猫のモモタ

緒方宗谷

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横暴なライオンの話

強気の裏に隠れた孤独

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 ライオンは、手下の野良猫たちに毎日毎日自慢話を聞かせていました。
 ライオンは、動物園に隠居する前の話をしていました。
 今のお家の外に住んでいた時は、毎日大きな動物を狩りしていた、と話しています。
 ある時、モモタも一緒に訊いていた時のことです。
 ライオンは言いました。
 「草食うやつらなんて信用するなよ。
  ほら、あいつらよく見てみろ。
  草食いながらこっちを見てやがるんだ。
  目玉が頭の横についているからな。
  そっぽを向いているからって油断するんじゃねえぞ。
  目だけはこっちを向いているんだ。
  こっちを見ているようで反対側もみてやがるんだ。
  だから、反対側を見ているような時もこっちを見ているんだぜ」
 野良猫たちは感心します。
 なんせ、猫の大きさでは、シカや馬なんて襲えません。
 自分達がいてもいなくても相手にされませんから、視線を感じないのです。
 モモタ以外の猫たちを見たライオンは、言いました。
 「お前らは…よ。素質あるからよ。頑張れよ。百獣の王になれるからよ」
 そして、モモタのほうを見て言いました。
 「お前は草食うやつらと仲良くしすぎだな。
  百の獣と一緒にいたら百一番目の獣になるからよ。分かるー?
  俺様だって苦労したよ。
  若いうちは野良だってしたけど、どこ行ったって『ライオンさんライオンさん』って慕われたもんだぜ。
  でも今は野良なんてやってないのよ。
  なぜだか分かるか?俺が百獣の王だからだよ」
 モモタは、ふと気がついて言いました。
「百獣の王だって、百獣の中の一つじゃないの?」
 すると、ライオンは黙ってモモタをじっと見つめます。いつまで経っても見つめ続けます。
 モモタが不安になって、辺りを見渡したり、一歩右に行ってみたり戻ってみたりしましたが、ライオンは視線で追いかけてきました。
 居た堪れなくなったモモタは、ライオンに背を向けてその場を離れました。
 ライオンの匂いが漂ってこないくらい離れてから、ライオンのお家の方を振り返ったモモタは思いました。
「みんなにもちゃんと名前があるけど、慢心しているとぼやけて見えなくなるんだなぁ」

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