猫のモモタ

緒方宗谷

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寂しがりやなウサギの話

寂しいと、痛いのだって求めちゃう

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 「助けてー!助けてー!」
 樹海の中に、ウサギの声が響き渡りました。
 必死に逃げるうさぎの声の後ろから、「ワンワンワンワン」と、ビーグル犬たちの声も響きます。
 間一髪で逃れたウサギは、荒れた息を整えながら、木の上にいたモモタに声をかけました。
 「あーびっくりしたなーもー。
  いつも犬に追いかけられて困っちゃうなー。
  僕ってほら、きれいな白い毛皮に包まれていて、可愛いだろ? 
  大きさもちょうどいいじゃん、抱きしめたくなっちゃう。
  温もり求めてみんながよって来るんだ。
  それにとても美味しそうだし、どうしても捕まえちゃいたくなるんだよね。
  でも僕、そんな安っぽくないだ。
  ごはんにされるなんてまっぴらごめんさ。
  あーやだやだ、人気者はつらいなぁー」
 モモタは言いました。
 「僕たち可愛いから、人間はみんな抱っこしたくなるんだ。
  1匹で日向ぼっこしていたい時もお構いなしに。
  犬だってすごい勢いでしっぽを振って『遊んで~』って走ってくるよ」
 「ふーん、君、追っかけがいるようには見えないけどね。
  耳も短いし、美味しくもなさそうだし」
 遠くでビーグルたちの声が聞こえます。まだうさぎを探し回っているようでした。
 このウサギは、よくこの辺りにきては、「ごはんはないかなぁ、美味しいごはんはないかなぁ」と独り言を言いながら、ぴょこぴょこ歩いているので、お肉大好きっ子からしたら、良い獲物です。
 だからモモタは言いました。
 「あんまりこっちに来ない方がいいよ。だってカウボーイハウスがあるもの。
  すぐに見つかってまた追いかけられてしまうよ」
 「うん、そうなんだけどね、こっちの方には美味しい葉っぱやなんかがよく生えているんだ。
  だからどうしてもこっちのほうにきてしまうんだよ。
  特に、冬の時分には冬眠しなくっちゃいけないからね。
  たくさん食べておかないといけないし。
  特にほら、カウボーイハウスには、美味しそうなニンジンが生えているだろ?
  あの匂いにつられちゃうんだ」
 モモタは不思議に思いました。
 だってこのウサギは、カウボーイハウスに遊びに来たことがなかったからです。
 モモタは言いました。
 「ここら辺の葉っぱ美味しいの? 
  僕食べないから分からないけど、樹海の奥の方にも沢山生えてるのと一緒じゃないの?」
 うさぎが笑います。
 「違う違う、ぜんぜん違うよ。
  同じように見えても全然違うんだ。
  仮に同じでも、生えているところが違うからね」
 「ふーん」
 そういうこともあるかな、とモモタは思いました。
 うさぎは、自慢げに言いました。
 「僕追っかけが多いから大変。
  君も見たろ?僕を食べたがる犬の多さ。
  君、あんなたくさんの犬に追いかけられたことないだろうね」
 自慢しているようなのに、なぜかこまっちゃうなぁー、といった様子で言っています。
 でもモモタは気がついていました。
 このウサギは、自分から犬にちょっかいを出しているようなのです。


 
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