猫のモモタ

緒方宗谷

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神社のそばのお友達

チャンスは努力の先に訪れる

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 梅雨の季節がやってきました。
 モモタは、毎日毎日お世話になっているお家の窓からお外を眺めて過ごしていました。
 来る日も来る日も雨ばかりです。モモタは退屈で仕方がありません。
 ようやく梅雨の中日がやってきました。信じられないほどの青天です。モモタは、さっそく赤金魚の所に遊びに行きました。
 辺り一面水浸し。モモタは、浅いところを探して、ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷランランラン、とスキップしながら遊びに行きます。
 モモタは言葉を失いました。窓ガラス越しに見える金魚鉢に、赤金魚はいませんでした。
 しばらくの間固まっていたモモタは、とても悲しくなって、しょんぼりと顔を下げました。すぐに涙がこぼれます。
 モモタは、そのまま赤金魚のお家があったマンションにはいかなくなりました。
 しばらくしたある日、とても懐かしい声が聞こえてきました。
 「モモタ、モモタ、こっちこっち」
 モモタは見渡しますが、誰もいません。 
 「こっちだよ、モモタ」
 モモタが田んぼのわきを流れる水路を見ると、あの赤金魚がいるではありませんか。
 モモタはびっくりして訊きました。
 「どうしたの?僕とっても心配してたんだよ」
 「僕、ついに生まれたんだ。僕飛んだんだよ。
  まだうまく飛べなくて落ちちゃったけど、だんだんと飛べるようになってきたよ。
  だって最近、流れが弱いところでは、流されなくなったもの」
 赤金魚はとっても嬉しそう。
 「この流れをさかのぼっていくと、きっと雲の上まで続いているんだ」
 赤金魚はそう言って、流れが早いところに飛び出しては何度も流されて、流れがゆるやかなところで休憩しています。
 モモタが訊きました。
 「いったいどうしてお外に出たの?」
 「最近雨ばかりが降っていたでしょ?それも大粒の雨。
  僕、その雨を登っていったら、きっとお空まで飛んでいけると思ったんだ。
  そんな時に、ご主人様が窓を開けていたから、今だ!エイヤーって大ジャンプ。
  地面に落ちて痛かったけど、またジャンプしてお空を飛んだんだ。大きな雨粒に乗って。
  ご主人様にお家に帰されそうになったけど、ぴちぴち跳ねて、さらに遠くに飛んだんだ」
 モモタは想像しました。
 一生懸命跳ねた赤金魚は、大粒の雨の中を泳いでお庭に出たんだ、と。
 晴れた今でさえ大きくて深い水たまりが、いたるところにありました。
 雨の中でしたら、もう海みたいになっていたことでしょう。
 モモタの上に影が落ちました。振り返ると、赤金魚のご主人様が、ニッコリとほほ笑んでいます。
 それからゆっくりとしゃがんで、赤金魚を見て続けます。
 赤金魚は、元気いっぱいに飛び跳ねて、ご主人様に言いました。
 「バイバイ、智香(ちか)ちゃん。
  僕きっと立派な赤い鳥になってまた帰って来るよ。行ってきまーす」
 そう胸ビレを振って、流れに逆らってお空を目指して泳いで行きました。
 智香ちゃんは、寂しそうにしながらも、とても嬉しそうに、赤金魚を見送ります。
 赤金魚の智香ちゃんも、きっとおんなじ夢を見ているのでしょう。





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