猫のモモタ

緒方宗谷

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南国の海のお友達

低いほうに流れた熱は、温まらない

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 モモタが森の中をお散歩していると、1羽の鳥が話しかけてきました。
 「あれ?珍しい猫だね。この辺りでは見ない猫だね。なにしてるんだい?」
 「僕、モモタだよ。ずっと北の方から旅行してきたんだ」
 大きな鳥です。何か違和感を感じたモモタは考えました。
 「なんで歩いてるの?お空を飛べばいいのに」
 モモタがそう訊くと、ヤンバルクイナと名乗ったその鳥は言いました。
 「僕飛べないもん」
 「うそ?」
 モモタは信じられません。だって立派な翼が生えていますから。
 飛べない鳥がいるのは知っています。
 鶏とか烏骨鶏とかのお友達もいましたから、ヤンバルクイナが飛べなくても不思議ではありません。
 ですがここは野生の山です。人間のお家のお庭ではありません。飛べない野生の鳥が住んでいるなんて、とても信じられませんでした。
 モモタは言いました。
 「せっかく羽があるのに飛ばないなんてもったいないよ。
  羽があるってことは、頑張れば飛べるってことでしょう? 大空に向かって羽ばたいてごらんよ。
  僕だったらそうするよ。だって空は青かったり赤かったり、金色だったりしてとっても綺麗なんだ。僕だったらどこまでだって飛んでいくよ
 森の中に住んでいたら、空の色や広さは分からないでしょう? 一度でいいから飛んでごらんよ」
 すると、ヤンバルクイナは言いました。
 「飛んでたさ。おじいちゃんの話では、ずっと昔のおじいちゃんは飛んでたさ。でもやめたんだ」
 モモタは、「どうして?」と訊きます。
 「空に何があるって言うのさ。何にもないじゃない。
  そんなことより、旅行のお話を聞かせてよ。色々な所を見て回ったんでしょう?」
 モモタは、色々な旅行の思い出を話して聞かせてあげました。
 「牧場では、お馬さんの背中に乗って、とても速く駆け抜けたんだよ。
  クジラさんの背中に乗って海を渡ったり、イルカさんと一緒に海に潜ったりもしたんだ。
  ペリカンさんのお口の袋に入って、お空も飛んだことあるんだよ」
 「ふーん」
 あれほどお話を聞かせてほしいとせがんでいたヤンバルクイナでしたが、そっけない返事しか返ってきません。
 モモタは、数々の思い出に浸ります。「とっても楽しかったなぁ。みんなどうしているんだろう」と、笑顔でお話を絞めました。
 ヤンバルクイナは、冷めた感じで言いました。
「ふーん・・・。で、君は何ができるの? 速く走ったのは馬だじ、高く飛んだのはペリカンだよね? 泳いだのはクジラだし、潜ったのはイルカだよね」
 モモタは、何も言えませんでした。 





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