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大好きな家族の話
相手の気持ちになって想えるということ
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とてもお天気のいい朝でした。
モモタは、祐ちゃんママが作ってくれたほぐし鮭の猫まんまを朝ごはんに食べてすぐに、お外へと遊びに行きました。
マンションがたくさん並んだところにやってくると、何やら心に不安が湧いてくる何かが、一本道路の真ん中に落ちています。
モモタは悲しい気持ちになりながら、それがなにか確かめようと近づきました。
猫でした。夜の内に車にひかれたのでしょうか。牙を出して唸るように顔をしかめた、薄茶の猫でした。
モモタは、少し離れたところの十字路のすみの歩道にお座りをして、見ていました。
まだ朝早いので、沢山のサラリーマンが行き来しています。
あの死んだ猫のことを、誰かが助けてくれるだろう、とモモタは思いましたが、誰も助けてくれません。
ブレザー姿の女の子はよけて、離れたところを歩いていきます。
少し後に来た同じ制服の女の子は、顔を背けました。
学ランの男の子は、気にも留めない様子です。
モモタはつらくて、その場を後にしました。
お昼ご飯の時間も終わってしばらくした後、再びモモタはやってきました。そして、空を見上げました。
突然お目目が握られたようになって、中の水がしみ出してきたような感覚がしたからです。
みんなお仕事に行っている時間でしたから、誰も通りません。
死んだ猫は1匹ぽっちで、冷たいアスファルトの上に横たわっています。
モモタの後ろから、車が走ってきました。
ひき潰される、とモモタは心配しましたが、車はスピードを落として、猫をひかないように走っていきます。
何人かのサラリーマンや私服のおばさんが通りましたが、やはり知らんぷり。
あたかも死んだ猫が、その場にいないかの様でした。
あの猫を助けてあげたい、と思ったモモタですが、自分よりも大きな大人の猫のようでしたから、どうすることも出来ません。
モモタは、その場にいるのがつらくて、遊びに行きました。
このつらい気持ちを忘れてしまいたかったからです。
陽が暮れてくると、モモタはもう一度あの場所に行きました。
死んだ猫は、朝と同じ場所で同じ格好のまま横たわっています。
たくさんのサラリーマンが、前から後ろからぞろぞろ歩いていきます。お仕事が終わったのでしょう。
通る人通る人、みんな気がついているようでした。ですが、誰も死んだ猫を助けてくれません。
ランドセルを背負った子供たちが、むこうからやってきました。
でも期待できません。だってみんなは朝も死んだ猫を見たはずですから。
子供たちは、「まだいるー、まだ落ちてるー」と騒いで、気持ち悪がります。
モモタは、自分のことじゃないのに、言葉が心に刺さりました。
陽が沈んでからだいぶ時間が経ちました。
モモタは、もう長いこと道路と歩道をへだてる植え込みに座っています。
たくさんの人が通りましたが、誰一人として、死んだ猫を見て悲しんではくれません。
モモタは、諦めて帰ろうとしました。
背を向けて、十字路を左に曲がろうとしたその時です。
気配がしました。自転車に乗った男の子が、スイーと走ってやってきました。
モモタは、瞳を見開いて、もう一度、死んだ猫のほうに向きなおります。
なぜかそうせずにはいられませんでした。
男の子は、急にスピードを落としていきます。
右足で後ろのタイヤをまたいで、左のサドルの上に片足立ち。
姿が見える距離になって、その男の子が誰だか分かりました。モモタはとても期待が湧いてきました。
格好良いマウンテンバイクからおりた男の子は、ご主人様の祐ちゃんでした。
祐ちゃんは、マウンテンバイクをおりてしゃがみ、死んだ猫を見ています。
そして辺りを見渡して、マンションの植え込みに生えていた、人間の顔ほどもある大きな葉っぱを2枚ちぎって、手のひらに添えて、猫を抱き上げました。
そして、歩道の植え込みに生えていた木の根元に寝かせます。そして、手のひらに添えた葉っぱを猫にかけました。
モモタは、とても救われた気分になって、「にゃあにゃあ」鳴きながら、祐ちゃんのもとに駆けていきます。
「モモタぁ」祐ちゃんは優しく答えてくれました。そして、モモタの脇に両手を添えて抱き上げて、続けて言いました。
「この猫かわいそうにね。車にひかれて死んだのかな。
本当は埋めてやりたいけれど、手じゃ硬い土を掘れないし・・・。
でも土の上に寝かせてあげたからいいよね?だってかたい地面じゃないんだもん。それに、いつか土に帰っていけるから」
モモタには難しくて、何を言っているか分かりません。ですが、祐ちゃんの猫への優しさが伝わってきます。
モモタは、とっても幸せ者です。祐ちゃんに抱き上げられる時が一番大好きです。
モモタは、祐ちゃんママが作ってくれたほぐし鮭の猫まんまを朝ごはんに食べてすぐに、お外へと遊びに行きました。
マンションがたくさん並んだところにやってくると、何やら心に不安が湧いてくる何かが、一本道路の真ん中に落ちています。
モモタは悲しい気持ちになりながら、それがなにか確かめようと近づきました。
猫でした。夜の内に車にひかれたのでしょうか。牙を出して唸るように顔をしかめた、薄茶の猫でした。
モモタは、少し離れたところの十字路のすみの歩道にお座りをして、見ていました。
まだ朝早いので、沢山のサラリーマンが行き来しています。
あの死んだ猫のことを、誰かが助けてくれるだろう、とモモタは思いましたが、誰も助けてくれません。
ブレザー姿の女の子はよけて、離れたところを歩いていきます。
少し後に来た同じ制服の女の子は、顔を背けました。
学ランの男の子は、気にも留めない様子です。
モモタはつらくて、その場を後にしました。
お昼ご飯の時間も終わってしばらくした後、再びモモタはやってきました。そして、空を見上げました。
突然お目目が握られたようになって、中の水がしみ出してきたような感覚がしたからです。
みんなお仕事に行っている時間でしたから、誰も通りません。
死んだ猫は1匹ぽっちで、冷たいアスファルトの上に横たわっています。
モモタの後ろから、車が走ってきました。
ひき潰される、とモモタは心配しましたが、車はスピードを落として、猫をひかないように走っていきます。
何人かのサラリーマンや私服のおばさんが通りましたが、やはり知らんぷり。
あたかも死んだ猫が、その場にいないかの様でした。
あの猫を助けてあげたい、と思ったモモタですが、自分よりも大きな大人の猫のようでしたから、どうすることも出来ません。
モモタは、その場にいるのがつらくて、遊びに行きました。
このつらい気持ちを忘れてしまいたかったからです。
陽が暮れてくると、モモタはもう一度あの場所に行きました。
死んだ猫は、朝と同じ場所で同じ格好のまま横たわっています。
たくさんのサラリーマンが、前から後ろからぞろぞろ歩いていきます。お仕事が終わったのでしょう。
通る人通る人、みんな気がついているようでした。ですが、誰も死んだ猫を助けてくれません。
ランドセルを背負った子供たちが、むこうからやってきました。
でも期待できません。だってみんなは朝も死んだ猫を見たはずですから。
子供たちは、「まだいるー、まだ落ちてるー」と騒いで、気持ち悪がります。
モモタは、自分のことじゃないのに、言葉が心に刺さりました。
陽が沈んでからだいぶ時間が経ちました。
モモタは、もう長いこと道路と歩道をへだてる植え込みに座っています。
たくさんの人が通りましたが、誰一人として、死んだ猫を見て悲しんではくれません。
モモタは、諦めて帰ろうとしました。
背を向けて、十字路を左に曲がろうとしたその時です。
気配がしました。自転車に乗った男の子が、スイーと走ってやってきました。
モモタは、瞳を見開いて、もう一度、死んだ猫のほうに向きなおります。
なぜかそうせずにはいられませんでした。
男の子は、急にスピードを落としていきます。
右足で後ろのタイヤをまたいで、左のサドルの上に片足立ち。
姿が見える距離になって、その男の子が誰だか分かりました。モモタはとても期待が湧いてきました。
格好良いマウンテンバイクからおりた男の子は、ご主人様の祐ちゃんでした。
祐ちゃんは、マウンテンバイクをおりてしゃがみ、死んだ猫を見ています。
そして辺りを見渡して、マンションの植え込みに生えていた、人間の顔ほどもある大きな葉っぱを2枚ちぎって、手のひらに添えて、猫を抱き上げました。
そして、歩道の植え込みに生えていた木の根元に寝かせます。そして、手のひらに添えた葉っぱを猫にかけました。
モモタは、とても救われた気分になって、「にゃあにゃあ」鳴きながら、祐ちゃんのもとに駆けていきます。
「モモタぁ」祐ちゃんは優しく答えてくれました。そして、モモタの脇に両手を添えて抱き上げて、続けて言いました。
「この猫かわいそうにね。車にひかれて死んだのかな。
本当は埋めてやりたいけれど、手じゃ硬い土を掘れないし・・・。
でも土の上に寝かせてあげたからいいよね?だってかたい地面じゃないんだもん。それに、いつか土に帰っていけるから」
モモタには難しくて、何を言っているか分かりません。ですが、祐ちゃんの猫への優しさが伝わってきます。
モモタは、とっても幸せ者です。祐ちゃんに抱き上げられる時が一番大好きです。
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