猫のモモタ

緒方宗谷

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愛情深いトラの話

生きたいという気持ち

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 ですが、まだ一度も赤ちゃんを産んだこともないプレムちゃんです。お乳は一向に出ませんでした。
 ソニンちゃんだってバカではありません。
 自分がお乳を出せないことは知っているはずです。ですが、やめようとしません。
 だんだんと白猫赤ちゃんは弱り始めてきました。
 あまり動かなくなって、声もかすれてきています。
 お母さん猫が、危険も顧みずにプレムちゃんのお家に下りていって、毎日お願いし続けていました。
 モモタは言いました。
 「プレムちゃん、お願い。赤ちゃんをママに返してあげて。
  赤ちゃんもママを探して呼んでいるよ」
 「静かにして。今やっと寝付いたところなんだから」
 プレムちゃんは、聞く耳を持ちません。それでもモモタは話し続けます。
 「僕も赤ちゃんの頃、ママとお別れしなくちゃいけなかったんだ。
  とても悲しいことだったんだよ。
  白猫の赤ちゃんだって、きっとそうなるよ」
 「この子は、立派なホワイトタイガーに育ててみせるわ。とても強い子よ。
  わたしの彼だって敵わないくらいにね」
 そう言って、隣のお家からプレムちゃんを見ていたパンジャン君に言いました。
 「あなただって可愛がってくれるでしょ?」
 「ああ・・・。もちろんだとも・・・」
 パトール君はそう答えましたが、シドロモドロです。
 モモタには、そう思っていないことがありありと分かりました。
 次の日、白猫赤ちゃんが頑張って立ち上がりました。
 「みゅーみゅー」鳴きながら、よちよち歩いています。
 プレムちゃんは喜びましたが、赤ちゃんの歩みはとても弱々しい歩き方で、すぐにうずくまってしまいました。
 グッタリする白猫赤ちゃんを心配して駆け寄るプレムちゃんが、白い体をなめてやりますが、鳴きません。
 鳴こうとして口を開くのですが、声が出ない様でした。
 「もう返して!」お母さん猫の悲痛な叫びが木霊します。
 プレムちゃんは急いで隠しておいた一口お肉を銜えてきて、白猫赤ちゃんに食べるよう促します。
 まだ乳飲み子の白猫赤ちゃんでしたが、それでもがんばってお肉を頬張ります。
 動物も鳥も虫も人間も、その光景を見ていたみんなは、生きようとする命の力強さを目の当たりにしたのでした。

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