猫のモモタ

緒方宗谷

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屋上の犬

希望はごはん

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 「おおい、おおい」 
 どこからともなく声が聞こえてきます。
 モモタがキョロキョロしていると、「こっち、こっち。上だよー」と、また声が聞こえてきます。
 モモタが見上げてみると、5階建てのマンションの屋上に、大きな茶色い犬がいました。
 モモタが初めて祐ちゃんのお家から出て出会ったお友達の中で、一番大きなお友達です。
 短いしっぽを振りながら、右へ左へ行ったり来たり、とても遊びたさそうにしています。
 2匹で楽しく遊ぶ姿を想像したモモタは、もう遊んでいる気になって、楽しくなりました。
 さっそくマンションに入って、階段を上ります。
 屋上に出ると、出入口の柵はしまっていましたが、モモタは難なくすり抜けられました。
 とっても嬉しそうな犬が、一目散に駆け寄ってきます。
 「わぁ、初めてお友達が遊びにきた」
 「初めて?」
 モモタが見渡すと、地面は硬いコンクリート。庭木もなく殺風景な屋上です。
 虫もなんにもいませんでした。
 犬は愉快そうに言いました。
 「僕、ボクサー犬のマックっていうんだ。
  すごいや君、だって君犬じゃないでしょ?
  猫じゃないのに僕を見て怖がって逃げないんだもの」
 「怖い?どうして?」
 首を傾げるモモタに、マック君は寂しげに言いました。
 「猫はみんな僕を知らんぷりするんだ。
  声をかけてもそっぽを向くんだよ。
  鳥はお空を飛べるから、屋上で羽を休める時もあるけど、僕がかけよるとすぐにとんでっちゃう。
  僕あそびたいだけなのに、みんな僕を怖がるんだ」
 「どうしてマック君を怖がるの?
  マックン君はとても優しいでしょう。一緒に遊ぶと絶対楽しいのに」
 マック君はきょとん、としてから、笑って言いました。
 「初めて会ったのにそんなふうに言ってくれて、とっても嬉しい。
  モモタ君は幸せ者だね。だって優しいお友達がいっぱいいるんだから」
 「どうして分かるの?」
 「だって、僕のことを知らないのにそう思ってくれたんだもの。
  モモタ君が優しさをたくさんもらってきた証拠だよ」
 モモタは、褒められてとっても嬉しくなりました。


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