うん・・・」と頷いて、「考えてみる」と一言言いました。
 そしてどこかへ去っていきます。
 モモタは、以前メインクーンから聞いた話を思い出しまして、考えました。
 (望みが叶わないから、もう来なくなるのかなぁ?)と。
 実際の理由は分かりませんが、次にメインクーンと見た時に、女の子はいませんでした。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

フラワーキャッチャー

東山未怜
児童書・童話
春、中学1年生の恵梨は登校中、車に轢かれそうになったところを転校生・咲也(さくや)に突き飛ばされて助けられる。 実は咲也は花が絶滅した魔法界に花を甦らせるため、人の心に咲く花を集めに人間界にやってきた、「フラワーキャッチャー」だった。 けれど助けられたときに、咲也の力は恵梨に移ってしまった。 これからは恵梨が咲也の代わりに、人の心の花を集めることが使命だと告げられる。   恵梨は魔法のペンダントを預けられ、戸惑いながらもフラワーキャッチャーとしてがんばりはじめる。 お目付け役のハチドリ・ブルーベルと、ケンカしつつも共に行動しながら。 クラスメートの女子・真希は、恵梨の親友だったものの、なぜか小学4年生のあるときから恵梨に冷たくなった。さらには、咲也と親しげな恵梨をライバル視する。 合唱祭のピアノ伴奏に決まった恵梨の友人・奏子(そうこ)は、飼い猫が死んだ悲しみからピアノが弾けなくなってしまって……。 児童向けのドキワクな現代ファンタジーを、お楽しみいただけたら♪

処理中です...