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温泉の町のお友達
相手の誠意を信じてみても悪意しかないならバカ見るよ
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モモタが塀の上を歩いていると、どこからともなく怒鳴り声が聞こえてきました。モモタと同じ猫の声ですが、とてもしゃがれています。
「なあ、俺とってもお腹が空いているんだ。
そのお魚のソーセージ分けておくれよ」
「えー?」
1匹のどっしりした猫が、気の弱そうな猫が食べているごはんを横取りしようとしていたのです。
「こ・・これ、ぼくのごはん・・・」気弱そうな猫がうろたえます。
「とってもひもじいんだよ」
モモタは、どっしり猫に同情しませんでした。
とても貧しそうには見えません。薄茶色い毛並みはとても上品そうです。
気の弱そうなサバトラ猫は、オドオドしながら言いました。
「わ、分かったよ、あげるよ」
「ありがとう。感謝するよ」
そう言ったどっしり猫は、お魚のソーセージを1本丸々持っていってしまいました。
「いつか必ずお礼するからな」
そう言い残して。
それを見送ったモモタは、塀を下りてオドオドした気弱猫に言いました。
「あの猫きっとお礼しないよ。
だって前にも僕におねだりして同じこと言ってたけど、何もお礼してくれないもん」
「そんなことないよ、前はハムを一かじりくれたんだ」
「一かじり? そんなちょっとじゃお礼じゃないよ?」
「それだけじゃないよ、とても感謝してるって言ってくれたよ。
そう言ってくれるだけで僕は十分だよ、僕は良いことしたんだし」
言葉とは裏腹に、気弱猫はしょんぼりしています。
モモタは言いました。
「くれたことには感謝するだろうけど、なんか違う気がするなぁ。
もらうために感謝してるっていうか、もらうまでは感謝してるっていうか」
どう表現していいか分からないモモタに、気弱猫が言いました。
「確かにあの猫は強引かもしれないけど、僕は優しさを失いたくないんだ。
そのうち彼も分かってくれるよ」
「ふーん、君は強いんだね」
しばらくして、気弱猫のお家のそばを通ると、気弱猫は、またしゃがれた声のどっしり猫に、ご主人様からもらったお魚フレークを取られていました。
モモタはお庭に降りて、気弱猫に言いました。
「君の分もとっておかずに全部食べて何も思わないんだよ、たかられてるだけじゃないの?」
「そんなことないよ、この間ネズミの黒いとこくれたんだ」
「黒いとこって、まずいじゃない、僕食べないよ」
「うん、僕も食べないけど、あの猫好きらしいよ、体に良いんだって。
『まずいけどもっと大きくなれるよ』ってくれたんだ」
気弱猫がガリガリなのはあのどっしり猫のせいなのに、この気弱猫は気が付いていません。
「なあ、俺とってもお腹が空いているんだ。
そのお魚のソーセージ分けておくれよ」
「えー?」
1匹のどっしりした猫が、気の弱そうな猫が食べているごはんを横取りしようとしていたのです。
「こ・・これ、ぼくのごはん・・・」気弱そうな猫がうろたえます。
「とってもひもじいんだよ」
モモタは、どっしり猫に同情しませんでした。
とても貧しそうには見えません。薄茶色い毛並みはとても上品そうです。
気の弱そうなサバトラ猫は、オドオドしながら言いました。
「わ、分かったよ、あげるよ」
「ありがとう。感謝するよ」
そう言ったどっしり猫は、お魚のソーセージを1本丸々持っていってしまいました。
「いつか必ずお礼するからな」
そう言い残して。
それを見送ったモモタは、塀を下りてオドオドした気弱猫に言いました。
「あの猫きっとお礼しないよ。
だって前にも僕におねだりして同じこと言ってたけど、何もお礼してくれないもん」
「そんなことないよ、前はハムを一かじりくれたんだ」
「一かじり? そんなちょっとじゃお礼じゃないよ?」
「それだけじゃないよ、とても感謝してるって言ってくれたよ。
そう言ってくれるだけで僕は十分だよ、僕は良いことしたんだし」
言葉とは裏腹に、気弱猫はしょんぼりしています。
モモタは言いました。
「くれたことには感謝するだろうけど、なんか違う気がするなぁ。
もらうために感謝してるっていうか、もらうまでは感謝してるっていうか」
どう表現していいか分からないモモタに、気弱猫が言いました。
「確かにあの猫は強引かもしれないけど、僕は優しさを失いたくないんだ。
そのうち彼も分かってくれるよ」
「ふーん、君は強いんだね」
しばらくして、気弱猫のお家のそばを通ると、気弱猫は、またしゃがれた声のどっしり猫に、ご主人様からもらったお魚フレークを取られていました。
モモタはお庭に降りて、気弱猫に言いました。
「君の分もとっておかずに全部食べて何も思わないんだよ、たかられてるだけじゃないの?」
「そんなことないよ、この間ネズミの黒いとこくれたんだ」
「黒いとこって、まずいじゃない、僕食べないよ」
「うん、僕も食べないけど、あの猫好きらしいよ、体に良いんだって。
『まずいけどもっと大きくなれるよ』ってくれたんだ」
気弱猫がガリガリなのはあのどっしり猫のせいなのに、この気弱猫は気が付いていません。
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