猫のモモタ

緒方宗谷

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聞いてくれなきゃ満足できないポメラニアンの話

考えないって楽だよね

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 モモタは、久しぶりに町にやってきました。
 塀の上を歩いていると、「きゃんきゃん」と懐かしい鳴き声が聞こえてきます。
 ポメラニアンのリコちゃんが、ご主人様と元気に遊んでいました。
 「あれあれ?」モモタは目を見張ります。
 大きなセントバーナードの男の子が一緒です。
 モモタが塀の上から見ていると、リコちゃんは走り回って、ジャンプしたり、伏せをしたりと大忙し。
 でも何か変でした。
 リコちゃんは、セントバーナードの周りを駆けまわって、大ジャーンプ。
 セントバーナードの背からか登って、頭に前足を乗せてました。
 するとセントバーナードは、リコちゃんの重みで伏せをしました。
 リコちゃんが離れると、セントバーナードは身を起こします。
 リコちゃんは、続いて伏せをしました。
 そうして、セントバーナードの前足の肉球の下に鼻を入れると、セントバーナードの前足が上がってお手をします。
 「きゃんきゃん」と鳴きながら走るリコちゃんは、セントバーナードのおしりに飛び乗りました。
 すると、セントバーナードはお座りをします。
 ご主人様は大喜びで、ビーフジャーキーを2匹に差し出しました。
 するとリコちゃんは、激しくしっぽを振って喜んで、2本ともくわえます。
 でも独り占めするわけではない様です。
 リコちゃんは、自分の1本を地面に置いて、1本をくわえたまま上を向いて、大きくジャンプしました。
 セントバーナードは、ちょうど自分の鼻先に上がってきたビーフジャーキーをパクッ、とくわえます。
 不思議な光景でした。
 ご主人様の人間とセントバーナードの男の子は、ほとんど動かないのに、リコちゃんだけが、所狭しと忙しそうに走り回っています。
 でもモモタが驚いたのは、リコちゃんにではありません。セントバーナードにでした。
 セントバーナードは、微動だにしないのです。
 ずっと動かないままでした。
 優しそうな垂れた目でリコちゃんを見やって、リコちゃんの望むようにさせてやっているようです。
 セントバーナードは、自分からほとんど動かなかったので、不思議と陶器の置物のように見えました。
 モモタは思いました。
 「もしかして、前にリコちゃんのお家でお世話になってた時の僕って、あんな感じ?」




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